にこめ
ゆっくりっつてもさすがに期間が開きすぎた。
しかも短い。
こっちは基本的に行き当たりばったりです。
――――時間が、止まった。
・・・・・・・・・ついでに思考も止まった。
目の前の状況を理解できない。
というか理解したくない。
そうしてたっぷりと思考停止したのちに、
「ふおおおおおおおおおお!!!」
びっくりしすぎて思わず変な悲鳴が出た。
どれくらいびっくりしたかと言うと、心臓と一緒に体が跳ね上がるくらい。
ついでに咥えてたタバコが足の上におちた。
「だぁっちいいいいいいいいいいい!!!???」
ジュッて、ジュッていったよ今!?
あぁ、ちょっと赤くなってる・・・・
「落ち着け、ご主人。」
「落ち着けるか!ってか誰だあんた!?どっから入ってきた!?って、ご主人ってなんだ!?」
「まぁまぁ、そうカッカせんで。それに・・・・」
「あ?」
「『それ』の始末はいいんですかい?」
それ、と男が指差す方向に目を向けると、吹っ飛んでいったタバコがお気に入りのジーパンの上に・・・――――
「あっぶねえええええ!?」
俺は瞬時に週刊少年○ャンプを燻るジーパンに叩きつける。
2、3発叩くと火が消えたようで、そこには焦げて小さな穴の開いたジーパンと思い切りたたきつけたためにバラバラになったタバコが残った。
いぶ臭いにおいが哀愁を漂わせている。
「ああ・・・よかった・・・火事にならなくて」
「ご主人は面白いな」
「つか、お前誰だよ!?誰がご主人!?」
男はカッカッと笑う。
その笑い声は――――どこかで聞いたことのある響きで。
「申し送れましたな、ご主人。俺はご主人の使っていたジッポライターですぜ。今後ともよしなに」
男は頭を下げた。
俺は思い出した。
あれはライターの蓋を開け閉めする音だ。
*
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****
「――――で、お前はあのボロライターが擬人化した姿だと」
「最近そういうのが多いらしいぞご主人。で、丁度良い機会だったんで俺もな」
「そんな『あのストラップ皆持ってるから私もー』みたいなノリでこられてもな・・・・。つか第一なんで最初がむさいオッサンなんだよ。こういうのって大体可愛い女の子とかじゃないのかよ」
「夢を見すぎだ、ご主人」
「夢の塊にいわれたくねーよ!?」
どうも、こいつと話をしていると妙に疲れてくるな。
当の本人はカッカッと笑いながらライターオイルを缶から飲んでいる。やめろ、それ安く無いんだぞ。
「しっかし、他になにか無かったのかね」
「と言うと?」
「なんでよりによってジャマイカ系の容姿なんだよ・・・」
「バーコードのオヤジの姿で来ても良かったんだぞ、ご主人」
「いやぁ、ジャマイカ系最高だね!」
見て呉れって大事だね!
「というか」と男。「女の子、居るじゃねぇか、ご主人」
「あ?うっそ、どこに?」
男は外を指差す。
ベランダの外には俺の愛車が泊めてある。
俺の愛するトヨタ・カルディナを指差して、男は言う。
「後ろンとこ、いますぜ」
「はぁ?」
いぶかしみつつも、庭に出て車のトランクを開けると、
――――金髪の美少女が、そこに横たわっていた。
つぎもゆっくり?