実戦的指導をされていましたが、最強にはなれません
息が整ったところで、サイトを見た。
全然勝てる気がしない。
指導してもらうのだから勝つ必要は全くないのだが、勝負とは違う方向に…むしろあの笑顔を見るだけで、立ち向かう気すらしなくなって来るのは、どういう魔法なんだろう。
「もう大丈夫そうだな!さぁ、続きをしよう!ハハハハ!」
魔法というか、単に苦手ということか。
こういったタイプの人と話した経験がないからかもしれない。
何事も経験というが、この経験は何の役に立つのだろう。
そうだった。実践指導をしてもらっているんだった。
…サイトを見る目が、死んだような目になったのは確実だった。
「では、まず魔法を使ってみようか。攻撃魔法を使ってみろ!」
「遠慮なく。」
攻撃魔法と言われて思い浮かぶ、ファイヤーボール。
遠慮なく、サイトの顔面に飛ばす。
…どうせ怪我もしないだろうと思ったが、片手で握り潰されるやるせなさ。
「ハハハハ!ただの初級魔法のようじゃないか!アサですら、火と風を混ぜて俺に攻撃してきたぞ!」
言い回しがいちいちムカつく。
というか、今も戦争中も味方側のアサに攻撃されるって何したんだこいつ。
とりあえず言われたとおりに、先ほどと同じくらいの火と、同じくらいの風を混ぜるイメージをして、サイトに向けて放つ。
先ほどの3倍ほどの威力の炎がサイトを襲った。
やりすぎた!?と思ったが…片手で叩き潰されるやるせなさ。
「ん?今のは構成が甘いようだな。基本的に単一属性よりも、効率的な属性を組み合わせることで、威力を倍にすることができるんだ。ちゃんと、火に風を吹き込んで炎を強化するイメージをしたか?」
「いいえ。もう一度やります。」
先ほどと同じくらいの火と風を使い、炎を強化して打ち出すイメージをしてみた。
本当に、先ほどより威力の上がった炎がサイトに向かった。
すごい!組み合わせて威力が上がるなら、他の組み合わせもできるかもしれないな!
…その威力の上がった炎も片手で叩き潰されたが。
「うむ。次は、今の炎を圧縮するとさらに威力が上がるぞ!やってみろ!」
圧縮…先ほどの火と風で威力を上げて、レーザーみたいに絞るイメージをしてみた。
思った通りのレーザー状になり、威力の上昇が感じられたが、絞る…圧縮には別に魔力がかかるようだ。これはもう少し練習しないと想定した以上の魔力を消費することになりそうだ。
お!今度のレーザーは、サイトの片手が炎をまとい、空に方向をずらすことで対処された。
つまり、ちゃんと当たれば有効になりそうということだろう。
「ハハハハ!いいだろう。では、魔法も入れて攻撃してきていいぞ!俺も魔法を補助で使っていくからな。行くぞ!」
サイトが殴りかかってきた。
もちろん、さっきまで戦っていたのだ。同じくらいの速度なので、見える。躱せる。
相手の動きを見て、直感のままに避けながら反撃もする。
先ほどまでと同じだ。魔法も入れていきたいが、明確なイメージをその合間にすることができず、物理特化だよりの肉弾戦になってしまう。
そのとき、サイトから蹴りが来た。鋭さがない。
先ほど自分が足を取られたように、この足を取ることが出来そうだ。そして取った。
嫌な予感がした。
先ほど自分がしたように、もう片足で迫りくる蹴り。
先ほどを思い出して、そちらも取ろうとしたが、嫌な予感が止まらない。
凝視する先で、その向かい来る足が、風の補助を得て下方に無理やり方向転換されたのが見えた。
捕まえられない!
足を取っていた方の手を放し、後退することで回避した。
「ハハハハ!魔法も使うように言ったよな?遠慮するな!」
遠慮じゃなくて、上手く使えなかったんだよ!
しかも、笑いながら失敗したアレを模倣してお手本を見せられたら…驚嘆するより、イラつきが勝る。
これ、狙ってやってるだろ!?
距離を取れたことで、先ほどのレーザー状の攻撃、そして、さらに圧縮して小さくなった火の粒を連続で放つ。
そして、とどめのつもりで、別の組み合わせ。対属性火と水を無理に合わせてサイトのいる位置で爆発させる。やったか!?
「ハハハハ!なかなかいいじゃないか!」
どう潜り抜けたのか爆風を利用して、接近を許してしまう。
また肉弾戦。
この距離で連続攻撃を受けながら攻撃魔法…合わせたり圧縮する魔法を使うのが難しい。
ならば、あえてサイトからの攻撃を避けず、その位置に風で障壁を作って防いだ。
その隙を作ったことで、こちらから攻撃を仕掛けていく。
そういえば、魔法干渉力が高い相手に大して物理攻撃することで攻撃を通すと言っていたが、逆に物理干渉力が高い相手には魔法で攻撃するべきではないのか。
思い浮かぶのは魔法剣。しかし、剣はない。
そこで先ほどサイトが炎を手に纏わせていたように、風の魔法を体に纏わせて攻撃する。
「ハハハハ!いい手だ!」
これで合っているようだ。防御されることが減り、ほとんどの攻撃が回避によって躱される。
それでも追いつめている気はしない。全く当たりそうではない。
そこで空間魔法を使い、目視転移。
もちろん位置はサイトの後ろだ。
これなら当たると思ったが、先ほどやったように風の障壁で防がれる。
振り返る前に追撃しようと足を踏み出そうと…嫌な予感がした。後方に退避する。
「うむ。引っかからないか。」
先ほど踏み込もうとした場所を見ると、邪魔な位置に小さく土の障壁があった。
あのまま勢いよく踏む込めば、盛大に転んでいただろう。
気付けてよかった…。
距離がとれたことで、魔法攻撃をしようとする。
先ほどと同じ、火と水だ。同じように爆発が起きた。ただ、魔力が一気に減ったのが分かった。
なんでだ!?
「干渉力6で5属性以上を同時使用すると、消費が大きくなるぞ!今回のように複数使いたい時は、身体強化の闇属性を一時的に切る手もあるぞ!」
なるほど。無性体と男性体では、基本4属性までのつもりでいないとな。
最初から発動しっぱなしの光と闇を忘れないよう意識する。
そういえば、光属性は体に良さそうだが、闇属性はどんな効果があるのだろう。
そんなことを考えている内にまた距離を詰められた。
距離を取りたいなら、転移をすればよかった。
サイトの後方に転移して、火と風の圧縮した魔法を打つ。
さらに別方向に転移、魔法を打つ。
そして転移、魔法を打つ。
これなら、リスクなく砲台としてやって行けそうだ。
「ハハハハ!先に言うが、このままだと先に魔力が尽きてしまうのではないか?物理特化を生かせ!」
確かにそうだ。
魔法干渉力6はサイトも同じだ。
スキルも物理特化には魔法力+5がついているとアサが言っていたので、たぶん同じだ。
ええと。光と闇で身体強化して、風を纏って…って、常時発動し過ぎだ!
空間魔法も最大レベルでないことから消費も比較的多いだろう。
放出系の魔法もなかなか魔力を使っている。
とりあえず、常時風を纏うのを切り、攻撃する時だけ瞬間的に魔法を使うようにする。
そうすることで、魔力の節約にはなったが、それを毎回意識しないといけないので他の魔法や手段を考えることができなくなる。
サイトに対する決定打が無いんだが!
このままだと、サイトの思惑通りほぼ物理攻撃戦になってしまう!
とりあえず、一度攻撃して、回避された瞬間転移で退避して、攻撃手段を考えよう…と思った。嫌な予感がした。転移で退避したのに!
風で推進力を増したサイトに距離が詰められる。そういう補助の仕方あったのか。
迫りくるこぶしを、風を纏った腕で受け、カウンターとしようとした。
接触の瞬間サイトの手も風を纏い、風属性の攻撃が相殺された。
次に飛んでくるハイキックに風の障壁で対応しようとするが、そちらも接触の瞬間風を纏い、障壁を粉砕された。転移で退避した。
…魔法の発動のタイミングが上手すぎる。これで、前に言っていた構成の計算で節約をしているなら、同じ魔力量で勝てる訳がない。
直感がここが降参時だと言っている気がした。
「降参です!ストップで!」
「もうなのか?まだ行けないか?」
「もう無理です!ありがとうございました!」
「そうか?ちょうどいい感じになってきたと思ったんだが。」
動きが止まったことで、急に息が上がってきた。魔法の使い過ぎだろうか?今まで感じたことのない倦怠感を感じた。
サイトに至っては、息切れも疲れも見えず、ただかなり残念そうだった。
「うむ。後は慣れだな!魔法のイメージと、発動のタイミングは繰り返すことで良くなる。今日はここまでとして、明日から毎日訓練しようか!」
「結構です!ありがとうございました!」
サイトの強さと、指導力は分かった。
ただ、毎回イラつかせて本気を出させようとするのと、たぶん今回もこのままいけば観客の前でぼろ負けさせられただろう。サイトは、打ち負かす以外の終了方法を知らないのだと思う。
なんといっても、実戦的指導だからな!
「だが、まだまだ慣れないだろう?それに、両生体でならもっといい勝負になりそうだろう?明日が無理なら、今からもう一回!」
「いいえ!訓練はまた今度にしてください!」
「だが…」
「あの!属性について聞きたいのですが!」
「…うむ。どうした?」
戦闘好きがグイグイくるが、昨日の感じからたぶん話も好きなんだろう。
話題をそらすことに成功した。
「光と闇で身体強化と言っていましたが、具体的にどういう効果があるのですか?」
「知らなかったのか!詳しい性質は省くが、基本的な機能だけ挙げよう。
光属性は、鑑定と解析、植物や生物の傷を直すこと、成長の促進と健康維持、身体能力の上昇だな。
闇属性は、念動力と魔力干渉、精神干渉だな。」
「それって、身体強化に闇属性必要ですか?」
「うむ。よく言われる。基本的には必要ないが、身体強化に使うことで光と闇の相乗効果で魔法耐久力と瞬発力が上がる。さらに、魔力の流れが良くなることでスキルや魔法の発動が楽になり魔力の変換ロスが減る。場合によるが闇属性が混ざることで痛覚などを切ることが出来るようになる。」
「そうでしたか。」
なるほど。単属性よりも属性を合わせることで効果を倍化できるというのが、ここにも生きてくるのか。
そういえば、結果をイメージせずに今回使っていたが、これをイメージに入れて発動すれば、もっと効果が大きくなるんだよな?聞いておいて良かった。
「うむ。あと、命属性はだいぶ変わっているのだが、聞いているか?」
「いいえ。変わっているのですか?」
「そうだ!この属性の効果は、魔力保有物に対する干渉権。
つまりこの属性が無いと、他人や魔力を持つ植物などに対して、光なら治療や補強ができず、闇属性でも精神干渉できないし、他の属性でも体内で爆発を起こすようなこともできない。
しかし、この属性だけ持っていても何かをできるとこはないのだ!」
「そうでしたか。」
変わっているというのは、命属性だけでは何もできないということか。
体内で爆発を起こせないって…試したのか?
かなり凶悪な手段だが、一応覚えておこう。何かに使えるかもしれない。
「いや、何にもならないということもないのか。魔法を相殺するには対属性が一番効率的だが、命属性については対がない。体内を直接爆破されたくなければ、命属性で身体強化をするという手段が使えるぞ!」
「つまり、命属性も身体強化に入れたほうがいいということですか?」
「いや。そうすると、他の魔法が使いずらくなるからな。命属性を使った攻撃をされそうだと思った時だけ混ぜればいいだろう。」
「それって、わかるのですか?」
「俺は分かるが…レイも、超直感があるから集中していればわかると思うぞ!」
うん。たぶん分かる気がする。超直感があってよかった。
というか、直感が無いのに判別がつくサイトがおかしいのか。
次回があれば、サイトに体内爆破を試してみようと思う。最悪治療できるように、手足の先で小規模に。
よし。これで知りたいことは終わりだよな?
「ありがとうございました。聞けて良かったです。」
「うむ。では、両生体になってもらおうか?」
「いいえ。次の機会にまたご指導ください。」
「…うむ。約束だぞ?」
「…はい…。」
もう少し魔法に慣れるように自主訓練をしようと思う。
でも、いい勝負ができたり、無いと思うがサイトを負かすことになったら…余計にうるさくなりそうだ。
とりあえず、今は慣れるように頑張ろうと思う。
「レイ!お疲れさまー。」
「サイトの相手は大変だったでしょう?頑張ったわね。」
「なかなか覚えの良いようだな。」
飛んできたメイを捕まえる。
なぁに?という感じで小首をかしげて笑っている。かわいい。
マキアとロリを見る。美人は癒しで間違いない。
この短時間で受けたサイトの精神攻撃に疲弊した心がうるおう。
「レイ、すごかったよ!それに、女の子だとかわいいけど、男になるとカッコいいんだね。」
「あ、ありがとうございます。」
ユーラス、マジイケメン!
「そうね。同じ顔なのに、雰囲気が変わるわね。でも私は、女性体とか無性体の方が好きよ。」
「そうですか?なら戻ります。」
「そんなに変わんないと思うけどー?」
「そうですか?」
「うん!レイはキレイだよ!」
「ありがとうございます。」
にぱりと笑うメイ。かわいい。思わず笑顔になってしまう。
捕まえていたのを放すと、マキアの頭に乗った。定位置のようだ。
アニマルテラピーならぬ、妖精テラピーか?売れそうだ。いや、メイを売る気はないが!
ともかく、マキア好みの無性体に戻った。
イメージで簡単に使えても、魔法って難しいんだな。
もう少し、サイトに有効な攻撃手段を考えてみようと思った。
そう思う時点で、サイトの手に乗せられている気もするが。




