表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
連奏恋歌〜求愛する贖罪者〜  作者: 川島 晴斗
第二章:異世界からの来訪者
52/147

第11話:セカンド・コンタクト⑤

 一方、ヘイラとトメスタスは商館に着いて立ち止まる。


「……オイ、大将。側面に結界がねぇぞ」

「あぁ……誘われているな」


 屋根には結界があったが、側面には出入りを塞ぐものがない。

 まるで「入れ」と言わんばかりに入り口も空いていた。


「……ふぅ。ヘイラ、ここは2人で入るとしよう。気を抜くなよ」

「ガッテン、っと」


 トメスタスが先を歩き、一歩後ろにアックスを担いだヘイラが続く。

 物音ひとつない闇の中に軍靴の刻みが響き、闇の中へと消えていく。

 一歩、二歩と、罠の中へと自分から入っていくのだ――。


 ――ゴポッ


「!!?」

「ッ!!」


 音もなく、口の中いっぱいに広がった水に2人は驚いた。

 体は鉛のように重くなり、あまりの重圧に膝を屈する。


(これは、“サファイアの瞳”――)


 一瞬のうちにトメスタスは能力の正体に気付く。

 サファイアの瞳――キュールのトメスタスが持つ異能の眼により、結界内を海にする能力。

 キュールのトメスタスは2人が建物に入ると、建物を結界で覆い、内部を深海と化したのだ。


「――ゴポッ」


 トメスタスが息を吐く。

 肺の中の限られた酸素はすぐに泡となって浮上していった。

 やがて、刀を両手に持ち直す。

 高く振り上げた刀身には黒い魔力が収束する――。


「…………」


 一方、ヘイラは無言でイグソーブ・アックスのボタンを押していた。

 水中で斧に赤き炎が、蒼き炎が纏い、業火のように膨れ上がる。


 そして、2人は互いに――


(――【一千衝華】!!!)

(――Execution!!!)


 掲げた武器を、振り下ろした――。




 ◇




 爆音とともに結界が破れ、高層集団住居の屋上に座った少年は、ぶらぶらと遊ばせた足を止める。

 50M先では結界が破れ、そこから建物全体に入った水が流れていた。

 ザァァァという激流の音に少年は耳を傾け、柔らかくため息を吐く。


「……まぁ、これまでに何度もやったトラップだ。今更効くわけがないよな」


 少年は立ち上がると紫の髪が揺れ、月に振り向けばその整った顔がよく映える。

 青色の瞳を終わらせ、その瞳の色もアメジストのような紫色に還った。


「お兄様」


 金髪に縦ロールの少女が少年に声をかけた。

 呼ばれた少年は顔を上げ、妹の名を呼ぶ。


「どうした、ミュベス」

「雑魚共は、全員死にましたわ」


 残酷な物言いをする彼女の後ろには、巨大な紫色の結界が張られていた。

 空中の中に存在する結界の中では、幾つもの死体が積み重なり、山が出来上がっていた。


 彼――キュールの王子であるトメスタスは、バスレノスの後続の軍にも同じ結界、魔法を使っていた――。

 100や200のドライブ・イグソーブでは破壊できない“ブラッドストーンの瞳”、そして“サファイアの瞳”により遅れてきたバスレノス軍を閉じ込め、窒息死させたのだ。


「――いや」


 しかし、トメスタスは見逃さない。

 結界内に居る何人かの胸が上下に動いていることを。


「……何人か捕虜が出来た、な」

「……そのようですわね。しかし、こんな大々的に結界を出していたら、奴らが……」

「それについては問題ない。なぁ、フィサ?」

「……はい」


 ゴシックドレスを着た青髪の少女が小さく返事を返す。

 その少女の前には水でできた、巨大な鏡があった。

 それは凸レンズの形であり、レンズを通してこちらを見られても、光の屈折で何もないように見えるのだ。


「――と、いうわけだ。少数精鋭で来たのは功を成している。アキヒコが戻り次第帰還するぞ」

「え……でも、アキヒコはあの緑の少年と……。神楽器使いの少年と戦って、無事かどうかわかりませんわ。早く退()いた方が――」

「大丈夫」


 ミュベスの言葉を遮り、フィサが口を挟んだ。

 一陣の風が吹き荒れ、少女たちの髪を大きく揺らした。


「アキヒコは、強い――」


 フィサのその呟きに反論する者は無く、皆が閉口する。

 静かに流れる時間を、3人はただ待つのだった。




 ◇




「フッ――!!」


 瑛彦が息を吐き、大振りの槍をミズヤは躱す。

 すぐさま繰り出される刃の突きを、瑛彦は後ろに飛ぶことで回避した。

 ここで一区切りとしたのか、瑛彦が口を開く。


「殊勝なことじゃねぇか。魔法を使わねぇなんてよ」

「君こそ、超能力を使ってないじゃないか。飛んでいるんだし、魔法だって使えるんでしょ?」

「御察しの通りだが、そんなんじゃ面白くないね!!」


 槍を振り上げて空を蹴り、大きな一撃を繰り出す。

 響いた鉄のぶつかる音は、ミズヤが刀で防いでいた証であった。

 思い切り振り下ろされた槍、それを受け止める細い刀身、いずれも劣らぬ力で拮抗していた。


「……もう、終わらせていい?」


 感情のない声がミズヤから出る。

 力、武器を扱う技量は同等のように思える瑛彦はそれを一笑に伏す。


「やれるもんなら、なぁっ!!」


 瑛彦は降ろした槍を押し切り、ミズヤを下に落とす。

 自由落下するも、宙返りしてすぐにミズヤは体勢を立て直した。

 両足で空を蹴り、今度はミズヤが刀を振り上げる。


「やぁっ!!」

「こいっ!!」


 鉄と鉄がぶつかり合う。

 交差しあった互いの獲物は拮抗し、2人は動くに動けない。


 と、いうわけではないのだ。


「グッ!?」


 瑛彦は脇腹に痛みを感じ、一歩引く。

 何が、奴は両手を使っている――そう思って見ると、ミズヤは足を出していた。

 前に伸ばされた右足、彼はローキックを繰り出したのだ。


 2人がいるのは空中、両足は自由である。

 そしてこれは武器だけの戦いではない。

 魔法も超能力も使ってないが、そんな異能よりももっと基本的な人間の武器、手足は使える。


「――野郎!」


 瑛彦は思わず吠え、槍を振りかぶった。

 ミズヤは微動だにせず、ただその様子を見つめ――ヒョイっと半身を後ろにずらすだけで槍を躱し、ガラ空きとなった背中にかかと落としを決めた。


「グッ――!」

「戦い慣れしてないんだね。そもそも、槍は一度振り抜いたらあまり使えない。突きならともかく、薙ぎはらうと言ってもここは空中。大したダメージにはならないからねっ!」

「あぐっ!?」


 ミズヤは乗せたままの足の膝を曲げ、反動で瑛彦の背に乗り、髪を掴む。

 グイッと上を向かされた瑛彦の首元には!冷たい刀が突きつけられた。


「僕の勝ち、でいいよね?」

「ぬぁ〜っ! いてーから放せよ!」

「……君の負けだよね?」

「わかったから! 俺の負けだっつの!」

「…………」


 負けを認めると、ミズヤは刀を離して上に飛んだ。


「約束通り、教えてもらうよ。別の世界の、僕の事――」

単純な格闘であればミズヤが勝ちます。

超能力、神楽器ありでも【三千雷火】で同等の速さで戦えるミズヤが勝ちます。

だから、瑛彦に勝機なしってね( ̄▽ ̄)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ