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連奏恋歌〜求愛する贖罪者〜  作者: 川島 晴斗
第二章:異世界からの来訪者
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第19話:遠征前

ここまでで二章を終わらせていただきます。

この後閑話を2回挟み、二章地点の設定、新コーナーのQ&A(あとがきに付録)を終えてから第三章に移ります。


今回はミズヤ視点です。ご指摘などよろしくお願いします。

 太陽も隠れてしまい、明かりは消えて世界は夜へひっくり返っていた。

 午後から起きていた僕は眠くはないけれど、今部屋に来ているクオンは眠たそうで、目が半開きになっていた。


「集まってもらい、ありがとうございます……」


 覇気のない声でクオンが挨拶しながら頭を下げ、ゆっくりと顔を上げる。

 その仕草を見る環奈さん、キトリューさん、僕と他のクオンの側近は渋い顔になっていた。


 今現在、このメンバーで僕の部屋にいる。

 クオンはベッドに座り、他のメンバーは床に座って丸くなっていた。


「……少し、カラノールに用があるので……その、遠征に出掛けます……」

「……クオン様、大丈夫ですか?」

「……平気ですよケイク。私を……誰だとお思いですか……」


 心配の声をはねのけつつも、うつらうつらと眠たそうにするクオンのまぶたは誤魔化せない。

 クオンもまだ12歳、無理するべきではないのだ。

 しかし、ここに人を集めた以上はクオンも要件を述べる。


「日程は……私達で、明日の正午から、です……。今夜の夜番は、ケイクとミズヤで、交代しながら……お願いします……うぅ……」


 それだけ告げると、パタリとベッドに倒れてしまう。

 数秒遅れて「すぅ……すぅ……」たも小さな寝息が聞こえてきたため、全員でそっと廊下に出た。


 廊下に出てから僕が部屋に結界を作り、廊下でまた話す。


「しかし、カンナ殿とキトリュー殿も行かれるのですか? 召喚されたばかりで、まだこの国に馴染めてないのでは……」

「いいよ別に。あまり馴染む気ないし」


 ケイクくんの言葉を環奈さんはばっさりと切り捨てる。

 キトリューさんは黙ったままだったけど、退屈そうな顔をしていた。


「えっ、遠征なんて、私は足手まといじゃ……」

「足手まといじゃないから、貴様はしっかりしろ」

「ひぃっ!? しっかりしてなくてごめんなさいぃいいいい!!!」


 ケイクくんがビシッと嗜めるも、ヘリリアさんはいつもの如く頭隠して尻隠さず。

 (うずくま)って頭を押さえる彼女を見て、環奈さんとキトリューさんは目を細めた。

 バカを見るようなジト目であったが、こんな事は最早恒例であるため、誰も気に留めなかった。


「ふむ……。ヘリリアを除いて、皆カラノールへ行くのは初めてだろう。少しではあるが、あらかじめ説明しておこう」


 ケイクくんは立ち上がりながらそう言って、カラノールについての説明を始める。


「カラノールは貧困街だ。だから上物の服を来ている奴が珍しく、人に襲われる可能性も高い。襲われないために皆、ジャージを着る事だ。それから、よく魔物が出る。善幻種であるナルー様を殺したいがために出ているようだが、カラノールには我々バスレノスの西方軍事拠点がある。大抵の魔物は、俺たちが出るまでもなく始末してくれるだろう」

「……待て。魔物って何だ?」


 話を切りキトリューさんは尋ねた。

 約200年前にこの世界で生きていた彼は、魔物を知らないのだろうか?


「魔物は魔物だ。悪魔力の塊に過ぎない。代わりにほら、龍亭場に龍がいるだろう? あれは善魔力で出来てるらしい」

「……環奈」

「……こりゃあヤバいかもねぇ」

「……?」


 ケイクくんの説明を聞いて、召喚された2人は張り詰めた顔になる。

 ……なんだろう? この世界では常識的なことのはず、だけど?


「……なぁ、ケイクとやら。俺たちは一度、西大陸に行きたいのだが……」

「それはクオン様に許可を取ってくれ。俺に許可を出す権利はない」

「いいよ、行っちゃおキトリュー。ウチらがカラノールから飛べば、2時間掛からんでしょ」

「……あれだけ強ければそうも言えるか。好きにするといい」


 環奈さんは身勝手にそう言うも、ケイクくんは止める気がなさそうだった。

 あれだけ強ければ、それはきっと、模擬戦を見ての感想なのだろう。


「……うにゃー、模擬戦見とけば良かった」

「おー、なになにミズヤ? ウチに興味出ちゃったん?」

「別に〜っ」


 意味ありげに笑う環奈さんのそっぽを向く。

 別に興味湧いてませんよーっ、サラもニャーニャー言って反論してるし。


「……ともかく、カラノールは貧困街だから、強盗に注意すること。命を狙われることはあまりないが、レジスタンスからも狙われる可能性がある。気を引き締めていくぞ」

『はーいっ』

「ごめんなさいぃ……」


 口を閉ざしたキトリューさんと謝るヘリリアさんはともかく、僕と環奈さんの声は重なるのだった。

 なんだか遠足みたいだけど、おやつは無制限だからいっぱい作って行こう〜っ。




 ◇




 そんなこんなで明日の予定を語っていると、今夜も襲撃を受けたらしい。

 今回は僕を含めトメスタスさん、環奈さん、キトリューさんの少数精鋭で出撃した。

 それは前回、何もできずに部下が大量に死んだためでもある。


 しかし結果、僕らが現場に着いた頃には敵は撤退していて、何もすることはできなかった。

 環奈さんは「瑛彦に会えんかー」と残念そうにしていたが、顔色が変わるわけでもないようだ。

 キトリューさんは元々、環奈の知り合いだったから瑛彦や【ヤプタレア】の僕を知っているというらしく、友人でもないからと気にしていなかった。


 僕らは手ぶらで帰り、皆それぞれ床につく中で、僕はケイクくんに変わって夜番をする。

 また4時間ぐらい経てば交代だ。

 そうしたら僕は寝て、明日が来る。


「ちょっとした旅になりそうだね、サラ」


 囁くように、胸に抱いた猫へ話し掛ける。

 すでに眠ったサラは何も言い返さなかった。


 ちょっと魔法の使える、可愛いねこさん。

 君の知ってる話は、どんな話なんだろう――。

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