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連奏恋歌〜求愛する贖罪者〜  作者: 川島 晴斗
第一章:バスレノス帝国へ
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第19話:ファースト・コンタクト⑤

 内側から2枚目の結界、つまりは3層目の結界。

 ミズヤが振り下ろした拳は、空振りに終わった。


「……あれ?」

「ッ! “(チェーン)の瞳”か! ミズヤ殿、下がれ!!!」

「…………」


 結界の間にミズヤは半身が挟まり、既に抜けなくなっていた。

 ぐいぐいと結界を押しても、抜けることは全くできない。


「むうっ……」


 怒ったと言わんばかりにぷくぷくと頬を膨らませ――


 パリンッ!!


 ――殴って結界を破った。


「……おい。“(チェーン)の瞳”は確か、全身が金縛りになるんだが……」

「あっ、そーなんだ? 【三千雷火】で全身の感覚を狂わせてるから、助かったや」

「…………」


(つくづく化け物だな、彼は……)


 なんでもないように話す無邪気な少年に、ヴァムテルは内心戦慄するのだった。

 その間にもミズヤは3枚目の結界を破壊する。


「……やれやれ、俺の結界をそんな容易く破らないでくれよ」

「!?」

「?」


 やれやれと言いたげな男の声に、ヴァムテルは驚き、ミズヤは首を傾げた。

 直後――ヴァムテルのすぐ真横の壁が破壊される。

 咄嗟にヴァムテルはドライブ・イグソーブの飛行機能で飛び、地面に着地する。


 2階の空いた穴からは、紫髪の男、そして男を囲うようにフィサ、ミュベスが立っている。


「…………」

(なんか偉そうな人ですにゃー……)


 ミズヤは生唾を飲み込み、3人を見つめる。


「……えーとっ、貴方は誰でしょうか?」

「おおっと、名も知らぬ男の結界を破壊したのか? いけない小僧だ。だから――」


 男はゆっくりとミズヤに向けて手を伸ばし――一瞬のうちに、ミズヤを小さな結界が囲んだ。


「死ね」

「やだ」


 バキンッ!!!


 ナニカが発動する前に、ミズヤは結界を打ち壊す。

 彼の瞳には命令を聞く気など欠片もなく、にこりと微笑む優しさが灯っていた。


「お兄さんは誰ですか?」

「……。やれやれ。いいだろう、教えてやる」


 紫髪の男はかぶりを振って溜息を吐き、その名を口にした――。


「俺の名は“トメスタス”。トメスタス・レクイワナ・キュールだ! よく覚えておけ、若造!!!」


(トメスタス――!?)


 その名を聞き、ミズヤは硬直するのだった――。




 ◇




「にゃーっ!!(離しなさいよ! この薄汚い泥棒猫!)」

「あーもう、暴れないでくださいよ……。せっかく見つけたんですから、大人しくしていてください」


 所変わって城ではクオンがサラを発見し、ミズヤの部屋へ運ぼうと廊下を移動していた。


「シャァァアア!!!(くらいなさい! この鋭利な爪を味わうがいいわっ!)」

「わっ!? あーもう、危ないですね! 気絶させないとダメでしょうか……?」

「ニャニャァア!(アンタごときにやられる私じゃないわボケェ!!)」

「ああっ!?」


 クオンの胸を蹴り、サラはまた逃げ出した。

 猫の走りは素早く、この緊急時で人が行き交う廊下では追いつきようもなかった。


「……はぁ」


 とぼとぼと廊下を歩き、また1人で金色の猫を探す。


「なぜ懐かないんですかねぇ……ん?」


 廊下から広間に出ると、端の方でトメスタスを見つける。

 彼は何もせず腕を組んで、窓の外を見つめていた。


 兄がクオンはちょろちょろと小走りで彼の元に近寄った。


「トメス兄様」

「ん? ……あぁ、クオンか。何か用か?」

「別に用というわけではないですが……何してるんですか?」

「……月を見ているだけさ」

「……月?」


 言われてクオンも窓から外を見ると、月が出ていた。

 ちょうど半月が出ており、黄色い月光が世界に光を与えている。


「……月なぞなんでもないさ。ただ、今夜は奴が暴れそうだと思っただけだ」

「……キュールのトメスタス、ですか?」

「あぁ。……まったく、同じ名を持つといろいろ怖いものだ」


 吐き捨てるようにそう呟いてトメスタスは踵を返す。

 クオンはその兄の後ろ姿を、追うことができなかった。


 事実――今夜は荒れている。

 ただそれは、半月だから、という理由だけではない。


 優しくも強力な少年が、諍いに参戦したのだから――




 ◇




「同じ名前……なんだ」


 キュールの姓を聞き、ミズヤは聞き返していた。

 もう1人のトメスタス、それが兄弟か双子かというわけでもなく、単なる同姓同名。

 それを聞いて、ミズヤは少しばかり安心した。


「フン、俺のことはいいだろう。それより貴様は何者だ? ヴァムテルと一緒にいる貴様は?」

「…………」


 名を尋ねられ、ミズヤはまた迷った。

 名を告げれば、それはバスレノスの不利益になるかもしれない。

 クオン(ともだち)のために、それは避けたかったから。


 だからミズヤは、横目でヴァムテルを見る。

 下からの反応は、首を横に振るもの。

 名は告げなくていい――そう解釈し、ミズヤはこう答えた。


「別に、ただの傭兵ですよ」

「その鉄腕、羽衣……“神楽器”を持っているのだろう? ただの傭兵ではないはずだが?」

「……まぁ、神楽器にはいろいろと因縁はありますけどね。そういう家系(・・)に生まれてしまっただけです――」

「……ハッ。その事情は知らないが、新勢力とでも思っておこう。ありがとう少年――」


 トメスタスが言葉を止めると、彼の背後にいるレジスタンス達は一斉に武器を構えた。

 数十個のイグソーブ武器がミズヤへと向き――。


「そしておやすみ」


 一斉に光線を放った。

 レーザー、衝撃波がたちまちミズヤに襲い掛かる。


 しかし――彼は今、光に等しい動きが可能だ。

 秒速30万kmの動きをすれば全て避けることができるのだった。

 だが、避けたところで次の手は?

 1人1人レジスタンスを倒していく?

 それとも逃げ続ける?

 全員ここで仕留める?


 否、それはこの戦いでは無為になる。

 これは殺さない戦いとバスレノスの皇族が彼に宣言したのだ、倒すのはあるにしても殺すのはないし、何よりも倒したところで敵の心が挫けない限りは攻め続けてくる。


 だから敵の心を挫く、その為には――敵の行動を全て無駄にすればいい。

 なんせ、無駄なことをし続けるような愚かな事を、人はしないのだから。


「フッ――」


 ミズヤは右腕を振り上げ、拳を握り締める。

 その腕を――前方に、彼にしては少し遅めに放った。

 だが手の移動にかかる速さのエネルギーは衝撃波となり、イグソーブ武器の攻撃を相殺する。


 数十人の攻撃を、一瞬のうちに防ぎきったミズヤに、フィサやトメスタスを除く、レジスタンスの皆が驚愕した。

 イグソーブ武器自体の攻撃は、1つ1つがかなり強力だ。

 その武器はバスレノスが総力を挙げて作り出したものであり、入手する事がもとより厳しいレジスタンスは人数分使うことができていない。

 だが、それ以上にトメスタスの“宝玉の(まなこ)”やミズヤ達の持つ“羽衣系統の技”は、規格外なのだった――。


「……えーと」


 静まり返った空間に、ミズヤが照れるように頬をかきながら口を開く。


「僕を殺したいなら撃ち続けて構いません。僕、死ぬ気ありませんからっ」


 にこりと微笑む少年に、レジスタンス達は戦慄するのだった――。

最近短かったのでおまけ。


「うえーん……ねこさんがぁ、ねこさんがぁあ……」


ミズヤはしくしくと泣いていた。

自分のペットが、あんな姿に変身してしまったのだから。


「フッフッフッフ、北大陸は私が征服してやるわ! 内乱? 知らないわね!」


巨大ロボと化した沙羅が家屋を踏み潰しながら北大陸を闊歩する。

右手には宇宙粒子を吸収、放出を行う機械銃が携えられていた。

放出されたビームは街を焼き、めくるめく阿鼻叫喚が響き渡る。


「クッ……キュールのトメスタス公、私と手を組め! あのデカブツを結界に封じ込めろ!」

「ふざけるなよラナ! 今こそ我が祖国を取り戻す好機――「邪魔よ!」――ぐぁあ!!」


キュールのトメスタスは吹っ飛ばされ、ドライブ・イグソーブを噴射したフィサが彼を拾う。


「くっ、こんなふざけた物を……。【羽衣天技】――」


トメスタスが刀を振りかぶり、黒い魔力を収束させた。

豪華吹き荒れる街に、一筋の黒い光が空に輝く。


「はん! アンタみたいなチビの【羽衣天技】なんて聞くわけないでしょ!」

「うぉぉ【一千衝華】ぁぁあ!!!」


黒い魔力の塊を振り下ろし、レーザーの如く空を駆ける。


「フィールド、オープン!」


沙羅は防御魔法を展開し、黒いレーザーを防ぐ。

少しも押すことはなく、黒いレーザーはその放出を終えた。


「ハァ、ハァ……クソッ」

「私を舐めるなぁあ!!」


左腕の一部が変形し、刀の形になる。

両腕で刀を持ち、沙羅は足のホイールをギュインギュインと高速回転させ、突進した。


「ヒャッハァー! サイッコォォオオオ!!!」


街が壊れ、人が死に、北大陸が火の海と化す――。


この地獄絵図を生み出したロボサラは、実は南大陸にいる姫だとは誰も知らない――。







「っていう展開を考えたんだが、どうだい?」

「アンタを轢き殺すわよ?」


南大陸アルトリーユ公国で、サラ王女と他世界の神、自由律司神はそんな会話をしたそうな。

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