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実践することになるようですが、先に休憩しました

 とりあえず、サイトと実践してみることになったわけだが、ふと思う。

 明日?今からではなく?

 すぐに戦闘をしたいという思いは無いが、すぐに戦闘をしたそうなサイトが、明日と指定したのが気になる。


「今から、何かあるのですか?」

「今から?そうだな。こんな時間だからそろそろ家で休むんだ。

 こちら側の種族は眠らなくても大丈夫なのに、基本的に紺の時間は休むようにしているようだ。寝ていても1日の始まりには必ず気付くようだから、体内に時計の花と似た感覚器官を持っているのではないかと思っているが、まぁ詳しく考えるのは面倒なので放置している!

 紺の時間に用事もなく外を出歩こうとすると休んだほうがいいと説得されるんだ。12時間休めるというのはずいぶん優雅なことだから不満もないがな。

 実践が明日になってしまうのは少々残念な気もするが、明日の楽しみと考えればよく眠れそうだ!」

「…そうですか。」


 魔族の習慣ということか。

 それにしても、毎日12時間休む?今までの生活では考えられない…いや、ここは異世界だし、転生したわけだから、のんびりできそうで良かったと素直に思っておく。


「そうだぞ!戦うなんてみんなに嫌がられるし、アストロリアにも半月に1回と言われているからな。レイが来てくれて楽しみが増えたな!」

「え、そんなに嫌がられているのですか?」


 サイトは楽し気に爆笑しているが、そんな実践を受け入れてしまったのは失敗だったかもしれない。

 魔法の知識も多そうだし、実践がてら指導してもらうつもりだったのだが。


「そうだね。ここ十数年で命を落とした種族のほとんどはサイトに殺された者だから、サイトに近づきたがらないのはしょうがないよ。」


 突然かけられた声の方を向くと、緑の髪に紫の目をした美…青年?優し気で女性的にも見える顔だが、胸を見るにまっ平らで体つきが男っぽい気がする。性別を聞くのは墓穴を掘りそうだからやめておこう。

 しかし、特徴的なのは耳。長い耳が見える。これはエルフなんじゃないか?

 …というか、え、サイトに殺された?


「仕方ないだろう、戦争していたのだから。

 そちらが手加減するように、多少は手加減したが、あまりにも俺に戦力を集中させるから、やりすぎてしまっただけだ。

 いくら人族から仕掛けているとはいえ、そちらも人族を殺しているのだから、文句言うものおかしいと思うがな。

 それに途中からは、アストロリア達と加減しあって戦っていたし、最終的にアサとこちら側について交戦を終わらせたのだから時効にしてもらいたいな。」


 なんとなく、察せられた。

 人間側に召喚されて、戦争に投入されたとすれば、魔族を殺してしまうこともあったのだろう。

 笑いながら話すサイトからは分からないが、殺されそうだったこともあるかもしれない。

 もし自分も、人間側に通常通り召喚されていたら、魔族と殺しあうことになっていたのだろうか?

 アサの話だと異世界人は間違いなく戦争に投入されているようだし、高確率で戦争という名の殺し合いの中に投入されたのだろう。

 戦争中とは聞いていたが、異世界だからとあまり深く考えていなかった。

 この世界に来て初めて、ぞっとするような悪寒がした。

 もしかしたら、スキルの回数が減っていた確率操作はこれを回避するためだったのかもしれない。そんな気がした。


「わかっているよ。僕は君がこちら側についてくれて感謝しているけど、人族は好きになれないからね。感情面はどうにもならないことがあるんだよ。」

「わかっているさ!こちらも少々愚痴を言いたくなってしまったというだけだ。こちらの種族は強いし、手合わせしてもらって仲良くなれれば楽しいと思っているだけさ。」

「そうはいっても、僕なんか全然サイトの相手にならないけどね…。」


 苦笑するエルフっぽい美青年。

 過去の確執はあっても今は仲良くしているようだ。アサが言っていたし、異世界人が契約で戦争に利用されていることは周知されているのかもしれない。

 だからと言って、仲間が殺されたことを割り切れているのかはわからないが。

 見ていることに気が付いたのか、彼と目が合った。


「やあ、僕は風種族のユーラスだよ。サイトがあまりにもみんなに突撃していくから、出来るだけ緩衝役をするようにしているんだ。よろしくね。」

「レイヤードです。よろしくお願いします。」

「ふふふ。明日、サイトの相手をしてくれるようで助かるよ。今日はもう紺の空になるから家においで。」

「はい。ありがとうございます。」


 エルフではなく風種族らしい。いや、風種族がエルフなのか?

 まぁいい。優し気なイケメンスマイルは目の保養になる。

 サイトの緩衝役というなら、もっと早く来て止めてほしかったが、サイトが相手と考えれば止められないのは仕方なかったのかもしれない。


「レイー!こっちよ。」


 いつの間に戯れが終わったのか、マキアが先ほどサイトたちが出てきた家の前で手招きしていた。


「緩衝役とはどういうことだ。」

「でも、僕ってそんな感じだろう?」

「認めるのが癪だな。」


 そんな声を聞きながらマキアに向かって歩き出すと、だんだんと薄暗くなり始めた。空を見上げると青が濃くなっている。午後になるようだ。

 家の中に入ると当然ながら床も壁も木だ。入り口の部分に少し広めのスペースがあり、3つドアが見えたので3部屋ありそうだ。


「レイ、一緒に寝ましょう?」

「あ、はい。」

「レイも一緒ー!」

「嫌なら断っても良いのだぞ。」

「いえ。大丈夫です。」

「ならば良いか。」


 ロリが一つ頷いて、ドアをくぐっていった。


「ベッドはどうする?」

「広くして欲しいわ。」

「わかったよ。」


 後から家に入ってきた、ユーラスとサイトが、ロリの入ったドアとは違うドアに入っていく。それに続くマキアとメイについて中に入ると、部屋にベッドがあった。

 少し正確ではないかもしれない。床から直接生えたようなベッドフレームと、そのベッドフレームの足元部分の床から直接生えたような緑の布団のようなもの。

 この家自体が家の木と思えば、内部の家具もその木として元から生えているのかもしれない。

 異世界植物、万能だな。

 なんて思っていると、ユーラスがベッドに触った。ベッドが横に伸びて大きくなった。


「これでいいかな?」

「これでいいわ。」

「ほう、大きくするとは便利だな。俺のベッドも…。」

「今日は嫌だよ。僕はサイトと一緒に寝たくないし、部屋に2つ分出すくらいのスペースしかないから無理。」

「うむ。では、次の時は頼む!」

「仕様がないな、サイトは。レイ、風種族の種族スキルの植物魔法で、ベッドのサイズを変えたり家も変えたりできるんだ。何かあったら、隣の部屋に居るから声をかけてくれていいよ。」

「わかりました。ありがとうございます。」


 サイトとユーラスが部屋から出ていくと、メイがベッドに飛び込み、マキアもその中に入って行った。

 つまり、この家もベッドもただの異世界植物ではないということか?


「あの、もしかして、この家とかベッドとかって風種族が作っているのですか?」

「そうよ。さっき言ってた植物魔法で木を変形させているわ。」

「そうでしたか。」

「そんなことより、早く寝ましょう?こっちに来て。」

「…はい。」


 それはそうだ。森の中でこんな変な形の木は一本もなかった。

 いくら異世界植物でも、こんな木があちこちに自生していたら家なのか野生なのか判断できないし、想像すると正直気持ち悪い。

 時計の花が不思議植物だったから、ついつい異世界なら何でも有かと思ってしまった。

 恥ずかしい…と、思ったが口に出してないからセーフだ。セーフ!

 ベッドに入ったが、ベッドフレームの中は布団と同じような触り心地の緑のマットレスみたいになっていて、頭部分が段になり枕と一体化したような形だった。

 一番に飛び込んだメイは奥でうつ伏せになっていて、すでに寝ているようだ。


「レイ、おやすみ。」

「おやすみなさい。」


 マキアに抱き込まれて…このまま寝ることになったようだ。

 まだ寝るのに早いような気もしたが、マキアから伝わる体温が気持ちよくてだんだん眠くなってきた。


 異世界転生、初めは夢かと思ったが夢ではなかった。 

 ダルとの出会いに驚いたりしたが、今日一日楽しく過ごせたし、こうしてベッドで寝られるのも、マキア達魔族に優しくしてもらっているからだ。

 異世界だからと軽く考えていたが、戦争中という今まで生きてきた日本とは違う状況が現実で、今だってダル達影種族が人の侵攻を警戒しているだろう。

 ここでのんびり過ごせているのは幸運のスキルのおかげかもしれないが、魔族に親切にされているのも間違いない。

 戦争に参加するような命のやり取りをする覚悟はないまだないが、何か恩返しできるようなことを探したいと思う。

 戦争が無くなったら、みんな平和にのんびり暮らせるのかな…。


 なんて、考えているうちに睡魔に負けたようだ。温かくて幸せな気分で眠ることができた。

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