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魔法学院へ

コトハは、ルナ特製のスープを最後は両手で皿を取り


一気に口へ流し込み、何とか飲み干すことができた



その見事ではないが、鬼気迫る表情での


食べっぷりに、スープを調理したルナは気分を良くする



何時もはミラが小食の為、大量に残すので


同じスープが、翌日にも食卓に並ぶ事が多い



(具が無い、まさに言葉の通りのスープ


 美味しいけど味気ないよ)



「また作るね、コトハそんなに美味しかったんだね


 作り手として、こんなに嬉しい事はないよ


 次も期待してね」





ルナは身を乗り出し、興奮した様子でコトハに話す


渋い顔のコトハを、肩肘をテーブルにつけて


ミラは見ていた



ミラは何か思いついたように、コトハに話しかけた


「機会が有れば、御自分で作りなさいよコトハ


 貴方の世界の、料理も食べたいし


 少しは、まともな物が食べれるんじゃないかしら」






「そうですね」





(カレーかうどんとかな?う~必要に迫られた事が


 無いから、料理のレパートリーが少なすぎるし


 今さら後悔しても、しょうがないし~



 ルナさんは、何でも煮込んで具も何もかもスープ状に


 すれば良いと考えてるみたいだし、たまたまと信じたいんだけど



 三種類のスープと飲み物だけが、今日は食卓に並んだけど


 量に関しては多い過ぎるほどだし



 文句を言っては罰が当たってしまうし


 ミラさんは、ローブの上からでも


 痩せているのが、分るほどだから


 あまり、食事はしないんだろうし


 興味も無さそう)





コトハは、ミラの細い指先と細い顔の輪郭を見る


「ルナ~、食器洗い宜しく」


「はい」






ルナはテーブルにある、食器や水入れをまとめて


運んで行く





ミラは手伝おうとする、コトハの腕を掴む


そんなに、力が無そうな細い手で掴み


強引に、椅子に座らせ視線を合わせ


正面に座らせた





「コトハには、初めての仕事を与えましょう


 そこに置いてある、皮の鞄を魔法学院に配達して頂戴



 連絡済みだからね、それから魔法の適性検査みたいなのを


 ついでに受けてきなさいな、すぐ行きなさいよ



 魔法学院までは、結構遠いから


 あ~そうだルナが、これを選んでくれたわ


 着て行きなさいね」







コトハは、皮の鞄を肩に掛けた





(重い何が入ってるの、これ?)





「コトハ、爆発はしないから


 安心しなさい、普通の砂よ


 頼んだわよ」





「はい、ちゃんと届けますミラさん」






そして壁に掛けてある真紅のローブを、肌着の上から着付ける


コトハの姿を見に来た、ルナがサムズアップして頷く






「うんうん、似合ってるよ


 私が選んだんだよ、真紅のローブ


 少し派手だからね~、つい勢いで安かったから買ったんだけど



 着る機会がなかなか無かったんだよね~


 無駄にならずに良かった良かった


 それじゃお使い頑張ってね~コトハ


 さっさと、行った行った」




ルナは、コトハの背中を強引に押してドアを開け


コトハを、外に押し出す




外にコトハが出ると、ルナは笑顔を浮かべて手を振り


ドアを閉めてしまった








(ルナさん、さすがにこれは貴方のセンスを


 疑いたくなるよ)




コトハは、真紅のローブを指で掴み見つめると歩み出す


山の砂利で舗装された坂道を、慎重に踏ん張りながらゆっくりと下って行く



坂道を下り終えると、横幅もあり確りと舗装された


石畳の道を歩いて行く、人通りも増えてくる



少し傾斜があり、小さな丘の上に外観が見えている


魔法学院へ、向けて歩みを進めた



(下りが終われば、上りキツイよ


 重いよ、この鞄置いて行きたい衝動に駆られるよ


 肩痛いし~



 地味にローブが熱いし、すれ違う人が指さすし


 羞恥プレイなの、ルナさん


 精神的にくるし、これ



 そう言えば石畳の道は、趣が有るね~やっぱり魔法の世界は


 こうじゃなきゃ、なんかすごい~



 アスファルトじゃダメだよ


 うん何か良い感じかも



 でも学院は遠いよ、結構歩いてるのに


 さっきから)




コトハは、立ち止り大きく息を吐き


歩みを進めた




石畳の道を、馬に引かれた馬車が駆け抜けて行く


漸く丘の上へ、到着したコトハは魔法学院の門をくぐる



すると、大きく手を振りコトハに近ずいてくる人影が


茶色のローブに身を包み、人の良さそうな笑顔を浮かべている






「ようこそ、待ってたよさあさあ」





コトハの返事を、待たずに皮の鞄を奪う様に


受け取った



そして中身を開け確認している


「ミラさんから、連絡は受けてるから


 さあ、こちらへコトハ」





とても重い皮の鞄を、ひょいと肩にかけ


コトハと、腕を組み歩き出す




「あの~どこに行くんですか?」


「あれ~ミラさんに聞いてないかい?


 コトハの適性検査だよ、大丈夫危険は無いからさ


 やっぱりさ~


 聖騎士になって、囚われのお姫様を助け出したい訳だ、俺はね


 ちなみに、この国の姫様はまだお子様なんだよ


 だから結婚は出来ないんだよ、今は金銭や名誉が報酬として受け取れるんだが


 いや~残念だよ、俺的には」






コトハの肩を、バンバンと叩く






(へ~、王様が居る国ね


 肩痛いよ~この国の人は皆馬鹿力なのかなまったく)





「忘れてたよ、私はファーストネームがミカエルだ


 まあ、よろしく」


「コトハです、宜しくお願いします


 ミカエルさん」



「おう、ミカエルでいいぜ、少し待っときな


 荷物を置いてくるぜ」


ミカエルが、鞄を肩にかけ直し


建物に入って行く


暫くして、ミカエルが建物から出てきた


「待たせたな、コトハじゃあ


 お楽しみの適性検査に行くぞ」





「はあ~」






「コトハ、お疲れかよ?


 お楽しみこれからだぞ」





「もちろん、楽しみですよミカエルさん」


ミカエルとコトハは、更に上へ歩みを進めた



人影もすっかり少なくなり、外観が真っ白な円形の建物の


中へ入る


ミカエルは、真っ白で如何にも分厚そうなドアのカギ穴に鍵を差し込み


ゆっくりとドアを開けた


ミカエルとコトハが、部屋に入るとドアがガンと大きな音をたて


閉まる



コトハの目の前には、真っ白な大きな空間が広がる



「コトハ、ワクワクするな


 俺は興奮するぞ、じゃあ早速始めよう



 基本中の基本、魔力放出だ


 まずは手のひらに神経を集中させ、なんかビリッときたら


 軽く押し出すんだよ、あそこにある壁へ


 さあ、やってみろ何事も経験だぞ」





ミカエルは、腕を組みコトハから距離を取って


見守る





「分りました、やってみます」



(ミカエルさん、アバウトすぎ


 手のひらか、よし集中


 信じれば出来る筈、)






コトハは、眼を閉じ呼吸を整える





(手のひらに、う~ん


 来い、私の魔力)




眼を閉じた、コトハを見つめるミカエル





(ミラさんの弟子で、初めて生き残った渡り人か


 ヒョロイな、しかし重心がぶれない足運びだったな


 俊敏性も有りそうだな~う~ん)






(うわ、マジでなんか来たかも


 手のひらから、ゆっくりと押し出すイメージ)







コトハは、目を開け壁へ


手のひらを押し出す動きをした


壁へ、コトハが放った魔力が圧縮され激突する


部屋だけでは無く、建物全体が大きく横に揺れ動く


壁に当たった魔力が部屋全体に広がる



圧力が、衝突した壁の正面へ居たコトハに向かう


必死に、両足を踏ん張りその場に立ち止まる



すっ~と大きく深呼吸をする


(ビックリした~怖いよマジで


 私って天才ですか?凄い威力だったし


 小説なら、私主人公だし)





コトハは、後ろに控えていたミカエルに視線を向けた


腕を組んでいた、ミカエルはおもむろに口を開いた






「コトハやったな、魔力の流れは掴めたよな


 まああれだ、攻撃魔法は今みたいな感じだ



 あとは魔道書読んだりすればな、魔法は千差万別だからよ


 杖を媒介にする奴もいれば、剣、指輪とかな


 魔力で、武器を構成することも


 回復魔法は、生物の体を包み込み


 回復を促す


 身体強化の魔法もあるぜ


 今のコトハは、ただ魔法を発動してるに過ぎない状態だ



 魔法の効果は、殆ど無い状態


 まあ、今のコトハならそうだな~


 回復魔法なら、軽い切り傷が治る程度だ


 しっかりと魔道書を読んで頭で理解して


 正確に魔法を発動できたなら、蘇生も可能だぜ


 まあ、頑張れや



 最後に残念なお知らせだ、ガッカリするなよ


 コトハ


 この部屋はさあ、お前の師匠のミラさんが


 ガチガチにサポート魔法を掛けまくっているんだよな


 だから、スゲー事になる訳よ」





ミカエルの、最後の言葉を聞いて


コトハはその場に座り込んだ





(そうなんだ、甘くない)





ミカエルは、何処らともなく


紙を取り出し書き込んだ




「まあ、立てやコトハ


 俺がコトハの適性試験官だからな


 結果の発表をしてやろう、



 あくまでも今の現地点、お前についての適性だからな


 大まかな批評だ、参考程度に聞いとけや



 俊敏性と持久力に可能性を感じる


 魔法の発動時間と正確性にもな


 あまり前衛で、戦う事は勧めない


 身体強化の魔法で腕力を強化すれば、ごまかせるが勧めないな



 中衛で、俊敏性を生かして味方のサポートや


 背後からの不意打ちとかな、今はこれがベストだな



 若しくは、後衛でサポート魔法を唱える


 魔法補助師な、お前の師匠はサポート魔法の権威で実戦での


 エキスパートだぜ



 まあ、お前は成長期だから腕力がついたら


 前衛も、こなせるよ



 まだ、練習したいだろ


 俺は外に居るからよ」






コトハは、立ちあがり頭を下げた




「有難うございます、ミカエルさん」


「気にするな」





ミカエルはドアを開け出て行く





(とにかくこの中で


 練習しよう、良い機会だし)


 



コトハは、今度は両手を壁へ向けた 


先ほどより、大きな揺れが建物全体を襲う





(まだいけるかも私


 魔力で武器を構成してみよう


 イメージは、短めの短剣)




両手の、手のひらから魔力を少しずつ放出し


徐々に短剣の形が、出来ていく


(やっぱり、私すごいかも~


 もう少し、あ~出来た


 あとは手で持って維持するだけ)



待ちくたびれたミカエルが、扉を開け


コトハの魔法の短剣を見た



「やるな~コトハ


 俺でも、苦労したのに」




コトハは、頷くと更に短剣の構成に集中した



短剣が、消滅した


「まあ、上出来だぜコトハ


 行こうか」



まだ、物足りそうな表情を浮かべる


コトハを引きずりながら、ミカエルは部屋のドアを閉めた


「はい」


(もっと~)



 


「コトハ、嬉しい事に暫くはこの学院に


 滞在出来るから、安心しな」


「良かったです、もう少しやりたかったんで」





コトハは、建物から出た瞬間に疲労感を感じた


「コトハ、体が重いだろう


 これが普通だからな、あの部屋は特別なんだ



 よく覚えておけよ、学院寮まで運んでやるから


 明日からは、自分の足で歩けよ」





ミカエルが、肩にコトハを担いで歩き出す




「御手数おかけします、ミカエルさん」


「気にするなよ」


学院寮に着くと、ミカエルは階段をコトハを肩に担いで


駆け上がっていく




(揺れる気持ち悪いよ、ミカエルさん)




コトハの体が、大きく揺れる


ミカエルは木製のドアを開けて、部屋に入った



ベッドと椅子と机が、置いて有るシンプルな部屋


ミカエルは、力が体に入らないコトハを


ベッドに寝かせる







「有難うございます、ミカエルさん」



「おう、風呂とトイレはこの部屋にも有るし


 冷蔵庫に食べ物と飲み物も有るから


 じゃあ、しっかり休めよ


 おやすみ」





「おやすみなさい」





ギ~と音を立てた、ドアが閉まった


部屋に一人になり、コトハは手のひらを見つめる


(まさか、いきなり魔法が直ぐ使えるなんて


 まだ信じられない、異世界に来たんだ私


 疲れた~出来る事をしよう


 あまり考え過ぎない、不安になるし) 



コトハは、初めての魔法行使で疲れ


いつの間にか、深い眠りについた



翌日の朝、コトハはノックの音で目覚めた


コトハは、ベットから立ちあがりドアを開けた



ミカエルが、パンとフルーツが入った袋を抱え


立っている




「よう、その様子だと疲れは取れたようだな


 邪魔するぞ、これ差し入れ」


「有難うございます」


ミカエルは、椅子を引き長い脚を組み座る


二人で、軽い朝食を食べた



ミカエルはパンとフルーツを切り分け


コトハは皿をテーブルへ並べる、


二人は黙々と食べた





「ミカエルさん、美味しいですよ


 御ちそうさまでした」




(食感がある、美味しい)





「良かったよ、そんなに喜ぶとは


 あそうだ、今日はコトハにプレゼントだ」






ミカエルは、懐から短剣を取り出し


コトハに手渡す


宝飾もなくシンプルな短剣を


スカイは、両手で慎重に受け取った


短剣を握り、嬉しそうに見つめる






「カッコいいですね、大事にしますミカエルさん


 あれこれ刃が潰してあるんですけど」



「そりゃ、コトハ危ないじゃないか


 まあ魔力を付与すれば切れるから安心しな


 切れ味より、耐久性重視だよ


 学院生用の、大量生産品だからな


 ところで今日の予定はそうだな


 最初は俺が少し相手してやるよ


 理論より実践だよ、なあコトハ」






コトハは、立ちあがった



「お願いします」



「じゃ、行くぞ」



「はい」








コトハはミカエルの後を歩く


学生寮より出て、また昨日と同じように


坂道を登る



コトハは歩きながら、ミカエルから貰った


短剣を、大事そうに扱いながら


軽く、突いたり薙ぎ払う動きを


何度も確認する




(軽い、いい感じ手に馴染むよこれ)





ミカエルが、立ち止まり


コトハも、立ち止った








「コトハここだから、行くぞ」


「はい」



上に屋根がある、円形のコロシアムの様な建物に入る


足元は硬い石が、並べられていた


観客席も、僅かだがある


ミカエルとコトハは、軽く体を動かす


コトハはミカエルの動きを観察する


ミカエルは、細身でも確りとした


力強い動きを見せる



(うわ~威圧感あるし


 背高いよ~私より30センチ以上は高いかも)





「コトハ私は、準備出来たぞ


 そろそろやるか」


「お願いします」


「来いや」



ミカエルは、特に構えず佇む


(よし、最初からフルパワーで行くよ


 出し惜しみで負けるなんて、絶対嫌)


コトハは、体にある魔力を集中し


体全体に、纏った


その様子を、ミカエルは見ていた


(へ~何時の間に出来るようになったんだよ


 魔力を身体強化に回してきたか


 妥当な選択だな、自分の特徴を理解してるな)


コトハは、体が軽くなるのを感じていた


今日ミカエルに、貰った短剣に


魔力を付与し強化を施すと、ミカエルに向かい疾走する


一気に間合いを、詰め短剣を突くように


ミカエルへ向け直前で、横へ薙ぎ払う



ミカエルは、既にスカイの真後ろにいた


コトハの背中をドンと押す


体勢を崩したコトハは、振り返らずに距離を取り


ミカエルを正面に捉える


(早い~何が起こってるの


 後ろにいるし、もう一回)



コトハはミカエルへと、距離を縮め


左に回り込み、ミカエルに蹴りを繰り出す


ミカエルは、体を後ろへ引き避けますが


後ろにはコトハが既に回り込み、素早く全力で魔力を放つ


ミカエルの姿が、揺らぐ


(ありえないし~何これは


 うわ何か来た)




コトハは、身を屈め頭上の蹴りを避けた


ミカエルから距離を取る為に、床を蹴り横へと加速移動するが


ミカエルは、そのまま追随する


コトハが気が付くと、足払いを受け


体勢を崩したところで


そのまま腕を決められて、コトハは床に膝をついてしまう


「まいりましたミカエルさん、痛いです腕」


(完全に決められてるし、腕が動かないよ)



「そうか~まだいけるんじゃねえ


 抜け出せればさあ」





「身体強化しても、体に力が入りません


 この状況じゃ、ミカエルさん」





「地道に基礎訓練だなコトハ、体の動きを確認するぞ」



「はい」




(う~疲れた、足は震えてるし汗の量が凄いよ


 眩暈もする


 実力差が、ありすげてよく分らないよ)




コトハは、ゆっくりと立ちあがり


荒れた呼吸を、整えた




(ミカエルさんは、普通に立ってるし


 まだ、やる今日は)


お疲れ様です、失礼します

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