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連奏恋歌〜求愛する贖罪者〜  作者: 川島 晴斗
第一章:バスレノス帝国へ
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第8話:トメスタス

少しばかり、帝国側の絡みが多めです。

 天気も程よく快晴となり、ラナ、クオン、ミズヤの3人は飛龍に乗り、バスレノスへと向かっていった。

 大きな龍の背にクオンとミズヤは座り、ラナだけは横になって眠っている。

 普通ならこのような不安を招くマネはしないが、万が一振り落とされてもミズヤが救えるために眠っていた。


「ミズヤ、お姉様と知り合いだったんですね」

「うん。1回だけバスレノスに父上と謁見しに行って、その時ラナ様とは会ったんだ〜。クオンとはお話しなかった……かな?」

「……私は貴方と会ったことも覚えてませんのに」

「いいよ。僕もクオンの事覚えてなかったし」


 龍に乗っている間は特にすることもなく、雑談をして時間を潰す。


「……さて、サラ」

「?」

「そろそろクオンとも仲良くしなさいっ」


 ミズヤが命令しても、サラはぴょこぴょこ移動してミズヤの背後に回った。

 ミズヤの目の前にいるクオンの事をこっそりと覗き、いや睨んでいる。


「もー……どうしてなの〜っ! サラ、クオンと仲良くしないと、僕怒っちゃうよ!?」


 うにゃうにゃとミズヤが威嚇するも、サラはプイッと横を向くばかり。

 そうしてミズヤとサラがニャーニャー鳴き合って、サラの猫パンチがミズヤに炸裂。


「ニャーッ!? さ、サラ……殴るなんて酷い!」

「フシャーッ!!!(アンタは私の気持ちを考えなさいよこのバカ!!!)」

「なにさなにさ! ふふーん、ねこさんだからっていつまでも甘やかしてもらえると思わないでよね! 今日は許さないんだからーっ!」

「ニャァーッ!!(何をどう許さないのかまるでわからないわ! 【虎天衣】!)」


 王国にいる本体(サラ)が猫に魔法をかけ、白いオーラが金色の猫を包む。


「ま、魔法!?」

「わーっ! ここで暴れちゃダメ〜ッ!!」


 動物が魔法を使った事にクオンは驚き、ミズヤは必死にサラを止めに入る。

 というかサラを抱きしめて「ごめんねごめんね」と連呼している。

 買主の立場は弱く、サラもため息を吐いて胸の中で甘えるように鳴いた。


「なんなんですかね、この人達……」


 唖然としたクオンが漸く呟いた言葉は、どこか疲れていたのであった。




 ◇




 北側というだけで赤道より遠く、寒い大陸であるのは伺えた。

 もちろんミズヤも1度訪れたことがあるので体験していたし、それには理解がいっている。

 だからこそもう一枚、白い上着をミズヤはクオンに渡して自分も同じものを着ていた。


 早朝に()って昼頃に見え出した地上は雪の積もる街で、どこを見ても白い場所が目に映っていた。

 そして、何よりも広く、人々が協力しあって暮らしているのが伺えた。

 ミズヤはそれだけで微笑み、龍の背から笑える。


「見えてきましたね」

「え? ほんとだーっ」


 クオンが見る先には柵類の砦に囲まれた緑色の城があった。

 山のような形をするが、傾斜は鋭く、塔も何本か立っている。

 城の庭にも雪が降り積もり、白い雪原ができていた。


「ひゃー、白いねーっ」

「今は春なのですが、まだまだ雪は降りますからね。ミズヤも風邪を引かないよう、気をつけてください」

「あはは……お気遣いどうも」


 ミズヤは苦笑を浮かべて返し、改めてバスレノス全体を見渡した。


(……とても内戦が起きてるとは思えないな)


 街並みは平和そうであり、諍いなどもなく平和に映った。

 彼とてバスレノスでレジスタンスと政府が対立していることは知っている。

 だからこそ平和な街を見て異様に思えるのだった。


(レジスタンスの拠点は別のところなのかなーっ? まぁ僕には関係ないし、いっか)


 そう決めつけてふんふん鼻歌を歌いながら離陸を持つのだった。


 場の庭、柔らかな雪の上に龍がズシンと降りる。

 それからザワザワと人が集まり、ラナは眠そうな頭を(ようや)く起こした。


「ふぁあ……クオン〜、なんの騒ぎだ〜?」

「バスレノスに着いたんですよ。ほら、立ってください」

「ん〜……。もう少し寝たい……」

「ダメですよ、ほら……」


 寝ぼけ目のラナを立たせ、クオンはミズヤに目配せをした。

 しかし、ミズヤはラナの変容に驚いてそれどころではない。


「……クオン。ラナ様って、朝弱いの?」

「恥ずかしながら……。これさえなければ完璧なのですがね……」

「あはは……」

「それより、【無色魔法】で下ろしてください。私は無色使えないんですよ」

「え? あ、うん、わかった」


 指示を受けてミズヤは姉妹に魔法をかけて宙に浮かし、ゆっくりと雪の上へと下ろす。

 その後に自身にも魔法を使い、雪の上へと降りた。


 迎え入れたのは20を越す兵だった。

 服装は兵と言うよりも一般人に見えなくもない。

 白黒に緑のラインの入ったジャージを着ており、一見すると兵には見えないがその手には槍と盾を持っており、城を守る兵であるとミズヤも理解した。


(……なんでジャージがこの世界にあるんだろう?)


 素朴な疑問を持っていたが、兵の皆はクオンとラナを見て跪き、槍を雪の上に置いた。


「おい、クオン!」

「ん?」

「にゃ?」


 不意に聞こえた空からの声。

 意識のはっきりしている2人は青空を見上げ、そこから黒い影が1つ降りてくるのを見た。


 雪の上にズボッと足を埋め、現れたのは赤いマントを羽織った緑髪の男だった。

 頭には赤と水色のガラス球の髪飾りをつけ、鋭い目つきをしている。

 筋肉たくましい胸筋が緑色の和服から覗き、黒くぶかぶかのジャージを下に履いていた。

 その男は兵たちに割って入り、クオンの元へ行って肩をバシバシと叩いた。


「おぉクオン、無事そうで何よりだ! みんな心配してたんだぞ!?」

「い、痛いですよ、トメス兄様……」

「はっはっは! すまんな、ラナが飛び出してから俺も追いかければよかったと後悔してな、城も襲われなくて暇だったし」

「はいはい、仕事してくださいね……」


 実の兄をあしらい、クオンはラナを男に見せる。

 すると男はおもちゃを見つけたようにニヤリと笑い、兵たちの方へ振り向いて叫んだ。


「敵襲だぁぁぁああ!!!」

「何ぃい!!?」


 叫びに応じ、すぐさまラナが身構え、手を影に伸ばして刀を取る。


「嘘だ」


 しかし、男のその一言で全てが白けた。

 兵たちもわかっていたのか、誰1人として動いてすらいない。

 ラナは漸く自体を飲み込み、カッと顔を赤くさせて男に斬りかかる。


「ト、トメスタス!!! 貴様、弟の分際で……よくも私に恥をかかせたな!!」

「わははは!!! 寝ぼけているラナが悪い!」

「黙れ黙れ! 今日こそ殺す! この姉をバカにしたことを後悔させてくれる!!」

「うぉーっ!? 助けてくれーっ!」


 ラナが刀を振り回してトメスタスという男を追い掛け回し、男は助けをもとめながらも楽しそうに笑っていた。

 2人の様子にクオンはため息を吐き、ミズヤの方は呆気に取られて目が丸くなっていた。


「……この国、大丈夫かなぁ?」


 小さく呟いたミズヤの言葉に、ギクリとしたクオンの肩が震えるのだった。

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