運をもらって異世界転生してみましたが、聞いていた話と違うようです
平和なハッピーエンド目指します。よろしくお願いします。
夢だと思った。
何もない白い部屋。
いや、何もなくはないか。
自分と、疲れたような表情の白い髪と薄灰色の瞳の少年だけの空間。
「君をぼくの世界に案内するね。」
きたこれ!異世界!物語の始まりはよくあるここからだね。
「君が転生するにあたって、できるだけ君の望むものをぼくの世界で使えるようするから、考えて。」
なるほど。スキル構成とかそういうことだね。よくある、よくある。
「君にあげられるものの他はランダムになるけど、最低限の能力は上げておくから安心して。」
最低限の保証はありがたい。スキル、ステータスの振り分けが失敗しても最悪何とかなりそうだ。
まぁ、まずこういう場合のシミュレーションとして、とりあえず、どんな世界なのか聞かないと。
「…質問いいですか。」
「ぼくの世界は、とりあえず魔法のある世界だよ。
君はぼくの世界の人に召喚されているから、詳しい話は召喚した人に聞いて。そして判断して。もしその転生が納得できないようなら、召喚陣の中で『転生を望まない』と言ってくれればそのまま君は還ることできるよ。前の世界では死んでるから、輪廻の中にだけど。
そういうことで、詳しい説明と質問については後で…召喚陣の中で聞くようにしてね。」
「…はい。」
質問を受付してもらえないとか、不安がよぎるがクーリングオフできるならそれはそれで…いいのか?
というか、これは夢?異世界転生って…自分は死んだってことなのか?
「最近は半年に一度、誰かを召喚しているから、忙しすぎる。
この場で取れる時間も、少ないから早く欲しいものを決めてくれるかな。」
えっと、半年に一度の召喚って多すぎないか?…そんなに多くないのか?どうなんだ?
何のために召喚しているのだろう。
「時間が無くなってしまうよ。欲しいものとか能力とか何かないの。」
「えっと……とりあえず、運を。」
焦ると失敗する。でも時間がないらしい。考える時間がない。さらに焦る。
とりあえず、運は大切だ。ガチャとか出会いも運だよね。大切。
「他は?例えば、容姿とか、魔法特化とかは?」
転生というからには美形になりたいが、男女を選べるのかもしれないと思うと…迷う。
せっかくなら魔法を使ってみたいから魔法特化は気になるが、男ならやっぱりあこがれの筋力も欲しいから魔法に特化していいものなのか。あとは、危ない世界なら即死しないように耐性とかの防御面も必要かもしれない。よくある転移とかアイテムボックスとか…は、空間魔法なのか?他には鑑定とか隠蔽とかそういうのも必要か?流石に言語は最低限に入っているはず。
どこまでが、魔法特化に含まれるのか、最低限の中に含まれるのか…
「もうそろそろだよ。性別とかも希望ないの?」
「とりあえず、容姿はキレイ系で魔法は使いたくて…あとは、運と勘でやっていけるでしょうか。」
キレイ系なら男でも女でもありなはずだ。運で補えない分は、勘で危機回避できる…だろうか?
目の前の薄灰色は、ゆっくりうなずく。
「今のぼくに出来ることは少なすぎる。よく考えて。判断して。」
そうだ。クーリングオフがあった。よくあるハードモードっぽい異世界転生(召喚)なら、最初にあきらめればいい。それが死なのか、夢からの目覚めなのかは、わからないけれど。
足元が何かの魔法陣の模様のように光った。これが召喚陣なのだろう。
最後にもう一度、目の前の少年…たぶん神様を見る。白いこの空間を保護色とするような、白い髪、薄灰色の目、白い肌、白い服。その肌は、ただの白というより体調の悪さを示すような青白さに感じた。
大丈夫なのだろうか。いや、最悪クーリンクオフできるはず。大丈夫に違いない。
足元からの光がまぶしくなり、一瞬目を閉じた。
※
目を開けた。
眩しさはなく、青空?緑?森?
浮遊感とガサガサという音と葉が体をなでるような感覚。そして、ドサッという音と地面に臀部から着地した感覚。
…痛みはない。たぶん、何かの能力か最低限以上のステータスによるものか…焦りによる極度の緊張のためか。
見回しても森のような緑、見上げても青空。地面は土の茶色。
召喚されたのではなかったか。召喚陣の中で説明を受けられるのではなかったか。
聞いていた話と違う。着地した後動いていない。召喚陣は見当たらないが。
もしかして、これって…
「転生を望まない。」
ハードモード異世界転生を回避する魔法の呪文。
「転生を望まない。」
………変化なし。
思わず地面にこぶしをたたきつける。
拒否権どこ行った!クーリングオフできるって言ってたのに!
説明なしで始まるとか!聞いてない!…むしろ、説明ありと聞いていたのに!
その姿勢はいわゆるorzになっていた。