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連奏恋歌〜求愛する贖罪者〜  作者: 川島 晴斗
第三章:魔物達の輪舞曲
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第9話:マナーズvsキトリュー・後編

更新停滞中……。

週一以上は確約します……。

「時間を……拡張?」


 その言葉の意味を、マナーズはすぐに捉えられなかった。

 歯切れの悪い質問に、キトリューは答える。


「【無色魔法】は空間を操る。空間というのは、(あいだ)()いていることを言うだろう? 時間というものは絶え間なく流れる川の水のようだが、水でさえ隙間はある。それを時間に置き換えて引き延ばし、時間を遷延(せんえん)させただけだ」

「……それって、世界全体の時間を遅らせたっつーことッスか? そんなん、魔力がもつわけ……」

「さてな。どう思おうが其方(そなた)の自由だが、俺はあまり魔力を使ったつもりがないよ。それに、俺の時間が速まっただけかもしれぬからな」

「……ともかく、アンタは時間を操れんスか。なるほどね」


 話を聞き、マナーズは「どっこらせ」とドライブ・イグソーブをその場に捨てる。

 そして影から新たに、白い鉄でできた大剣を2本取り出した。


「イグソーブ・ソード――斬れないっつっても、これは鉄だから当たると骨は折れるかも。すまんね」

「何を使おうが構わん。次は其方から来い」

「……はいよっ、と!」


 マナーズは右足を大きく上げ、地面を踏みしめる。

 踏みしめられた周囲は小さなクレーターが出来上がり、マナーズは一歩を踏み出した。


 その一歩は、一瞬にしてキトリューの元へ辿り着いた。


 右手の剣が振り下ろされる。

 最早それは視認できる速度ではなかった。

 しかし、キトリューは時間を遷延する事で回避する。

 それでも、ブオンという風圧を彼は感じるのだった。


(時間を遅らせて、この速さ……!)


 ここに来て(ようや)くキトリューの顔色が変わる。

 勢いのままに、マナーズは止まらず左手の剣を横薙ぎに振るう。

 これをしゃがんで躱し、キトリューは次に来るであろう右手の剣の側面を、地面に向けて殴り付ける。


 刀が手に当たった、その時だった。


 ガァンッ――!!


「ッ!!?」


 手で側面に触れただけ、それだけでキトリューの体は吹っ飛ばされてしまう。

 ただ、彼もまた並外れた運動神経をしており、背中から倒れるのを受け身を取り、腕をバネのようにして起き上がった。


「……その武器、面倒だな」

「バスレノス技術の結晶らしいッスからね」


 大剣2つを軽々と振り、マナーズは両腕を肩の後ろへと振りかぶる。

 圧倒的な速さを持ち、振られるその刃は触れたものを弾く。

 物体とぶつかった時の衝撃を弾性的に弾きかえす、それがイグソーブ・ソードの特性であった。


「んじゃ……行きますよっと」


 マナーズはそう宣言をし、左足を曲げる。

 その直後、彼の姿は消えた。


「【時間調節(タイム・コントロール)】――」


 それと同時にキトリューは時間を引き延ばす。

 すると、彼が目にしたのは走ってくるマナーズの姿であった。


「フッ!」


 まずは右腕の大剣が振り下ろされる。

 半歩引いて体を反らしこれは避ける。

 続く左手の刀は振り下ろすように見せかけ、横薙ぎに振ってきた。


 しかし、いくら裏をかこうと、フルスイングの大剣は動きが読める。

 しゃがみこんでキトリューは避けてみせ、マナーズの懐に入る。

 脇の隣で拳を握りしめ、再び腹部へと叩き込む――


 だが、吹き飛んだのはキトリューの方であった。

 ガァンッ! という鈍い音が再び響き、宙に浮かされる。

 拳への一撃は、剣で防がれたのだ。


 自分の渾身の打撃、その威力を跳ね返された力は10mにも及んで吹っ飛ばされた。


「ぬぅっ――!」


【無色魔法】により空中で止まるも、直後に飛んできたイグソーブ・ソードを躱す。

 地面からの投擲――ソードを槍として、マナーズは投げたのだ。

 いつの間にか彼は片手にドライブ・イグソーブを持ち、ボタンを押す事で衝撃波を連射する。


「【力の壁(フォース・ウォール)】」


 これは全て空気の壁で防ぎ、彼は地面に降下する。

 その背後にはまたもやマナーズが迫っていた。

 持っていたドライブ・イグソーブは捨てられており、1本のソードに力が込められる。


「よっと!」


 時間を引き延ばすには間に合う速度ではない。

 キトリューはこの一撃を受ける――



 その筈であった。


「――あれ?」


 声を出したのはマナーズだった。

 確実に仕留めるはずだった標的は()らず、その大剣は空ぶったのだから。


 間髪入れず彼は振り向いてキトリューを探すが、その必要もなかった。

 振り向いたその直後に、時間がスローモーションになったのだから。


「はぁ……。俺も【赤魔法】を使う事になるとは……」


 億劫と言わんばかりにボヤくキトリューは、マナーズの背後に立っていた。

 今までのキトリューは【赤魔法】による身体強化のない速度だったのだ。

【赤魔法】を使用する事で元から速いそのスピードは、マナーズをも上回る――。


 時間の遷延を受けながらもマナーズは振り返りざまにソードを薙ぐ。

 危険の察知による反射的な動き、暴力に訴えた力任せの一撃だった。

 しかしその手は掴まれ、攻撃を封じられた。


 ヒュッと伸びたキトリューの拳が、マナーズの顔の前でピタリと止まる。

 本当ならば相手を吹き飛ばしていた拳は寸止めで終わり、全ての動きが静止した。


 やがて、ポロっとマナーズの手から剣が落ちる。

 ズシリと重たい衝撃が芝生を覆い被さり、その直後にマナーズは掴まれた手を離して両手を上に挙げた。


「……降参ッスわ。俺より速いって、勝てっこないッス」

「…………」


 降参の一言を聞いて、キトリューも拳を引いた。

 最早拳を出している必要はない。

 2人は少し距離をとってから礼をし、クオン達の元へと戻って行った。


「……あー、すんませんヤーシャさん。負けやした」

「お疲れ様。あのまま殴られて顔面陥没してればよかったのに」

「よーしゃないッスね……」


 ヤーシャの言葉を受けて座り込んでしまうマナーズ。

 負けて落ち込んでいるというよりも、寝転がってたいというのが本音なのだが。


「イェーイ! キトリューお疲れ〜!」

「…………」


 戻ってきたキトリューの胸に環奈は飛び込み、抱きしめた。

 キトリューは環奈を引き剥がすでもなく彼女の頭を撫で返す。


 こうしてクオン達と西方軍事拠点による、初の模擬戦が終わったのだった。

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