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連奏恋歌〜求愛する贖罪者〜  作者: 川島 晴斗
第三章:魔物達の輪舞曲
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第7話:【羽衣正義】

ミズにゃー「うーん……これが新しいねこさん……」

にゃー吉「ロボねこさんですにゃ?」

サラ「サウドラシアにロボなんて居ないわ!」


超絶小話。あと、にゃー吉とは一体()

 話も終わり、クオン一行は再び軍事拠点へ戻った。

 夕陽が落ちる頃には夕食を食べ、各々浴場へ向かった後に客室へ向かう。


  客室は個室が3つしかなく、その個室はクオンとヘリリアが。

 残りは相部屋であるが、ケイクとミズヤ、環奈とキトリューでペアになる。

 ミズヤとケイクは今日も交互に寝ることになるため、部屋を共有する時間は実質少ないのが実態である。


 やることも無く、すぐに訪れた夜は静かで平穏だった。

 今晩もミズヤとケイクは交互にクオンを見張り、廊下で部屋の前に座っていた。


「あーっ……これはこうですにゃーっ」


 ピッピッと【魔法入力板(マジシャン・ボード)】に文字を入力して遊び、そのモニターを閉じる。


「【黒魔法(カラーブラック)】」


 そして魔法を発動した。

【黒魔法】は影の操作、物質生成などの効果を持つ魔法。

 彼は自分の足元に手をかざし、ある物を作り上げた。

 それは、黒いサラの彫刻であった。


「……ちょいワルねこさんだね〜っ」


 言動が意味不明であるが、ミズヤはにこにこと笑って彫刻を撫で回す。

 本物のサラが既に寝てしまっているせいか、猫さんパワーが足りないらしい。


 1人で遊んでいると、前の夜のように足音が聞こえてくる。

 ただその足音も1つだけで、やって来た黒髪の少女をミズヤは見上げた。


「……あれー、どうしたにゃ?」

「や、ちょいと聞きたいことがあってね」


 半開きの瞳のまま、環奈はミズヤの正面に腰を下ろす。

 ポカンと口を開けたミズヤに向けて彼女は、遠慮も無く質問をした。


「あんさぁー、神楽器持ってんだっけ? やっぱりヴァイオリン?」

「え? うん、そうだけど……」

「へー、なるほどねぇ……。マフラーは巻いてるし、刀もあるんよね?」

「持ってるけど……」


【羽衣天技】の3点セットはミズヤもしっかり持っていた。

 楽器、刀、マフラーの3点はフォルシーナが授けたものであり、楽器などはかつて生活の糧にもなっていた。


 ミズヤにしては、なぜ環奈がこんな時間に1人で聞きに来たのかがわからなかった。

 怪しんで注意深く環奈を観察する。


「……ちょっと刀貸してくれる?」

「……なんで?」

「疑わんでよ。別に刺しゃあしないから。それともアレ? おっぱいとか触らせないと見せてくれない? しゃーないなー、サラもキトリューも見てない今ならちょっとぐらい……」

「あーもーいいですからっ、貸しますよぅ……」


 半ば強引に迫られ、渋々ミズヤは影から刀を取り出した。

 柄を環奈に持たせると、環奈はゲンナリとした表情を作って見せ、


 ポイッと刀を放り投げた。


「ええっ!?」


 驚いて廊下に落ちる刀を拾いに行くミズヤ。

 何故そんなことをしたのかわからなかったが、否、わからないからこそミズヤはほっぺを膨らませた。


「なんなの環奈ねこさん! あんまり悪いことすると、このちょいワルねこさんが怒るよ!?」

「何その彫刻……。まぁまぁ、悪かったね。その刀には嫌な思い出が――無いか。無いけど条件反射でね、うん」

「……?」


 環奈の言うことがよくわからず、ミズヤは首を傾げる。

 そんなミズヤを見て環奈は吹き出し、昔語りを始めた。


「ウチはさ、【サウドラシア】で生まれて、転生して【ヤプタレア】に生まれて、それでこっちに戻ってきた、って言ったっしょ? ウチはさぁー、【サウドラシア】の第一生でね、その刀で刺されたんよ」

「……え」


 驚きと共に、ミズヤは手に持った刀を見つめた。

 紫色の柄白銀の刀身と金色の鳴らない鈴が付いた刀。

 魔王フォルシーナが渡した刀――。


「アンタの御先祖……かな。ヤララン・シュテルロードと昔、ウチは戦ったんよ。そんでこの刀で刺された」

「……僕の先祖に、殺された、と?」

「イヤイヤ、違くてね……。この刀の能力知らない?」

「……ん〜?」


 見当もつかないミズヤだが、答えないばかりでは悪いので何かしら答えた。


「刀がお花になっちゃう?」

「わかんないなら答えんでいいからね?」

「ふにゃーっ……」


 門前払いを受け、コテンと倒れるミズヤ。

 そして猫の彫刻は環奈に奪われ、肘掛けにされる。


「ミズヤの頭でわかってるか知らんけど、この世界は善意と悪意が魔力になる。そして、その刀で生物を斬る時に、あるキーワードを言うと、斬った対象の善魔力と悪魔力を変換するんよ」

「……ん?」

「ようは良い心と悪い心を入れ替えちゃうってわけよ」

「おおっ、そうなんですにゃー」


 簡単に言われてやっと合点がいき、ポンっと相槌を打つミズヤ。

 しかし同時に、1つの疑問が浮かび上がる。


「じゃあ環奈さんって……」

「気付いた? ウチ元はチョー悪い奴ってね。あっはっはっはーっ」

「……刺されて嫌味な性格になったの?」

「いや、良い人になったつもりなんだけど。ミズヤがウチをどういう目で見てるんかよくわかったわ」

「ごめんなさい……」


 ギラリと目を光らせた環奈に対し、ミズヤは頭下げて謝罪するのであった。

 とはいえ、過去にちゃんと環奈の悪意と善意が変換された――というわけでも無いのだがそれはまた別の話。

 環奈は「まったく」と言わんばかりにため息を吐き、そのまま立ち上がる。


「なんにしても、その刀は危ないからね。善悪を反転させる技、【羽衣正義】は出来うる限り使わんでね」

「……【羽衣正義】ですにゃー?」

「うん。ま、そんだけよ。じゃあね」

「はーいっ」


 環奈はそのまま踵を返して寮室に戻って行った。

 1人になったミズヤは刀を見つめるも、事の重大さがあまりわからず、すぐに仕舞うのであった。




 ◇




「いやー、ほんと助かりました。キトリューさんや環奈さんが計算凄くできて本当ありがたかったですよ」


 遠征2日目の昼頃、昨日まで溜まっていた書類の山を全て処理し、ヤーシャ含むクオン達7人は食堂で昼食を取っていた。


 中でも書類をよく(さは)いたのはキトリュー、次点に環奈であった。

 イグソーブ武具の発注申請や簡単な計算をこなし、内容の判断も素早かった。

 というのも、【ヤプタレア】では環奈はバイトを、キトリューは生徒会をやっており、書類に付いては完璧であった。


 義務教育など無い【サウドラシア】では計算が特に弱い。

 そのため、計算ができない面々は署名や押印を主に担当し、クオンやケイク等は疑問があればすぐヤーシャに尋ねて書類を潰していった。


 ミズヤも第一生において二次関数程度なら解けたため、苦戦することもなかった。

 内容がわからないものはクオンに任せていたが。

 ヘリリアも無難にこなし、今はモグモグとパスタを食べている。


「異世界って凄いんですね〜……」

「どーもー」

「…………」


 クオンが褒めると、環奈はヒラヒラと手を振って笑い、キトリューは無言で茶を啜る。

 文化レベルで言えば、携帯電話が普及する科学レベルの【ヤプタレア】は【サウドラシア】より良いのは違い無い。


「それでは折角の遠征ですし、今日はうちの訓練を見学して行ってください。ここ西軍は、かなり強いですよ――」


 ヤーシャは皆にそう告げて笑う。

 かなり強い――その意味を彼らは、すぐ知ることとなる。

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