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神の力  作者:
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 「いつ見ても、………小さいね」


 試練の塔、または神の塔とも呼ばれている高さ30m程の石の円柱を見て、心愛(ここあ)が呟く。

 その呟きは、誰しもが思っていることだ。

 僕も最初は、神の塔とも呼ばれるくらいだから天まで伸びているようなんだろうな、と思っていたくらいだ。


 (まぁ~、天まで伸びてたら、どっからでも見えると、お姉さん思うなぁ~)


 テュケは夢がないな。まあ、(いろいろ軽い)神(笑)だから、もう夢とか見るような年頃ではないだろうから、仕方ないとも言えるか…………。


 そうだね、テュケ。テュケの言うとおりだ。


 (うぅ~~。納得いかない。何その、生暖かい目で皆がら行ってくるような感じぃ~。目は見えないけど、その分会話の声での感情が、凄く伝わってくるんだよぉ~!あと、心の声も聞こえてきてるんだからぁ~!)


 うん。僕が悪かったよ。


 (うあぁ~~~ん!!)


 そろそろ、頭の中がうるさくなってきたから、やめておこう。

 それに、そろそろ――試練の時間だ。




 「それで、(いつむ)は誰の試練を受けるの?」

 「時の神だけど?何さ」

 「いや、時の神って………」


 何やら、和希(かずき)が頭を抱えだした。

 持病かな?


 「神代(かみよ)君、時の神って言っても、一柱だけじゃないの……だから、その」

 「特定の神を指定しなきゃいけないの!」

 「へ~、で?名前は?」

 「調べてきてなかったんだね……」


 鹿宮さんが、苦笑いしながらポケットから何かを取り出した。

 よく見ると、メモ帳のようでちらっと見たが文字がびっしりと書かれていた。


 「えーと、クロノス様、カイロス様、サーテュルヌス様、後は、ホーライと呼ばれる女神の姉妹達……ですね。まだいると思いますが、私が調べたのがこれくらいで」

 「いや、凄く助かったよ。ありがとう」

 「ほわぁー、はっ!いえ、とんでもないです。はい」

 「はぁ、愛は自覚がないから、大変なのに……」

 「和希~、おいてくぞ!」

 「あぁ、はいはい。行きますよー」


 さっきまで隣にいた心愛は、ちゃっかり愛の横を陣取っていた。

 横を確認してから、愛に視線を向けた和希は、一つため息を吐いてから、駆け出した。




 神を指定する場所である、円形に開けた所に着いた。


 「んじゃ、少し行ってくる」

 「はい!気を付けてください」

 「ん、行ってきます」

 「ぁ……い、行ってらっしゃい!」

 「うわ、何この空間」


 愛は、2人に背を向け、数段高いところにある中心に向かっていく。

 後ろでは、一人は新婚みたいと悶えており。

 もう一人は、その者を見つめながら顔をゆがめていた。

 つまりは、誰もその(いつむ)の姿を見ていた者はいなかった。


 『汝、どの神を指名する?』


 何とも、渋い声がテュケとは違う感じで、頭に響く。

 これは、同じ要領で返せばいいのだろうか?


 『肯定する』


 ああ、いいようだ。

 さっきの中だと……なんだっけ。

 あっ、思い出した!モーライだ!


 『モー……ライ?』


 うん、そう。


 『モー………ライ?……ふむ、モイライのことか?』


 えーと、たしかそう。


 (―あっ!)


 『了承した』


 (―あぁ~、間違っちゃってるよぉ~……)


 視界が変化する前にそんなテュケの声が聞こえた。

 何を間違ったのか、わからないまま愛は転移の渦に吸い込まれた。






 『こんにちは、人間の少年』


 視界が変わると、そこには奇麗な女性が三人いた。

 やっぱり、間違っていなかったんだ!


 (―いやいや、間違ってるから!モイライって言ったら、運命の女神の三姉妹だから!)


 「あらあら、この神気(しんき)はテュケかしら」

 「まあまあ、そうですわねお姉さま」

 「はむはむ、間違いないよ姉さん」


 横に並んだ女性たちが左の方から順に喋った。

 会話から察するに、一番左が長女か。


 「あらあら、察しが良いのね少年」

 「まあまあ、そうですわね。ちなみに私が二番目よ」

 「はむはむ、私が一番下」


 左から順番に1番目、2番目、3番目のようだ。


 「はむはむ、私は3番目などではない。1番下!!だ!」


 どうやら、1番にこだわっているようだ。

 それに、こちらが話さなくても伝わっているらしい。

 いつも、テュケともこういう感じで会話しているので、なんというか……落ち着く。


 「はあ、いっちゃんがどんどん堕落していく未来がぁ~」

 「あ、テュケ」


 いつの間にか、テュケが現界していたようだ。

 まあ、ここは神のいる世界なので、現界とは……ちょっと違うかもしれないが。


 「まあ、他の人もいないしぃ~……いいかなぁ~って☆」

 「いいんじゃない?」

 「あ、あれぇ~……。読んだ本では、この決め台詞で落とせること間違いなし、って書いてたのにぃ~」


 「あらあら、あのテュケがねー」

 「まあまあ、あの天然毒舌神のテュケがねー」

 「はむはむ、あの好き嫌いにうるさい牛乳女がね」

 「……アトロポスちゃん、それもう原型なくなってるよね」


 (いつむ)は、三番目……ではなく、一番下のアトロポスを見て、テュケにそう言ってしまうのも仕方ない、と思うのであった。


 「はむはむ、同情とは……不愉快だ」


 それにしても、さっきから何かしら食べているアトロポス。

 しかも、ポケットから無限に出てくるようだ。


 「はむはむ、私は『未来を司る女神』。未来で無駄になるであろう食材を、こうやって消費している。故に、問題はない」

 「は、はぁ……」


 そういうことらしい。

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