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連奏恋歌〜求愛する贖罪者〜  作者: 川島 晴斗
第四章:休息のオブリガード
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第12話:地球の話

亀更新ですみません。結構暇な章なので、100話いったところで次の章にいかせちゃいます。

 夜、クオンはこの日の夜番であるミズヤを部屋に招き入れた。

 ポゥポゥと光る白い玉を中心に、ネグリジェ姿のクオンと、いつもの和服に身を包んだミズヤがサラを足に乗せて座っている。


「僕、こんな夜中に皇女様の居て、いいの?」

「私が許したんですし、ミズヤは何もしないでしょう」

「そうだけど、ねーっ?」

「ニャー」


 ミズヤがサラの手を持って同意を得ようとすると、どっちだかわからない返事が返ってくる。

 見慣れたその様子にクオンは微笑み、部屋に呼んだワケを話し始める。


「ねぇ、ミズヤ? 貴方の居た世界は、どんな所だったのですか?」

「【ヤプタレア】の事は知らないよ? 僕はサラ達すら居なかった、別の世界での記憶しかないもん」

「……【地球】、でしたっけ? そこはどのような所だったのですか?」

「地球? うーん……」


 ミズヤはサラの頭を撫でながら、上を向いて考える。

 地球という星を説明するにはどうすればいいか。

 パッと思いつくことといえば――


「機械がいっぱいあって、なんでも電気で動いたりして、便利なものがいっぱいあったよ〜」

「電気……ですか? カラノールでは電灯が使用されていましたけど、あれ以外に使い道が……」

「その辺は僕も知らないんだけど、電気を使った商品がいっぱいあってーっ、こんな感じかなぁ……」


 唐突にミズヤは魔法により、手元に黒いボードを生み出す。

 次に【白魔法】を使い、ボードに自分の思い描く光景を念写し、着色した。


 そこに映し出されたのは木の机に、白くて四角いディズプレイと、キーボードが配置されていた。

 キーボード付近にはマウスと携帯端末が置かれており、クオンは食い入るようにボードを見つめる。


「これ、僕の部屋の一部だったんだよ? この真ん中が黒くて外枠が白い装置がパソコンでーっ、キーボードで文字を打つと、色々調べたり、買い物したり……なんでもできるんだよっ!」

「……調べたり、買い物したり? 本も見ずに、移動もしないで、そんなことができるのですか?」

「うん。インターネットって言ってねーっ、世界中と繋がれるんだ〜。電波を飛ばしたり……? 僕、学生だったからよくわかんない」

「そうですか……」


 ミズヤにはよくわからないようで、クオンは落胆してみせた。

 今の文明レベルからパソコンを作るにしても、その普及まではどんなに頑張っても100年はかかるだろう。

 どのみち、【サウドラシア】で通信機器の開発は難しいのだ。


「あとはねーっ、電車とかバスっていって、人がたくさん入れる四角い箱みたいなのがあってね、それに乗って会社とか学校に行くんだよ〜っ。ちょっとこれ見ててね?」


 ミズヤはクオンにボードを手渡した。

 クオンは両手で持ってボードを凝視すると、ボードの絵が変わる。


 そこは黒い地面に猫が整然と並んでいた。

 黒い色、黄色い線、白い線があり、そこから先は崖になっている。

 その向こうにはいくつかの看板があり、猫に関する広告が貼ってあった。


 突如、ボードから電子音が鳴り響く。


《まもなく、各駅停車、ねこさんゆきが参ります。危ないですから、黄色い線の内側に、おさがりくださいですにゃ》


 構内放送が終わると、ホームの向こう側から猫耳の生えた白くて四角い車体が、滑らかに線路を走行して走ってくる。

 一陣の風とともに駆け抜ける箱――その電車が速度を落としながらやってきた。

 風邪を纏う巨大な箱の風圧に、多くの猫が吹き飛んで行く。


ファーーーーン!!!


「ひーーーーっ!!!」

「にゃぁぁああっ!!!」


 最前列に並んでいた猫達が丸ごと居なくなったところで、電車は停車した。

 プシューと音を立てて扉が開くと、残った猫がゾロゾロと列車の中に入っていく。


 そこで映像は終わり、クオンは顔を上げた。

 苦いものを食べさせられたのに、美味いって言わなきゃいけない時のような表持ちで、うんうんと頷きながら感想を告げる。


「ねこは兎も角、こういう移動手段があるのはわかりましたよ。魔法で動かしていないのなら、凄い事です」

「魔法じゃないんだよーっ。この電車が毎日、朝から晩まで動いてるんですにゃ」

「年中稼働しているわけですか。移動が便利そうで良いですね。飛竜より利点が多そうです」


 何度も頷きながらクオンは再生を終えた画面を見て、そんなクオンをミズヤはいつもの笑顔で見ていた。


「……いつか、私がもっと賢くなって、色々と指示が出せる立場になったら……このようにとはいきませんが、バスレノスをもっと豊かな国にしたいです」

「そーだねぇ〜……」

「ニャーッ」

「むっ、軽いですよミズヤ。他人事ですか」

「僕はサラの所に行かなきゃだもん。ねぇ、ねこさん?」

「…………」


 サラは鳴いて肯定せず、ミズヤの足から立ち上がってピョコンと飛んだ。

 そしてクオンの持つボードの上に着地し、クオンはなんとかサラの体重をボードの上で受け止めた。

 バシバシと、乗っかったボードを前足で叩くサラ。

 その行動に2人ははてなを浮かべるも、クオンはある事に気付き、ミズヤに尋ねる。


「ミズヤ……サラって、魔法が使えるんですよね? 【白魔法】は使えるんですか?」

「えっ……うーんとね、飛んだりするから【無色魔法】は使えるはずだけど、それ以外はわからないなぁ……」

「……サラに【白魔法】が使えれば、このボードに文字を写して会話したりできますよね?」

「おおっ……」


 新たな発見にミズヤが目を丸くする。

 その発想に気付かないのもおかしな話だが、サラからすれば――


(それができるならとっくにやってるわよ……)


 という事なのである。

 しかし、この世界の魔法は付与する事ができる。

 イグソーブ武器やジャージなどが代表的だが、他色の魔法すら扱うことが可能になるのだ。

 つまり、ミズヤがサラ自身に魔法を付与することもできる。

 色を変える――それだけでサラはボードに文字を写すことが可能になり、意思疎通が可能となるのだ。


「サラに【白魔法】が使えても使えなくても、僕が魔法作っちゃうねっ」

「ニャーン」


 サラが鳴き返すと、ボードから降りてミズヤの膝皿に頬ずりをした。

 これからは意思疎通が楽に取れそうになり、お互いに嬉しいのだった。


「……魔法はすぐにできませんし、この話はまた今度でお願いします」

「あ、うん。今は【地球】の話だったね。何が聞きたいのかな?」

「なんでも聞きたいですよ。人々の暮らし、文化、食べ物、娯楽……なんでも話してください」

「はーいっ。じゃあ、まずはねぇ……」


 それからミズヤは地球での事を話し始めた。

 国によって話す言語が違う事、彼の生まれた国の文化、食べ物の事や娯楽にまつわる事を。

 クオンは何度もミズヤに質問して、ミズヤは答えて、苦笑することもあれば2人で笑い合うこともある。

 そんな楽しい1日を、彼等は過ごすのだった。

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