表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/19

苦痛の時間

次の日、学校に行く足取りは

いつもの倍重かった。


今日はテスト前の練習という

時間が設けられていて、

各々が個室で練習した後に

大きなホールで科の人間全体を集め

模擬発表会をするのだ。


私はこの時間が一番嫌い。


みんなはそれなりのレベルで

この学校に入学してるから

上手いに決まってるけど


私は所詮…親の七光りだもの、


そう思いながらも体は勝手に

学校へと向かっていた。





器楽科は楽器を演奏する実技試験

声楽科は歌を歌う実技試験

作曲科は課題の旋律の続きを

作曲する実技、筆記試験

療法科は音楽療法に関する筆記試験


各々の科が試験に向けて

勉強や実技の練習に

取り組んでいるこの時期、

私は孤立する他無かった。


教室に入ると既にみんな

練習に行ったらしく

誰ひとり残っていなかった。


和音「…はぁ」


私はAS-155室が当たっている。


東棟の最上階の端にある

一番良い実技練習部屋。


学校は余程私の両親を

気に入っているみたいね


そんな悪態を心の中でつきながらも

必要な荷物を持ってさっさと教室を

出て行こうとした時だった。




「失礼…、神海和音さんはいますか?」




後ろのドアの辺りで

聞き慣れた声がしたのだ。



私は驚き持っていた荷物を

床に落としてしまった。


そう、ドアの辺りにいた人物は正に…



和音「が、楽斗先輩!!!!?」



学園主席の楽斗先輩が訪ねて来たのだった。


楽斗「ああ、丁度良かった。和音さん。君に話があってね。」


思わぬ訪問者に固まってしまった私。

慌てて表情を繕った。



和音「楽斗先輩は練習しないんですか?テスト難しいんじゃないですか?」


この学園のテストは読んで字の如く鬼畜だ。


ある程度の練習を積まなければ即刻赤点となってしまう。


まあ、楽斗先輩レベルになったら即興も可能なのかもしれないけど…。


楽斗「君の話は昨日兄さんから聞いた。最も、君の名前とクラスだけだけどね。まあ…、この学園で君は有名人らしいから直ぐに突き止めてしまったけど…。」


苦笑いを浮かべる楽斗先輩に私まで苦笑いを浮かべてしまう。


和音「そうだったんですか。私も楽斗先輩みたいな意味で有名になりたかったですね。」

 


"学園始まって以来の劣等生"

"親の七光り"

"血筋の持ち腐れ"



上記が私の代名詞だ。

言われる度に

うるせーんなの分かってらぁアホんだら


と、悪態をつくのがお決まりになっていて。

これが余計に悪評に輪をかけている。らしい。


…ちなみに私はこれっぽっちも気にしていないから平気なんだけど。




和音「…あの、それで、どうしてこんな劣等生の私に主席の先輩が用事なんて…。」



語尾を詰まらせる私に先輩はすっ、と手を差し出した。

え、何これ先輩がめちゃくちゃ輝いて見える。



楽斗「おいで、僕が君に音楽を教えてあげる。聞けば教えてくれる先生もいないそうじゃないか。」













和音「はい?」



瞬間、脳がフリーズした。


先輩が、私に、音楽を、教えてくれる。




Why?




和音「いやいやいやいや!!ダメですって!!先輩!!私につき合ってたら先輩の才能を沈めちゃいますよ!!本当にダメですって!!」


私は首と腕が千切れるんじゃないかって位ぶんぶん振った。



楽斗「和音さん。貴女は兄さんを助けてくれた。僕はそのお礼をしたいんだ。」


和音「お礼なら昨日お茶貰いましたって!!あれで十分です!!十二分です!!」



楽斗先輩は不意に私の持つ楽譜をちらりと見た。



楽斗「革命…か。まだ指が覚えているといいが…。」


和音「え、え、え?!」


楽斗「ほら、練習室に行くよ。」





こうして先輩に半ば引きずられる形で練習室へ向かっていった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ