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連奏恋歌〜求愛する贖罪者〜  作者: 川島 晴斗
第一章:バスレノス帝国へ
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第9話:皇帝

この辺の話はサブタイが……

 皇子と皇女が走り回っているうちに、兵は持ち場へ戻り、トメスタスはミズヤのようにぐるぐる巻きにされてラナに引きずられていた。


「……2人とも、見苦しいところを見せたな。さぁ、父上の元へ行こう」


 気を取り直してラナがそう言うと、すぐに踵を返して城の入り口へと、トメスタスを引きずって進んでいく。

「雪が冷たい!」とか「許して姉上!!」とか聞こえるが、それを気にせずクオン達も城の入り口へ向かった。


 入り口に居た兵は引きずられるトメスタスを見て4人を素通りさせ、内部に入る。

 明かりの松明が掛けられ、赤い絨毯が一直線になった道を進んでいく。

「痛い痛い!擦れてる!」という叫び声はきっと幻聴だ。


 階段前でトメスタスも解放され、4人で城の上階へ進んでいく。

 白と緑を基調とした内装に、ミズヤはちょっとした観光気分で見ていた。


「ふぅ……ついたな」


 金色の枠打ちがある茶色の扉を前に、ラナは立ち止まった。

 この中で年長者である彼女はふぅっと息を吐き、コンコンと礼儀よく二度ノックをする。

 中から「入れ」という冷たい男の声が聞こえると、すぐにラナは扉を開いた。

 ズカズカと中に入ると、その後に3人も続く。


 室内は静かであり開いた窓から差し込む陽光だけが室内を照らす。

 ソファーやテーブルが置かれ、入り口の横にある棚には本と書類がびっしりと入っていた。

 奥にある机には1人の中年男が座していて、男は4人の方を見た。

 それよりも先に、ラナの口が回る。


「失礼します。ラナ・ファイサール・バスレノス、ただいま帰還しました」

「! ラナ! 帰ったか!」

「えぇ、こちらは特に問題もなく、クオンも回収できました」


 ガタッと男が立ち上がると、赤いマントが広がった。

 トメスタスと同じ緑色の和服にはいくつもの宝石がつけられ、その身分がミズヤにも伺えた。

 何よりも、彼の銀髪から――。


「父上、帰還が遅れて申し訳ありません。なにぶん、私以外みんな、その……」

「クオン! お前が生きているだけで十分だ。あぁ、よく帰ってきた。私の娘よ」

「…………」


 クオンの父が歩み寄り、そっとクオンを抱きすくめる。

 だが、クオンの顔には曇りが見え、ミズヤには疑問だった。


「……ところで、そこの女子(おなご)は誰だ?」

「えっ?」


 銀髪の男はミズヤを見てラナに問いかける。

 女子と勘違いされ、ミズヤは頬がヒクついた。


「ああ、それは俺も気になってたんだ。クオン、その女は誰だ? フラクリスラルで友達になったのか?」

「僕は女の子じゃないよーっ!!!」

「そうだぞトメスタス。コイツはミズヤだ。フラクリスラルで家族殺しの。覚えてるだろう?」


 トメスタスの質問にラナが答えると、ろぼーっとトメスタスは感嘆する。

 ラナが彼を“家族殺し”と言いながら、そんな危険人物を同行させてた事に興味を引いたのだった。


 そして、ミズヤはトメスタスとも面会した覚えはなく、初対面に等しかった。


「……ミズヤ・シュテルロード!? クオン、何故こんな奴を連れて!?」


 皇帝も最早彼のことを覚えてはいなかったが、それでもフラクリスラルの事情については理解がいっている。

 すぐさまクオンの前に躍り出て守ろうとしていた。


 等のミズヤ本人はぷくぷくと頬を膨らませ、手を上下にジタバタさせている。

 反抗のつもりなのだろうが、ラナは失笑した。


「父上、コイツは家族殺しではない。あれはフラクリスラルのデマだ」

「そんな証拠がどこに……?」

「当時コイツは10歳だ。そんなガキが家を壊して脱走? 考えられることじゃないだろう。本人曰く、あれは人骸鬼がやったらしい。コイツも死にかけた」

「……。そうか」


 ラナの説明を受けて、皇帝も落ち着き、ミズヤに近付いて手を差し伸べた、


「済まなかったな。作業途中の手で悪いが、握手を頼む」

「は、はい……」


 差し伸べられた手をミズヤは握る。

 乾いたゴツゴツの手に男らしさを感じ、女の子と間違われたミズヤは戦々恐々とするのだった。


「とりあえず、話を聞こう。クオン、話してくれるな?」

「ええ。経緯の全てを話しましょう」


 指名を受けたクオンがコクリと頷き、各々がソファーや椅子に腰かけた。


 それからクオンの話は15分程度で終わった。

 フラクリスラルへ内密の会談に向かい、最後の日に襲撃されてミズヤに助けられたこと、それからレネイド辺境伯邸に1日過ごしたこと、ラナが迎えに来たこと。

 そして、ついでにミズヤの紹介もした。

 ミズヤにあるよからぬ噂を否定し、本当の彼がどんな人間かを説明し――


「そして彼は、“神楽器”を持っています」


 もっとも重要な部分も説明すると、全員がミズヤを見る目が変わるのだった――。




 ◇




 城の3階にある客間の1つにて、ミズヤはベッドにゴロゴロと寝転がっていた。

 クオンは諸々の後始末のために姉に連れて行かれ、トメスタスと皇帝も公務に戻った。

 暇になってしまったミズヤだったが、夜にまた呼び出されるまでは適当に過ごすつもりだ。


「にゃーん」


 同じくベッドに乗ったサラがミズヤの鼻を撫でる。

 肉球に撫でられ、ミズヤは気持ちよさそうに「んー」と鳴いた。


「暇だねー、サラ〜っ」

「ミャー」

「よしよし、こっちおーいでっ」


 ミズヤが起き上がって両手を広げると、サラは彼の胸に飛び込む。

 抱きとめられると胸に顔を埋め、甘い声で鳴いた。


「かわいーなぁ〜♪ えへへへ、ふわふわ〜♪」


 ミズヤもサラを撫でて屈託のない笑みを浮かべ、誰がどう見ても幸せそうであった。


「変な男だな、貴様は」

「にゃ?」


 突然の声にミズヤは疑問符を浮かべる。

 だが、あたりを見渡しても誰もいない。


「……?」

「上だ」

「え……わぁ」


 ミズヤが上を見ると、天井に四角い穴が開いていて、そこからトメスタスがニヤリと笑って降りてきた。

 マントが舞い、首の後ろで留められた緑髪もゆっくりと重力に従って落ちる。


「よぉ、ミズヤ・シュテルロード。俺のことは覚えてるな? さっき会ったばかりで忘れたとか言ったらしばくぞ?」

「覚えてますよ……。それで、なんで上から……?」

「普通に入ったら面白くないからな。この穴便利だろう? 万が一の時のため、客室は暗殺可能な部屋になっている」

「非常用なら、便利ではないような……」


 明るくハキハキ話すトメスタスに、ミズヤは若干ながら呆気に取られた。

 サラもサラで、いちゃいちゃしていたのを邪魔されてご立腹だ。


「……ええと、何の用ですか?」

「ん? そうだそうだ、用件を言うのを忘れてた」

(……。気楽な人だなぁ……)


 ミズヤは内心愕然としつつ、トメスタスの口から出る言葉を待った。


「ミズヤ、俺と試合をしろ」


 闘志の込められたその言葉に、ミズヤはすぐ反応できなかった。

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