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聞いていた話と違うようですが、説明担当はいました

 聞いていた話と違うと怒っても、誰もいないこの場では、意味のないことだろう。

 森の中で遭難したかのようになっているが、とりあえずこのまましばらく待とう。

 ということで、着地した場所そのままに、楽な姿勢で座っておく。

 何を待つかといえば、再度召喚陣が現れることか、説明担当がくるのを、だ。

 …望み薄な気がする。しかし、この場を離れるのもどうかという気がする。


 そういえば。先ほどはいくらかの高さから落下したわけだが、痛みは今だ無い。

 今更ながら体を見ればチュニックと長ズボンにブーツで、フード付ローブというのか。いつの間にやらファンタジーあるあるな衣装になっている。

 ちなみに破れた様子はない。

 袖を捲って見ると…ん?傷はないが、左手の甲に魔法陣のような模様が黒く浮かんでいる。どことなく先ほどみた召喚陣と似ている気もするが、円形で内部に複雑な模様が書かれていれば、似ているようにも見えるだろう。

 もしかすると、この魔法陣から封印された何かを呼び出したりできるかもしれない。

 ふふふ。声がもれる。口元がにんまりと弧を描くのがわかる。

 袖を引き下ろして模様を見えないようにする。

 これは、あからさまに包帯で隠すべきだろうか。決め台詞はどうしようか。厨二心が騒ぎ出す。

 案外、イージーモードの異世界転生かもしれない。

 

 はたと、思い出す。そういえば異世界転生?自分は元の世界で死んだのだろうか。思い出せない。いや、よく考えれば思い出せそうな気もするが、あえて夢である可能性は…微塵も感じないのが不思議である。

 ここは暇な時間を使って前世のことを思い出す時間にあてようか。

 ふーむ。暇と決ったわけではない。このまま日が落ちてきたらどうするかのを考えるのが先決だろうか。

 腕を組もうとした、その時だった。


「おい姉ちゃん、ここで何をしているんだ?」


 フードをかぶった真黒なマント姿。しかしそのフードや開いた部分から除くはずの顔など部分が真っ暗で見えない。そんな集団に、囲まれている。怪しい集団に囲まれていた!


「っ…!何もしていません!」


 思わず両手を顔の高さにあげ、ホールドアップの姿勢になる。

 いつの間に!怪しい集団に!囲まれている!

 たぶん声を発していると思われる、集団から一歩分手前に出ているマントに真摯な目を向ける。

 ナニモシテナイヨ!スワッテタダケダヨ!


「とりあえず、立ってみてくれるかな?」

「はいっ」


 手を挙げた姿勢のまま、すくっと立ち上がれば、集団から浴びせられるような強い視線を感じる。

 ひきつった笑みで人畜無害アピールするが、そもそもこのマントは異世界人なのか、異世界モンスターなのか。


「うん。何もしてないなら、何かする予定はあるのか?仲間は?」


 手を上げることで袖がずり落ち、先ほど発見した魔法陣が見えるのだろう、後ろからの…いや、全方位から左手に視線を感じる。決め台詞はまだ決まってない…!ではなく、


「ええと…たぶん神様のところから、召喚されてここに来ました。なので、仲間はいません。

 予定を言うなら、召喚後にこの世界について説明してくれる人がいるそうなので、その人待ちです。」

「そうなのか。この世界に来てから誰にも会っていないんだな?」

「はい。そうです。」

「では、この世界について説明しよう。付いて来てもらってもいいか?」


 なるほど彼ら(声的にたぶん男)が召喚した人…ではなさそうだ。

 とりあえず、怪しいマントの姿が見慣れないが、口調は怖くない。むしろ拒否してここに放置さたら、遭難するだけな気がする。


「はい、わかりました。」

「良かった。…ところで、いいか?」

「何か。」

「いや…キレイな顔してるから姉ちゃんだと思ったけど、兄ちゃんか?」


 はい?彼の眼は見えないが、なんとなく胸に視線を感じる気がする。追って自分で確認すれば…なるほど真っ平らである。容姿の指定はしたけれど、性別はどうなっているんだろう。

 彼から見て、キレイ系で中性的な容姿なようだが…マントの感覚は当てになるのか?

 今この場で自分で下半身の有無を確認するなんて変態行為になってしまうし、女ならば着やせしてるだけで最低限のふくらみは保証されていると信じて胸に手を当てる…ために、手を下していいものなのだろうか?

 迷うくらいなら、怪しい動きはしなければいい。


「失礼ですね。見てわかる通りです。」

「わからないから聞いたんだが。」

「失礼です!見ての通りですから、間違いようがないはずです。」

「…そうか…えーと。お前、付いて来い。」

「はい。」


 首をひねるような動作をしてから、動き出したマント。

 やはり彼がリーダーだったのか、他のマントたちもそれを確認してから動き出す。自分も遅れないように、先頭になったマントの彼を追って歩き始めた。


 開き直ってみたけど、失礼は自分だった。マントの彼はたぶん悪いマントでは無いと思う。

 ごめんな。だから、お前呼びでも文句言わないようにするよ。

 歩き始めの上げた手を下す時に、さりげなく自分の胸に手を滑らしてみたけど、ふくらみは感じられなかった。自分は男ということなのか、それとも胸囲もスレンダーな女性という可能性も残っているのか。

 あとで容姿含め、体の確認をしたいな。




 ところで、黒マントと謎の黒空間しか見えず、良く見比べても背格好などの個体差が見つけられない。

 集団になることでよりヒトっぽさが分からなくなるこのマントの集団に囲まれたままなのに、あまり怖さを感じないのは見慣れたからだろうか。

 とりあえず、前を歩くマントのフードを引き下ろしたい衝動に耐えて、真顔で進むことにする。

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