本当に異世界でしたが、異世界人に会ってみたいです
温泉での入浴を終えて出るときに、マキアから風魔法で水分を吹き飛ばすような乾かし方と、メイから水魔法による水分を気化させるような乾かし方を見させてもらった。
ここはあえて、メイの気化させる方法を見て発想した、火属性で水分を蒸発させてみようかと思ったが、よく考えるとそれでは火傷の心配がありそうなので、無難に風属性で水分を拭き落とすイメージで乾かした。
マキアの影収納にメイの服もしまってあったようで、収納から出して服を着始める二人を確認して、自分も服を着た。
今から不思議植物、時計の花の収穫に行くのだ。
「よし。時計の花、取りに行くよー。」
「そっちに何か果物もあるわ。」
歩き始めたマキアについていく。ちなみに、メイはマキアの頭に上機嫌で乗っている。妖精かわいい。
「果物があるって、どうやって見つけているのですか?」
「探索ね。風属性で周りの風で探索するようして、そこに光属性を載せて魔法力集まったものを探すのよ。レイもやってみるといいけど、ここはだいぶ奥だから全体的に魔力も濃くてわかりにくいかもしれないわ。でも、今は魔法特化だから簡単かもしれないわね。」
「魔力濃度が強い場所には果物も多いよー。」
「なるほど。やってみます。」
言われたとおりに風属性と光属性でイメージしてみる。
全体的に魔力のようなものが感じられ、土や木も空気中より魔力を含んでいるようで、これなら目をつぶっても歩けそうだ。
近くにあるマキアとメイの魔力の塊を見てから、それ以上に範囲を広げると、向かう先の木に実がなるように魔力の塊が見えるので、それがたぶん果物なのだろう。
空気中には全体的に魔力が多く、メイの言う場所として魔力濃度が強くなっているのはわからないが、たぶん奥の方という、この辺り一帯が全体的に魔力濃度が高いのかもしれない。
「見つけました。こうやって感じ取れるのですね。」
「慣れれば、魔法を使わなくても感じ取れるようになるよー。」
「そうなんですか?」
「そうだよ!あたしは風属性無いし探索も使ってないけど、近くならなんとなくわかるもん。」
「そうね。私もわかるけど、やっぱり魔法を使ったほうが正確な位置が分かりやすいわ。」
そうか。風属性がなく飛んでいる妖精ということは、翅そのものが飛べるようになっているのか。
確かに種族スキルに虹翅とあるのに、飛べない飾りとなるのは不自然な気がする。きっとスキルに羽がある場合は魔法を使わずに飛べるということなのだろう。
「そうでしたか。ところで、この辺りは奥の方と言っていましたが、その奥には何があるのですか?」
「海だよ。水種族がいるの。」
「そう言われると奥って言い方は少し不思議ね。奥…中心かしら?奥と言うとこの辺りを指して、闇種族と光種族が住む館があるの。その先はメイシーのいう通り海になるわ。」
「では、海の先はどうですか?」
「海の先?何もないと思うけど。」
「海の先には行けないよ!」
「そうでしたか…。」
何もない?この世界は球形状の地形ではないのか?
平面だとすると、その先がどうなっているのか気になりすぎる。
異世界だから平面になっているなんてことがあるのか、それとも、海が広すぎてその先につながっている土地を知らないのかもしれないが。
「黄イチゴー!」
叫びながら飛び出していったメイの先を見ると、先ほどの探索魔法で確認した実…黄色のいちごが木になっているのが見えた。
木苺かと思ったが、黄色いイチゴである。どこかに赤いイチゴもあるのだろうか?
ともかく、飛んで行ったメイが一粒実を収穫し、持ってきてくれた。
小さくてかわいい妖精が、黄色いイチゴを両手で抱えてニッコリ笑っているのだ。思わずメイごとポケットにしまいたくなるが、我慢する。
「あげるー!」
「ありがとうございます。」
「どういたしまして!」
イチゴを受け取ると、メイはにぱりと笑ってまた黄イチゴの収穫に向かってしまった。
青イチゴ同様ヘタごと口に入れる。
少し酸味があるが甘い。味はサクランボに近い気がする。なかなか、おいしい。
収穫しながら食べている二人に追いつき、自分でも取って食べることにする。
「レイ、お土産用と気に入ったなら保管用に空間魔法にしまったら?」
「そうします。ちなみに、これって全部採ってもいいのですか?」
「問題ないわ。」
「魔力がたまると、実になるの。早い者勝ちだよー。」
早い者勝ちらしい。遠慮なく収穫していくことにする。
それにしても、木の高さは明らかに身長よりも高いわけだが、果物のなる位置は、手の届く範囲だけである。食べやすいようになっているのだが、この木は何のために実をつけているのだろう。
そういえば、魔力が集まってできているから探査魔法で果物を見つけられたのだが、こんな魔力の塊のような果物を食べるということは、魔力の回復にもなるのではないか?
「ところで、これを食べると魔力が回復したりしますか?」
「するわよ?だって魔力の集まってできた実だもの。」
「光属性のない人は、果物で体調管理するよー。」
「そうね。人族でいう薬も兼ねているわ。」
万能の実ということか!無生体は魔力少ないようだし、なおさら常備しておきたい。
今の空間魔法は時間が止まるので、たくさん採ってみたが、無生体になったときにこの中身ってどうなるのだろう。要検証であるが、最悪時間が止まらなければ、お土産としてほとんどを配ることにしようと思う。
あらかた収穫がおわったので、目的の時計の花に向けて歩き出す。
「そういえば、時計の花なんですよね?実になるとどうなりますか?」
「実?果物にはならないわよ。時計の花は、魔力がたまると花になるのよ。」
「え?果物って花が咲いてから実になるんですよね?」
「え?果物は果物でしょ?木に魔力がたまると果物ができるの。」
え?急に果物ができるの?そんな不思議生態系…異世界だからそんなものなのか。
「そうでしたか。では、時計の花って食べられますか?」
「花は、食べれないから花よ?」
「時計の花、おいしくなかったー。」
「メイシー!食べたの?」
「うん。でも、もういらない。」
「もう。花なんて食べても美味しくないに決まっているのに。」
見せてもらった時計の花というのが、花というより(時計に見えるがあえて言うなら)実に見えたので、違いが気になったのだ。
メイは食べたようだが、花というのは食べても美味しくないものを指すのかもしれない。
時計に見えるものを、美味しくないと知ってもあえて食べてみるような気はない。一つ、いや予備も入れて三つくらいの収穫で納めておこうと思う。
話しているうちに、着いたようだ。
ツツジのようなこんもりとした胸の高さくらいまである球形の植物に、先ほど見せられた時計(の花)がいくつも生っている。
時計が生る木とは、こうして実際に見ても見慣れる気がしないが、いずれ見慣れることができるのだろうか。収穫した時計を大事に使っていけば、今後とも見慣れられない気もする。
とりあえず、先ほど考えた通り3つを収穫して、アイテムボックスにしまう。
ふと見ると、その奥に屋敷のような白い建物が見えた。
「マキア…。」
マキアに聞こうと思い振り向いたが、マキアもメイも難しい表情で固まっている。
たぶん、念話中な気がする。
邪魔をするのも悪いので、とりあえず、先ほどの探索魔法を使ってみた。
無生体と比べて強く念じなくても、簡単に魔法が発動する気がする。これが、魔法特化ということなのだと思う。
ともあれ、探査の結果、黄イチゴと同じく時計の花も説明通り魔力が集まっているのがよく分かった。
さらに範囲を広げて建物の中を見ようと思ったのだが、近くに果物の生った木は見つけたが、建物の中に風が入れないようでよくわからない。
どうにか中を確認できないか考えるが、そういえば闇属性ってどんなことができるのだろう。
闇属性も使ったら見れるのだろうか?そう思うと、建物の中がぼんやりと見えてきた。どういう力かはわからないが、闇属性で建物の壁を突破できたようだ。
中はぼんやりとして詳しくはわからないが、4つの大きな魔力の塊が見える。マキア達と似た感じたするので、多分4人の魔族がいるのだろう。
「ごめんレイ、今日はここで帰りましょう?本当はこのままあの建物に住んでいる闇種族と光種族を紹介しようかと思ったんだけど…。」
「サイトがうるさいのー。」
「他の影種族も、よ。急に行ったら悪いからっていうし、時間も遅いからって。」
「はい。気にしないでください。」
「また来ましょうね。」
「よろしくお願いします。」
あの4人が闇種族と光種族らしい。急に行ったら悪いような、偉い人なのかもしれない。闇と光の種族なんて強そうだ。次の機会を楽しみにしようと思う。
まずはすっかり忘れていたが、サイトという異世界人。最強の物理特化だったか?魔族サイドの異世界人仲間としてうまくやっていけるといいな。
近くに果物を発見したことを伝えて、その収穫を行ってからサイトのいる所に行くことになった。
ちなみに、発見した果物は桃だった。アサへのお土産にもなるし、マキアも好きだと言っていたので遠慮なく収穫した。無生体になってもアイテムボックスの時間が止まっているようなら、このまま一緒に行動してくれるマキアに、随時分けるようにしたいと思う。




