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連奏恋歌〜求愛する贖罪者〜  作者: 川島 晴斗
第二章:異世界からの来訪者
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第1話:新たな始まり

お待たせしました、第2章です。

 20畳程度の洋室があった。

 その中央には少年が1人立っており、部屋の隅にある天蓋付きベットを見張っていた。

 刹那――



 ドシュッ!!!



 ウェーブを描いた衝撃波が天井の隅から出現し、ベッドへと降り注ぐ。少年は何をするでもなく、ただ両腕に持つD型の武器――ドライブ・イグソーブを構えた。


 ベッドへ着弾する衝撃波を相殺することはない。

 何故なら、敵の攻撃は結界によって弾かれたのだから。

 少年は淡々と衝撃波を撃ってきた方角へ衝撃波を撃ち返し、爆発音を確認する。


 パリンッ!!!


 だが次の瞬間には部屋の窓が割れ、外から幾人ものジャージを着た男達が部屋に侵入する。

 それでも少年は微動だにせず、寧ろ欠伸をしていた。

 彼の様子に侵入者は頬を引きつらせ、先頭に立つ男が命じる。


「やれぇぇえええ!!!」


 怒号にも近い指示に、男達は一斉に魔法を放った。

 炎、雷、水、風、あらゆる魔法が少年を襲う――


「【力の(フォース)――」


 しかし、少年は迫り来る魔法に手をかざすだけ――否、その手の表面からは半透明なオレンジの面が出現する。

 部屋を隔てるほどの巨大な“面”――それはすべての攻撃を受け止め――


「――四角形(スクエア)】」


 弾き返した――。

 部屋の反対側に向かって面から空気の塊が放出される。攻撃をすべて押し返し、男達は爆発に包まれた――。


 煙幕が晴れ、瓦礫の中から姿を見せる者はいない。

 少年は漸く座ると、ガチャリと部屋の扉が開く。

 入ってきたのは銀髪のツインテールをしたクオンを筆頭に、バスレノス一家や貴族達がやってくる。

 その中でも皇帝が前を出て、小さく拍手をしながらミズヤの前に立った。


「見事だ。これで戦闘、暗殺対策の試験は合格だな」

「えへへっ、ありがとうございますっ」

「……それで、次のクオンを持て成す試験だが、免除する。それだけの力があれば娘を守ってくれよう。期待しているぞ、少年」

「ご配慮感謝します。わーいっ」


 ミズヤは皇帝の前から飛び出し、クオンの前に立った。


「クオンっ、これで正式に側近だね〜っ」

「ええ、おめでとうございます。これからもよろしくお願いします」

「うんっ」


 にこにことミズヤが笑い、クオンも釣られて微笑む。

 その様子を見て睨む猫が1匹と、トメスタスが2人の前に立つ。


「喜ぶのも良いが、これからが不安だ。ここ三日、レジスタンスが事件を起こしてないからな」

「……?」


 トメスタスの言葉にミズヤは首を傾げる。

 トメスタスに変わって、ラナが説明を付け加えた。


「キュールの奴らは最低でも、2日に1回はどこかを襲っていた。これほど日数が開くことは初めてだ。もしかしたら、何か仕掛けてくるかもしれんぞ……」

「……油断大敵、ですか?」

「そうだ。城にいるから確実に安全というわけでもない。あまりはしゃがず、冷静な心を見失うな」

「はいっ……」


 ラナから直々に忠告を受け、ミズヤはビクビクしながら頷いた。

 威圧的な言動を前に、流石のミズヤも萎縮するのだった。


「……ともかく、これで側近も3人(・・)決まったか。クオンもこれで安心だな」


 トメスタスが何気なく呟いた言葉に、ミズヤはグルンと首を回して少年を見た。

 自分は3人目だと――そんなことは聞いていなかったから。


「僕って、3人目なんですか?」

「あぁ。こんな非常時に側近が1人なわけないだろう?」

「前の私の側近は前回全員殺されてしまいました。いくら神楽器を持った人が付いていても、私が確実に安全を得る保証がありませんからね」


 当然とばかりに頷くトメスタスに、クオンが説明を付け加える。

 つまり、前のクオンの側近もそれなりの強者だったが、全員殺されてしまった、というような事態もあり得る。

 しかし殺されることなく返り討ちにできるだけの強い人材を集めてる、言ったところなのだ。


「では俺たちはそれぞれやることがあるのでな。ミズヤは父上に勲章を貰っておけ」


 トメスタスが笑いながらそう言うと、彼と連なってラナがこの壊れた部屋を退室していった。

 部屋を修復する【緑魔法】を使う人が集まる中、クオンもミズヤにニコリと笑って一礼し、部屋を退室して行った。


 ミズヤは1人になり、その後兵士の1人に任命式まで部屋で待機するよう言い渡され、彼も自室へ戻って行った。


「さーらにゃーっ」


 部屋に着くなりミズヤは後ろから付いてきた自分の猫を抱きしめた。


「ミャー?」

「僕、側近になっちゃうよーっ。サラもクオンと一緒に居ることになるから、彼女を守ってあげてね?」

「…………」


 サラはプイッとそっぽを向き、ミズヤの手を振り払って床に着地し、ぴょこぴょこと部屋を飛び出していった。

 相変わらず彼女はクオンが苦手らしい。


「まったくぅ……」


 ミズヤは苦笑して肩を(すく)め、扉の向こうを見送るのであった。

 そして彼はベッドに座り、こんな事を思う。


(……これから側近、かぁ。今まで通りクオンと接してればいい……よね?)


 これから彼の生活も大きく変わる。

 その要因である少女の顔を思い浮かべた。


 いつもキリッとしていて律儀だが、くよくよと悩んで毎日を真摯に過ごしている。

 銀色のふわふわしたツインテールを触ると睨まれたりするということはミズヤの記憶に新しい。


「……守る、か」


 ミズヤは正直、自身には守るということが似合わないと思っていた。

 かつての家族の死と、前世での恋人の死が彼をそう思わせる。

 だが、もう決まったことであり、決めたことだから――


「……もう、死なせたりしない」


 自分の親しい人が死ぬのを彼自身見たくない。

 その想いがポツリと溢れ、部屋に溶けて消えるのだった――。




 ◇




 帝都よりさらに南の街一体――その地下には数千人が暮らせるだろう地下都市ができていた。

 自然を操る【緑魔法】によって空洞を作り、結界で空間を固定、住居や施設等も【緑魔法】で一瞬にして作られていったのだ。


 その施設の1つである大集会場は【白魔法】により壁が一面真っ白くなり、床にはタイルの模様が広がっている。

 大集会場というだけあり、今この場には1000人の人が集まっている。

 しかし、そのうちの殆どは立てずにいた。

 会場の中心だけは縁を描くようにしてポッカリと開いており、その中心にいる少年と少女は周りを見て狼狽する。


 それもそのはずだった。


 彼らはたった今、この世界に召喚されたのだから。


「あ、瑛彦(あきひこ)くん……」


 少女が少年の背にキュッとしがみ付く。

 見ず知らずの異風な人間に囲まれ、明らかに怯えていた。

 しかし、いやだからこそ少年は心配させないように笑った。


「心配すんな、理優(りゆ)っち。俺が護っからよ」


 少年はそう言って少女に語りかけ、彼女の半身を抱きしめた。

 そんな2人の様子を、腕組みをして見物する者がある。


「どうだ魔王? 満足か?」

『……。あぁ。協力感謝する、トメスタス』


 魔物を統べる王と亡国の王子はそんな会話を交わし、2人の様子をもうしばし見物するのであった。

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