トーマス主任の御供
コトハは、トーマス主任に頼まれた
帝都で営業、所在する
魔術、魔道関連商品を取り扱う店舗に
ついて事細かく、記された数字の羅列を
書き込んだ
コトハは、危険な匂いを感じ
あまり関わりたく無い
何に使う資料なのか、深く考えないように
先ほどから、淡々と数字を書き込んでいた
コトハは4階の工房兼住居の、作業台の上に平らな薄い板を置き
文字が歪にならない様に、書類が汚れないように
その上で作業をしている
組合職員のラミアが何時ものように、先ほどから私の目の前を
モップをかけながら、何回も往復しいる
その度に、彼女のウェーブがかった黒く長い髪が
フワッと広がる様を、コトハは手を止めその度に凝視する
時折、鼻をモゾモゾとしながら、鼻をすする
(クシャミが、う~)
ラミアは、掃除を終えると
コトハの顔を心配そうに見つめる
「コトハさん、あの何か問題有りましたか?
視線を感じたのですが、私の出来る事ならお手伝いしますけど
それ、何の書類ですか?コトハさん」
ラミアが作業台に手をつき、身を乗り出しながら
上からコトハを見下ろす形で
覗きこむ
コトハは、書類の束を腕で隠しラミアの視界に入らない様にする
(ラミアさん、これは見ない方が良いよ
危険な代物だからね)
「ごめんごめん、特に問題無いよ
そう言えば、身につけてくれてるんだね、それ
気にいってくれて何よりだよ
今日も掃除有難う、ラミアさん」
ラミアは、首にかかるネックレスを手で大事そうに触れる
「はい、肌身離さず身につけてますよ
高価な物ですから、緊張します
無くしたり落さないか注意しています
また来ますねコトハさん
お仕事頑張ってください
あ~そうだ、コトハさんが皆さんに送ったプレゼント
みんな大事にしてますよ、失礼いたします」
ラミアは工房のドアを、ゆっくりと音を立てないように
両手でゆっくりと閉め、出て行く
コトハは、書類を纏めると皮の鞄に詰める
壁にかけてある、鏡を見ながら身支度を整え
工房から出ると、階段を下りて1階の事務所前に立つ
トーマスに、声をかけた
「トーマスさん、準備出来ました」
コトハは、皮の鞄から書類の束を取り出し
トーマスに、渡す
「コトハ様、有難う御座います
特に、問題は無いようです
今日も宜しくお願いします」
トーマスは、書類を受けとり
軽く目を通すと
スカイと共に、帝都の道を歩き出す
2人は、帝都に所在する店舗を何時ものように
回りながら、商品表示と中身に問題が無いか
各店舗を、見回る
何時もの時間、何時もの道を通り
そして、店舗の裏通りを歩いていると
トーマスが、立ち止った
コトハも、立ち止り正面を見た
「コトハ様に、お客様みたいですよ
対コトハ様用に、カスタマイズされてる様ですね
前方の人形は」
前方に立つ、顔の表情が無い人形を
コトハは、観察する
(私用に、カスタマイズ
だとすれば、物理攻撃に強い理由はず
私は魔法での攻撃は、あまり使っていないから)
裏通りという事で、道幅も狭く
昼間でも、うす暗く人影も疎らだ
コトハは、全身を魔力で覆い強化した
前方の戦闘人形に、向けて加速し一気に距離を詰める
腕を軽くひき、加速し勢いがついたまま
人形の鳩尾に、拳を腰の回転も加え
捩じり込むように叩きこんだ
コトハの重い拳を受け、体勢が前へと崩れた人形へ
素早く足を振り落した
人形の頭頂部へと
戦闘人形の体に、頭部がめり込んだ
徐々に、人形は光を放ち消えていく
(硬いよ、何あの人形
まだ、手が痺れてるよ)
「コトハ様、お見事です
さあ、行きましょう」
「トーマスさん、危なくないですか?」
「コトハ様、大丈夫ですよ
ちょっとした、戯れですよ
相手側にとっては
私どもを、快く思わない方々も大事なんですよ
全て魔術師、魔道師組合の案が
通ってはいけませんからね、組合も過ちを犯しますから
敵対勢力も必要なんですよ、要はバランスですよ
まあこの様に、相手側のガス抜きも必要ですからね
そして、戦闘人形が進化する為にも実戦は必要ですから
私どもが、相手を務める事が妥当でしょうね
魔法騎士隊では、色々問題が有りそうですし」
「まあトーマスさんが、そう言うなら
このままお供します、今日は」
(同じ経路、時間、裏通り、全ては相手を
誘い出す伏線だよね)
「コトハ様、またいらしたようですよ」
戦闘人形が、狭い裏通りを埋める
コトハは、前方の人形の群れを一瞥すると
大きく息をはき、両手に剣を構成する
一気に、前方に居る戦闘人形の群れに
加速し接近した
両手に持つ剣を振るい、次々と人形を切り伏せる
コトハは、最後の1体を切り伏せると
剣の構成を解除した
コトハが、切り伏せた人形の群れが
光り輝き消滅していく
(決まった、今のは流れるような動きだった
少しくらい、自分を誉めてあげないと)
後ろに、控えていたトーマスが
歩みを進める
「コトハ様、お疲れ様です
今度こそ行きましょう」
「そうですね、さっさと此処から離れましょう」
(流石に、立ち眩みがするよ
少し体には、負荷がかかっているのかも)
コトハは、トーマスの後ろへ続き
うす暗い裏通りを、後にした
戦闘人形に襲撃された深夜、既に組合職員が帰宅した時刻に
コトハはトーマスに、呼ばれ1階事務室に居た
「コトハ様の、御想像の通りだとは思いますが
今から、ちょっとした仕事を頼みたいのです
宜しいですよね」
(断わりようが無いし
受ける前提で、話し進めてるよね
まあ、私はは此処に来ると決めた時から
覚悟はしてるんだけど
今からだと、当然徹夜だよね)
「勿論ですよ、トーマスさん」
「安心いたしました、戦闘人形の製作工場の破棄です
帝国魔法騎士隊からの、依頼です
我々組合としては、
まあ、工場の1つや2つ消えても
問題無いと考えております
では、こちらをお渡しします」
コトハは、トーマスから地図を受け取り
すっかり暗くなり、人も疎らな帝都を駆け抜ける
コトハは、帝都を抜け
非干渉地域に、足を踏み入れた
顔が隠れるように、黒い布を巻きつける
(案外、視界は塞がらないし
任務には、支障は無いかな)
暫く歩き、コトハは戦闘人形制作工場を見つけた
唯の住居の様に見えるが
地下に、大きなスペースが有る構造だ
当然深夜なので、誰も作業はしておらず
無人
コトハは、周囲を確認しドアの前に立つ
少し屈んだコトハは、隙間に懐から取り出した短剣を差し込み
一気に音を立てない様に、素早くドアを真っ二つに切断した
切断したドアを、地面に置き
コトハは、建物へと入る
部屋の奥にある、階段を見つけると下りていく
コトハは、周りを見回し
隠し部屋や、隠し扉が無いか部屋全体を調べる
特に何も見つからず
コトハは両手から、火炎を放出し部屋全体を焼き尽くす
コトハは、1階も同様に焼き尽くすと
周りを確認し、その場を立ち去る
(誰も居ない、変な気配も無いし
さっさと帰ろう)
コトハは、追跡者が居ないか注意しながら
帝都へと、走る
組合へと戻ると、既に辺りは明るくなっていた
1階で、出迎えてくれたトーマスに報告を終えると
コトハは、4階へと重くなった体で歩き
工房へと戻ると、直ぐにベッドで眠りに着く
コトハ日記抜粋
今日も、ラミアさんがモップをかけている後ろ姿を
私は見つめている
主に、ロングスカートに覆われたお尻を見ているの
こうキュッと、纏わりつく感じ
お尻の形が、良く分るの
まあ、彼女にばれない様に隙をついて
見ているの
そうだまた、トーマスさんと店回りか~
トーマスさんが、出されたお茶とか試供品を
私に、勧めるのは止めてほしい
各お店で、コメントを求められても私には
ボキャブラリーが、無いんだから
無難なつまらない答えしか、出来ませんよ
ある目的の為に、色々なお店に通っているんだと思うんだけど
なんとなく分かる
深くは関わらない様にしよう
そんな事を、考えていたら
おっと、ラミアさんが私がが書いている
書類に興味を持ってしまったみたい、
隠さないと、彼女が関わっても
良い事は、何もない
ラミアさん、身を乗り出さないでください
貴方のクセ毛の長いを、つい鼻で吸い込んでしまうんだから
これは、胸を下から見上げる姿勢
どうしてでしょう、軽い殺意を抱くのは
まあ、そんな事が有り
トーマスさんと、帝都を歩いていると裏通りで戦闘人形と
手合わせをする事に、私用にカスタマイズされた様だったから
物理攻撃に対しては、鉄壁の守りだった
ボディが、とにかくこれでもかと言うぐらい
凄い硬い、暫く手が痺れたから
まあ、意地で押し切りましたが
その後で、団体さんと戦うことになり
異常に、数が多いので
武器で切り伏せたんだけど、流石に疲れたよ
その日の夜トーマスさんに呼び出され、帝都魔法騎士隊の依頼で
彼らの管轄外の地域に在る、工場の破棄をしてきた
流石に、管轄外では手は出せ無いらしいから
組合に依頼が、来たんだろうけど
そして深夜に、とぼとぼと帝都を出て
工場を破棄してから、戻った
目撃者や追跡者が、居ないか警戒したから
結構疲れた
私はは、結構エージェントぽい事をしたから
主に私の命が、ヤバイんじゃないかと思って
トーマスさんに、依頼達成後に相談したら
笑顔で、肩を叩かれ
悪い様にしませんと言ってくれた
逆に怖いよ、笑顔が
私は007には憧れては無いんだけど
お疲れ様です