異世界迷子ー1
ここはどこなのだろうか?
いくら歩いても、周りの景色は変わろうとはしない。
無機物までもが俺は嘲笑うかのように。
こんな事になるんだったらやっぱりこなければよかった。
コミュ障には酷く億劫なる学校行事。
その最たる例である修学旅行に、俺は来ていた。
修学旅行に行くか否か、俺は散々考えたが、コミュ障を治すなにかきっかけになるのではないかと思い一念発起して来たのはいいが、やはり俺はコミュ障のままなにも変わらず、遂には班員と逸れてしまった。
「ああ、もうなんなんだよ!」
腹いせに木を思い切り蹴ってみる。
だが当然に、足に鈍い痛みが響くのみでなにも起こらない。
「ん?これなんだろ?」
拾い上げて見てみると、蹴った衝撃で落ちてきたのかなにかの果実だった。
「ちょうど、腹減ってたんだよ」
そう言ってそれを口の中に放り込む。
木の実ははっきし言って不味かったが、不思議と咀嚼する事を辞めようとは思わなかった。
そう時間もかからずに、落ちてきた一房を全て平らげる。
「ふうぅ……」
一息つくと、不思議と力が湧いてきた。
なんなのだろうか。
今ならなんでも出来るような気がするのだ。
「炎!」
冗談半分でそう唱えると、虚空に炎が上がった。
「…………」
あれ……本当に出来ちゃったよ。
「雷」
目の前で、小さな雷が迸る。
「oh……」
本当に出来てしまった。
なんなのだろうかこれは……
そう、俺が逡巡していると、いつの間にか目の前には可憐なる美少女が立っていた。
金色の長髪には艶があり、よく手入れされているのが伺える。
その純白のドレスを纏った痩躯はしなやかで美しい。
だがでるところはでるといったような感じで豊満な胸は顔を埋めたくなるようなものであった。
少女は髪を揺らしながら俺に近づくと、ふっと艶美に笑った。
「ようこそ、『ユグドラシル』へ異界の迷い子よ」