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連奏恋歌〜求愛する贖罪者〜  作者: 川島 晴斗
第三章:魔物達の輪舞曲
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第1話:カラノール

第三章! 今回は今までのしょぼい戦闘とは違うものを見せたいと思います。


でもサラと会話するから少々お待ちを(笑)

薄明の空が照らす光はバスレノスの城を照らし、ミズヤの部屋もカーテンの合間を通って差し込む。

優しい光は部屋全体に行き渡り、ミズヤ、そしてサラの頬を撫でていた。


ビシッ


しかし、サラの尻尾がミズヤのほっぺを殴りつける。

それによってミズヤは口を開き、ゆっくりと閉ざされた双眸を覗かせる。


「うにゅうっ……」


パチリと目が開くと、目の前にサラのお尻が見えた。

ペットの猫は顔の真横で眠っていたのだ。


「……ふぁ〜っ」


起こさないように、口に手を当てて小さな声で欠伸をし、ミズヤはベッドから立ち上がる。

交代で寝た割に、よく眠れた――そんな感想を抱きながら、いつものように笑いながら部屋を出た。


食堂にて朝食を食べ、他の側近に挨拶をしてからまた部屋に戻る。

するとサラも起きていて、ミズヤの帰りに扉へと走る。


「あはは……サラ、おいで〜」


ミズヤも笑顔で両手を差し出し、その両手にすっぽりと収まった。

スリスリとサラはミズヤの胸でねだるようにし、にゃーんにゃーんと鳴く。


「お腹すいた〜? 今日は特別な日だから、昔取ったマグロの刺身食べよーねー♪」

「ニャァッ♪」


主人の言葉にサラは声を弾ませ、2人は笑い合う。

というわけで、ミズヤが1年ほど前に海で捕まえたマグロを影から取り出し、勝手に調理場を使って調理するのだった。


サラの朝食も終わってから、いよいよ遠征メンバーが龍亭場に集結した。

白き巨大な龍が1匹停泊しており、グルルと喉を鳴らしている。


「…………」

「……おい、環奈。そんなに嫌そうな顔をするな。気にしても仕方ないぞ」

「……わかってるよ」


竜を見てげんなりとしている環奈に、キトリューは諌めながら肩を持つ。

その様子にクオンの側近とクオンは疑問符を浮かべるが、今回の遠征のリーダーであるクオンがパンッと手を叩いて注目を集める。


「みなさん、おはようございます。今回の遠征は7泊8日の約一週間を予定してますが、諸事情があればもう少し長くなっても構わないと言われています。それと、今回は西方基地に行くわけですから、死ぬ事はありません。気軽に行きましょう」

「気軽で〜すっ」

「貴様はいつも気軽であろうが」


ミズヤの呟きにケイクがすかさずツッコミを入れ、2人を見てやれやれと、少し嬉しそうに息を吐くクオン。

ヘリリアはあわあわとして縮こまっているが、キトリューと環奈も悪い顔はしていなかった。

そして、今回の主役たるサラは――


バチコンッ!


「いたっ!?」


とりあえずミズヤの頬を殴っていたが、それでこそいつも通りと言えるのだった。







「龍遅いわ〜、マジで〜」


飛龍の背で寝転がりながら呟いたのは環奈であった。

ひゅうひゅうと青い空を行きながらも、その速度は彼女が魔法で飛ぶよりずっと遅いのだ。

しかも、龍の上で遊べるようなものもなく、退屈極まりなかった。


「我慢してください、カンナ。私とケイクは【無色魔法】が使えないんですよ。それに、飛んで行けるだけの魔力を持っているのは、貴方とミズヤだけですから」

「アンタら善意も悪意も何もないんか!!!」


環奈が叫ぶとヘリリアが土下座をするが、それ以外の者は空笑いを浮かべるだけであった。

環奈はそれだけの魔力量を持っている――という事は善意か悪意があるといえばそうではない。

その理由を知らないのは模擬戦を見ていないミズヤだけだが、その理由もすぐにわかる。


「あー暇。キトリュー、なんかしよー」

「俺に頼るな」

「じゃあミズヤで遊ぶかねぇ……」

「僕ですにゃー?」


呼ばれたミズヤはゴロゴロと竜の背を転がって環奈の元まで行き、サラと一緒にひょっこり起き上がる。


「……あー、サラもいるんか。どうよ? ミズヤに“猫として”愛される幸せは?」

「ニャァーッ!! ニャニャニャニャーッ!」


質問にいきなりブチ切れ、ビシビシと環奈の足にパンチするサラ。

しかし環奈にはまるで効かず、かえって頭を撫でられてあやされる。


「よしよし。相変わらずわかりやすいねぇー、あんさんは。ミズヤもさー、この子一応メスだし? ……メス? まぁいいや。メスだから、おっぱい触ったりしちゃダメよ?」

「……普通に胸やお腹撫でてたけど、大丈夫でしょうか?」

「うん、飛び降りていいよ」


非情なる死刑宣告とともに、本当にミズヤは蹴り落された。

なんとか魔法で飛べるミズヤはそのまま1人だけ、魔法で飛びながらカラノールへ向かうのだった。







飛び続けること4時間。

ミズヤがマフラーをバサバサ、鈴をリリリリンと鳴らし続け、漸く一向はカラノールへ到着した。

バスレノス城ほどもある巨大な要塞、その周りに広がる寂れた街。

貧困街のその中心にある建造物こそがバスレノスの西方軍事拠点――。


黒塗りの鋼鉄でできた長方形の建物、その屋上に竜を含めて全員が降りる。

すると竜は単騎で身を翻し、来た道を戻っていった。

クオン達が帰りになると、またやってくるのだ。


「……さて、一先ずはこの基地の最高司令官に会いに行きましょう。遠征ですからトレーニングのために、私を含めてみんなには対戦をしてもらいますよ」


クオンはみんなにそう言いつけると、1人で屋上の扉へと歩き出す。

他の者もその方へと足を向け、ゆっくりと続いた。


しかし、ミズヤだけは屋上の壁よりに向かって、貧困街の光景を見た。

ヒビのある白塗りの建物が連なった、寂れた街。

その様相はなんとなく、彼が見たフラクリスラル領に似ていたからだ。


「……ここはそんなに、酷くないはずだよね」


ポツリと溢れた言葉は、この地に住む民を思っての言葉だった。

フラクリスラルで垣間見た、あの日常的な殺し――それはこの国には存在しないとミズヤは信じる。

バスレノスの皇帝、そしてその皇子達の誓った(いくさ)は人を殺さないもの、貧民も無闇に殺したりしないだろう。


「…………」

「ミズヤーっ! 置いていきますよーっ!?」

「……。……今行くよー」


クオンの呼び声に振り向き、ミズヤも下の階を目指すのであった。

鉄筋造りの建物は壁まで鉄でできており、通路間にある扉はアルミで包まれた木製である。

重い金属で覆う、若しくは金属そのものが扉だと、開くのに力がいる。

木の扉をアルミで覆う事で外観を保っていたのだ。


魔法によって自動扉を作ることも不可能ではないが、そのためには膨大な魔力貯蔵装置や【魔法入力板(マジシャン・ボード)】を巧みに使える設計士が必要であり、それだけの技術はまだ【サウドラシア】にはなかった。

そうは言いつつも設計できる者はいる。

例えばミズヤ――それに魔王であったり――。

というのも余談であり、ミズヤは見慣れぬ光景に目を輝かせているのであった。


「ひゃーっ……なんだか凄いねぇ、サラ」

「ニャーッ」

「【黄魔法】で電気通ってんのねー。凄いじゃん、150年後の【サウドラシア】。でも、あの城は松明だったんに……工事面倒なんか」


ミズヤと環奈周りの様子に感心しつつ壁に触れたり、少し飛んで照明を見たりする。

道は3人並んで歩くのがやっとの広さだが、多くが子供なので困ることもなかった。


1つ階を下り、3階。

道が少し広くなり、ジャージを着た人も通るのが見え始める。

クオン一向はそれらを無視して進んだ。


「ここですね」


わかりやすく紙の表札に司令室と書かれた部屋に着く。


「マフラー取ったほうがいーい?」

「当たり前でしょう。帽子も脱いでください」

「にゃーっ」


ミズヤはクオンに言いつけられ、帽子とマフラーを外す。

その時環奈はまた何かを感じたようだが、今は何も言わなかった。


「では、入りましょうか」


クオンがそう呟くと共に、扉にノックするのだった。

追記

プロローグでは“電気の概念もない世界”と豪語していましたが、あれは魔破暦100年の話です。魔破暦147年の現在では魔力を基にした装置もできています。


ただ、電気が電子の動き云々ということは全く不明瞭で、これはフォルシーナも観測していません。

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