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連奏恋歌〜求愛する贖罪者〜  作者: 川島 晴斗
第三章:魔物達の輪舞曲
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第2話:西方軍事拠点

誤字脱字などあればお気軽にご連絡ください♪

「失礼致します」


 断りを入れてからクオンが部屋に入る。

 その後にケイクとヘリリア、環奈とキトリュー、そしてミズヤが部屋へと続いた。

 室内は廊下同様に鉄の色で、棚や机も全て鉄。

 唯一窓だけはガラスであり、埋め込み型の円形照明が白い光を放っている。

 その部屋の中で――


「グガァァァ……」


 本を顔に被せ、ソファーで寝ている者が1人。

 そして、机の前で書類を書く者が1人居た。

 机に座る女性、それはこの西方軍事拠点の最高司令官その人である。

 濃淡な藍色の髪はだらしなく伸ばされ、顎肘をついてその豊満な胸を机に乗せながら、猫背になってサラサラとペンを走らせていた。

 クオン達に気付いてないため、改めてクオンは声を掛ける。


「あの……」

「うん? ……うん?」


 ピタリとペンを動かす右手が止まり、女はクオン一向を眺める。

 子供ばかりの奇妙な一行を、藍色髪の女はポケッと半開きの瞳で眺めた。

 そしてウンウンと頷き、もう一度見て一言。


「今ちょっと忙しいから……後でね?」


 それだけ言いつけてまたペンを動かす女に、クオン達は呆然とするのであった。

 ただ、この場所にクオンとケイクは訪れたことがあり、この展開も予想していた。

 そこでケイクは目の前で仕事をする女の代わりに、この場にいる人物を紹介する。


「ここの司令は相変わらずだが、皆……彼女がヤーシャ・クシュリュ・デミホリック、この拠点の最高司令官だ。そこに寝ている男はマナーズという、元Sクラスの“魔破連合”ハンターだ」


 説明された2人はジャージを着ているが、それぞれジャージにバッジが貼られ、最高司令官のヤーシャには肩章付きの赤いマントがある。

 身なりからも位が分かるはずだが、態度が悪いために偉そうに見えない。


「……はぁ」


 溜息を吐きながらヤーシャは語りと立ち上がり、ジャージのポケットに手を入れて皆に近寄る。

 そして尋ねた。


「誰かさー、計算得意な人いない? やってらんないわよアレ……なんでアタシが照度計算なんか……。報酬出すから、頼んでいい?」

『…………』


 この言葉には誰も反応できなかった。

 遠路はるばるやってきたクオン達からすれば、挨拶もしない、誰か計算をしろ。

 こんなことを言われてはたまったもんではない。


 だがここで、改まってクオンが挨拶した。


「おはようございます、ヤーシャ・クシュリュ・デミホリック西方軍事拠点最高司令官殿。仕事に忙殺され、私の顔もお忘れになりましたか?」

「……。……ん?」


 フルネームに肩書きまで言われ、ヤーシャはクオンの顔をじっと見つめる。

 途端、ハッと我に帰ったのか、ぺこぺことクオンに頭を下げる。


「こっ、これはこれはクオン様! 気付かずすみません……あはは、あははは……」

「……構いませんよ。それより、照度計算という事はまた増設ですか?」

「いやいや、バスレノス城でも【黄魔法】で電気使おうって言われまして……。先駆けのこっちでやってって押し付けられたら、設計部が逃げまして……」

「……苦労なさってるんですね」

「まぁ……はぁ……」


 途端に弱気になり、クオンに頭を下げる最高司令官。

 疲れて目が(くら)んだだけなのであった。


「……というより、遠征って今日でしたっけ?」


 そんなことすら尋ねてしまうが、クオンはきちんと言葉を返す。


「ええ。急なことですみませんね。私達は寝床さえ貰えればなんでも構いませんよ。こちらに泊まる分は、何かと仕事も手伝いたいですし」

「そりゃあ助かりますよ……。えーとねー……あ、でもとりあえずは建物を案内しますよ。初見の方もいらっしゃるでしょうし」

「その方がありがたいです」


 クオンも頷くと、ヤーシャはくるりと回って寝ている男の方へと向く。

 そのまま右手を大きく上げて拳を作り、顔面めがけて振り下ろす。


「フンッ!!」

「ぐぉぉっ!!?」


 バキッ、と良い音がし、男はソファーから転がり落ちる。

 マナーズという男の扱いを察し、ミズヤは苦笑を浮かべた。


 起き上がったマナーズは顔を押さえながらゆっくりと顔を上げる。


「……なんだ? 顔が爆発したような気分だ」

「うっさいから……。お客様来たから、中案内してあげて」

「はぁ……? なんで俺が、んなかったりぃ事……」


 悪態ついて再び眠ろうとするマナーズの首元に、剣先が添えられた。

 突如現れた剣、その持ち主はヤーシャで――


「やれ、能無し男」


 冷え切った目で彼を睨み、命令するのだった。

 マナーズの体はブルリと震え、おずおずと立ち上がるのだった。


「わかったよ……やりますよ。はぁ……」

「まずは挨拶しろ。此方(こちら)の方は皇族だ」

「はぁ……」


 ボリボリと薄オレンジの髪を掻きながら、目も合わせずにマナーズと呼ばれた男は挨拶をする。


「俺、マナーズっていいます……。魔破連合でハンターやってたけど、こっちのが楽できるってんで転職して、用心棒やってます……。よろしくお願いします……」


 小さく頭を下げ、クオン達も礼をする。

 その時、環奈はミズヤに小声で尋ねた。


「ねぇねぇ。さっきから魔破連合って言葉が出るけど、なにそれ?」

「……魔破連合は、悪い魔物さんを討伐する組織だよ。魔破連合の人は自分をハンターと名乗ってて、それぞれクラスがあるの。弱い順にC、B、A、S。つまり、この人は……多分、強いよ」

「そうなん? ほぇー」


 意味を知ると、環奈はどうでも良さげに唸ってキトリューに寄りかかった。

 キトリューはキトリューで嫌がらずに環奈の頭に手を置く。


「とりあえず、アンタら案内しますんで……。あー、話し方については誰に対してもこうなんで、許してくださいね、っと……」


 ボケーっとしながらクオン達の前を通り過ぎ扉を出て行くマナーズ。

 クオン達は互いに顔を見合わせ、男の後に続くのだった。




 ◇




 4〜3階は宿舎や会議室など人の集まる部屋になっており、2〜1階はほぼ訓練室であった。

 ただ、浴場や食堂は1階で、休憩室も1階にある。

 外もまた訓練場が広くあり、その先が貧困街であった。


「……まーこんな感じです。自主練とかしたかったら、外で勝手にやってください。……あー、あと、部屋は空いてる宿舎適当に使って……でいいのかな? そんな感じッス……」


 どうにもやる気のないマナーズはそれだけ言うと、ペコリとお辞儀をしてさっさと建物へ戻っていった。

 残された6人だったが、一先ずは昼食をとるために食堂へ向かう。

 それぞれ注文してテーブルを1つ独占するも、昼時より少し遅い時間のため、人は少なかった。


「それで、今日はどうしますか? ナルー様に会いに行くのはいつでもできるでしょうが……」


 定食を食べながらクオンが全員に尋ねる。

 とは言っても、会いに行く必要があるのはミズヤとサラで、他の人は興味があれば、の話であった。

 クオンは興味があり、ついて行くのは明白。

 ともすれば側近のケイクとヘリリアも行き、環奈達も自身がこの世界に来た事について興味があり、結局全員行く事になる。

 つまり、ミズヤの一存で今日の予定が決まるのだった。


 しかし、ミズヤに全員の行動を決めるほどの責任感はなく、サラに問う。


「……だって。サラ、どうする?」


 ミズヤに優しく言われ、サラは首を縦に振った。

 それは、もうさっさと会いましょ、という意味であり、ミズヤも行く事を決めるのだった。

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