白猫の置物
有楽町で定期的に開催されている骨董市で白猫の置物を買った。子供の頃飼っていた猫に、なんとなく似ていたからだ。
家に帰って、ベッドのサイドテーブルにその白猫を置いた。引っ越してきたばかりで殺風景だった部屋が、少し暖かくなったような気がした。
夜、眠っていると、耳元で「ニャオンニャオン」と悲しそうな鳴き声がする。
半分夢の中にいるような気分だったから、白猫の置物が泣いているんだと思って、
「悲しくないよ。私が今日から傍にいるよ」
と、サイドテーブルの上の白猫を撫でた。白猫は鳴き止まず、一晩中鳴き続けた。
次の日も、その次の日も同様。「オーンオーン」といっそう悲しげに鳴く。
布団の中に入れて抱いてみたりしたが、私が眠ったあと、抜け出したらしく、翌朝白猫は床に転がっていた。
私は骨董市に白猫を持ってゆき、白猫を購入した売主に事情を話し、白猫を返した。
白猫は飛び出すように売主の腕の中に戻って行った。ごろごろと、喉を鳴らして甘える。
売主は、
「すみませんねえ。実は、売れても、いつも戻ってきちゃうんです。代金は、もちろんお返ししますので」
と言って、言葉とは裏腹に、嬉しそうに白猫の置物を撫でた。
「もうこの白猫は、非売品にしようと思います」
そう売主が照れ臭そうに笑いながら言うので、
「それがいいですよ」
と私も微笑んだ。