先に休憩しましたが、実戦的指導をされていました
マキアとメイに起こされた。朝になったようだ。
「おはようございます。」
「おはよー!」
「おはよう。」
ぐっすりと12時間眠っていたようだ。
そして気付く。この服って昨日からずっと着たままだったのではないかと。
「あの、服を洗ったりとかってどうしてるのですか。」
「服?魔法だよー!」
「魔法だけど、属性によって難しいから、このドアを見て。」
「はい。」
魔法と言うのは予想がついたが、ドア?
昨日出入りで使ったドアを見ると、真ん中に宝石のような石が2つ付いていた。
「この青いほうが、水属性の洗浄の付与がされているから、範囲をイメージして魔力を注ぐと洗浄できるわ。」
マキアがそう言って、その青い石に触った。
ベッドが一瞬水に包まれて、すぐに消えた。たぶん、洗浄されたんだろう。
次にマキア自身も、同じように一瞬水に包まれて、洗浄された。
なるほど。自分で洗浄をしようと思う。水属性で洗浄…強めに念じる。
水が現れて、一瞬で服と体を洗浄された気がした。
息を止め忘れていて、びっくりしたが、水があったのは一瞬だったので、おかしな挙動をせずに済んだ。良かった。
昨日と魔法を使う感覚が違う気がして体を見てみるが…そうか。12時間たったのか。いつの間にか無性体になっていたようで、魔法特化がなくなったということだ。
こうして使い比べてみると、魔法の発動がしやすい魔法特化の便利さがわかる。
あと、時間になると勝手に無性体になるみたいだ。寝ていたから、たぶんだが。
「自分で出来たようね。あと、こっちの白い石が光属性の循環で、体とかの保持用ね。私たちには、いらないけど。」
光属性の循環…そうだった。食事の代わりが魔法だった。
ついでに、光属性の循環も自分の体でやっておこうと思う。
”光属性で体に循環。食事とかの代わり。”
これでよし。なんとなくあった空腹感のようなものが消えた。
「そういえば、この家はユーラスの家ですよね?お土産渡し忘れてました。」
「家はユーラスのものじゃないわよ?お土産は、今から渡しに行きましょう。」
「もうみんな起きてるよ!」
「え、待ってください。それでは、この家は誰の家ですか?」
「家はみんなのものだよ?」
「そうね。あえて言うなら、里の物かしら?でも、ここは人族に攻められるようになってから作ったから、みんなの一時逗留所みたいな里だけどね。」
「ここには、村長とかいないのですか?」
「いないよ?どの家を使うかは、早いもの勝ちと相談なの。」
「一応、連絡と移動と保守用に、影と虹と風と土の種族は出来るだけ1人以上居るようにしているわ。」
「そうでしたか。」
そういうルールなのか。
人族に攻められるようになってから…と言うことは、ここは前線補給地みたいな扱いなのかもしれない。
のどかな村に見えたが、やはり戦争というものは、各所に影響を出しているのだろう。
「もういいかしら?」
「お土産渡そ?」
「はい。行きます。」
二人に続いて部屋を出ると、入り口のスペースにテーブルとベンチタイプのイスがあり、そこに三人が座っている。
どちらの家具も、昨日はなかったし、床面の木から直接生えているように見えるから、たぶんユーラスが作ったのだろう。
植物魔法って、便利だな!
「おはようございます。」
「おはよう、レイ!さっそく外に出ようか!」
「サイト!ちょっとまって!…レイ、お土産持ってきてくれたんだって?」
さっそくサイトに掴まったが、ユーラスが抑えてくれたおかげで、お土産を渡せそうだ。
ユーラスのイケメンスマイル…サイトに掴まった後だと、より癒される。
「はい。三人で採ったんです。食べてください。」
「私も採ったのー!」
テーブルの上を飛び回るメイにも癒されながら、昨日採った黄イチゴと桃を順番に並べていく。
「レイ、もういいわ。他の人は収納を持ってないから。」
「わかりました。」
黄イチゴ20個くらいと、桃10個くらいを置いたところでマキアから静止が入った。
「桃を採ってくるとは、運の良いことだ。そうか。幸運のスキルであったか。」
「桃は奥の方でしか採れないし、果物自体、最近少ないから嬉しいよ。」
「そーなの!レイと行ったら、久々に大収穫でうれしかったのー!」
「ハハハ!良かったな、メイ!」
ロリは納得したように頷き、ユーラスはイケメンスマイルをくれ、ご機嫌で黄イチゴを食べるメイの頭をサイトがわしわしと撫でている。
果物、そんなに珍しいのか?昨日いっぱい採れたんだが。
そこで、昨日アイテムボックスの時間停止について調べようとしていたのを思い出す。
もし無性体の間時間停止しないなら、採った大量の果物が腐ってしまう!レアそうなのに!
”光属性で鑑定をする”
昨日のように画面で出して指で操作するのは戦闘中とか困るかもしれないと思い、今回は全部の情報が頭に直接わかるようにイメージした。
名前-レイヤード
種族-異世界人
性別-完全体・無性体
物理-干渉力5/10
魔法-火風水土光闇命属性 干渉力6/10
スキル-幸運 超直感 完全体(物理魔法スキル攻撃無効・空間魔法3/5)
・確率操作 (日/0)
・アイテムボックス 黄イチゴ*165(時間停止) 桃*63(時間停止) 時計の花*3(時間停止)
・転移 森(アサの空間) - -
・男性体 物理特化 魔法攻撃無効 空間魔法4/5 魔法力+5 (日/1-計12時間)
・女性体 魔法特化 物理攻撃耐性 空間魔法4/5 (日/1-計0時間)
・両生体 物理魔法特化 物理魔法スキル攻撃無効 空間魔法 (日/1-計30分)
アイテムボックスは、入れた時の状態をそのまま引き継ぐようだ。
合わせて200個以上採っていたとは思わなかったので、本当によかった。
よく見ると、確率操作はまだ24時間たっていないからか、0のまま。
女性体は、日に1回になっているのに、時間は0だ。
男性体が計12時間のままだから、日が変わったことで今日の半日分は使えるけど、女性体は24時間経過してないからそれまで使えないということだろうか。
そんな気がするので、たぶんそうだと思う。
もし、男性体と両生体が使えなかったら…サイトとの約束を後回しに出来たんだけどな。
まぁいい。性能的には、今のほうがお得そうなので、これでいいんだと思っておく。
「お土産、感謝する!さっそく、外に行こうか!」
…これでいいんだと思っておく。
サイトに引きずられるように外に出て、家の前のスペースに立たされた。
「さぁ、こい!」
「いえ。来いと言われましても。」
「早く男性体になれ!」
「…はい。」
”男性体になる”そう意識すると、なんだか目線が少し高くなった。
無性体の身体から軽くかかとを上げたくらいだから、5~6cmくらいだと思う。
この体を見ると、先ほどと同じくまっ平らな胸元だが…なんだか全体的に厚い?少々筋肉質な身体になったようだ。労せず筋トレの結果だけを手に入れたようで気分がいい。
確か…光と闇属性を循環させて体を強化するんだったな。
”光と闇属性を循環させて身体強化”と念じる。
先ほど魔法を使った時と似た感覚だが、魔力量が増えているからか、もう少し簡単に扱えそうだった。
「そうだ。そのまま来い!」
「…。」
このまま、殴りかかるんだよな?
軽く走り寄り、サイトの構えている手に向けてパンチ。
パシリと軽い音がして、受け止められた。
「レイ…もっと、力を入れていいぞ。むしろ、殺すくらいのつもりで、顔面とか急所を狙うんだ。練習でちゃんとできないと、何かあった時に躊躇して危なくなるからな。」
「はい…。」
「そうだぞ!奴は、殺そうとしても死なん!本気で行って多少痛めつけられれば御の字だ!むしろ、ぶちのめしてやってくれ!」
ロリの野次が飛んできて、振り向けばみんなが家の前で観戦していた。
「サイトなんてやっつけちゃえー!」
「無理しないでねー!」
「サイト!手加減忘れるなよ!」
…いやいや。異世界転生とか、スキルとか。浮かれていたのは認めるが、無抵抗に見える相手に殴り掛かるのはかなり抵抗がある。
というか、人を殴った経験とかないし、殴り方とかこれで合ってんのか分からん。
よほど困った顔をしていたのだろう。
サイトから、提案された。
「…では、俺から殴りに行こう!受けても、避けてもどっちでもいいから、反応するところから行くか。できそうなタイミングを見て反撃するんだぞ?」
「は…?」
ヤバい!そんな気がして体を左にひねると、そこにサイトの拳が来ていた。
「うむ。これだな。直感のスキルがあるから、それに従うんだ。いいな?」
「は…?」
やばいやばい!うわ!マジか!
連続で飛んでくるサイトのパンチ…拳という凶器を、勘に従って避ける。
避ける避ける避ける。
…慣れたのか、なんだか大丈夫そうだ。
これが物理特化ということか、体が思った通りに素早く動く。
直感も慣れてきたのか、当たりそうなものの選別が出来る。
むしろ動体視力も上がっているのか、サイトの手を見て避けることもできるが、フェイントが入っていて直感の動かない攻撃もある。
その攻撃も直感の感じで、かすりそうな物、直撃しそうなものといった具合に、なんとなく分かる。
サイトの攻撃をこんなに避けられるなんて、すごいんじゃないか?これ?
と、思った瞬間すごく嫌な予感がして、大きく後ろに飛び避けた。
え。今のって…。
「うむ。これで満足するなよ?反撃しないと敵は倒れないぞ?」
直撃したらヤバそうな蹴りが来ていた。
そのままサイトから、両手だけでなく蹴りも合わせて、連続攻撃が来る…。
ちょ、サイトこわい。
「ハハハハ!反撃はどうした?逃げてばかりいないで、受けたり、いなしたりして攻撃のタイミングを作るんだ!」
受けたり、いなす?なんとなく、イメージ出来るような?
サイトから来る攻撃を、よく見て、直感に従い、顔面に来たこぶしをしゃがみながら避け、ローキックを放つ。
サイトは軽く避けてそのまま蹴り放ってきた。
しゃがんでいたので、完全な顔面狙いだった。
もちろん、大きく回避する。
「そうだ!そんな感じで反撃も混ぜろ!」
かなり、イラッとした。
いくら避けられるとはいえ、初心者に対して、そんな連続で顔面狙うか?
その後も、顔面以外にみぞおちや下腹部など、急所を執拗に狙ってくる。
イライラする。
またもや、顔面を殴りかかってきたので、左腕を当ててそらし、そのまま腹に膝蹴り入れる。
避けやがった。そのまま右手を振りぬき、顔面を狙う…避けられる!
「ハハハハ!」
笑われた!!なんだこいつ!ムカつく!
その後はこちらから仕掛けたりもしつつ、後から思えばいい感じに戦闘で来ていたと思う。
ただ、物理特化と超物理攻撃特化の違いと経験の違いもあるだろう、こんな高速戦闘を続ければ、先に息が上がり、集中力が乱れたのはこちらだった。
サイトの攻撃を交わして、蹴りを放った瞬間、嫌な予感がした。
案の定、足を片腕で掴まれた。
その瞬間思い出したのは、漫画が何かで見た体をひねりつつ、もう片足で蹴りつけること…。
かなりすごく嫌な予感がしたが、思った瞬間に体はすでに動いてしまっていて、ダメだと思った瞬間には、もう片足が掴まれていた。
その時思ったのは、あの体制から放った自分の足が、かなり高い位置まで上がっててかなりすごいな…という、現実逃避だった。
両足が取られたのだ。
その直後、上体が崩れ、両手を地面につけて頭から落ちるのを防いだ。
ありえない。
こんな体制で終わるなんて、あり得ないほどカッコ悪かった。
自己嫌悪で死にそうになった。
「うむ。終わりか?」
サイトが足を放してくれたので、急いで体制を整えて距離を取った。
「サイトさいてー!」
「いやいや。まだ、手をついたところから攻撃されたらと、もう少し考えていたんだぞ。」
「サイトさいてー!」
「いやいや。そろそろいい感じだし、魔法も入れて行こうかと思ったんだ。」
「サイトさいてー!」
「…うむ。レイ、大丈夫か?」
「はい。いいえ。」
あの失敗を回避しても無駄だったとは。
この先があったなんて、最低だった。
「うむ!大丈夫と言うことだな!最後の方の動きは悪くなかったが、もう少しあきらめずに頑張って欲しかったな。
あと、最後に集中力が切れただろう。直感の感じ取り方をもう少し覚えていった方がいいな。超直感だというのに、直感のスキルのダルの方が、よほどいい回避だからな。
そうだな。直感でダメだと感じたとき、魔法も使えれば攻撃と回避手段が増えてもっと良くなるだろう。息が整ったら、魔法こみでもう一度やろうか。」
評価をされた。指導しているつもりだったんだろう。
…この先があったなんて、最低だった。
「なに、初めての格闘戦もかなり上達したし、すぐに上達するさ。攻撃魔法も使ってないんだろう?魔法戦に興味があったようだし、もう一度やろう!コツを教えるぞ!」
確かに、自分で思った通りに回避と攻撃ができるようになった。
魔法戦も興味がある。
ただ、自分の気持ちが、もうサイトと戦いたく無くなっていた。
実践的指導というか、実戦で指導って感じだな。
たぶんだが、あのイラつかせた執拗な急所狙いや、イラつかせた笑いだすタイミングも、計算だったのかなぁ。
戦争中だというし、身を守る手段は多いほうがいいのは分かっている。
もう一回だけ教えてもらって、感覚掴んだら良しにしよう。そうしよう。
…終わった後、サイトから上手く逃げられるといいな…。




