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異世界へ

高等部空き教室の、床の上に倒れ込んでいるコトハの腹部を何度も踏みつける


生徒会長今井美和、コトハの髪を片手で摘まみあげるとコトハの


顔へとツバを吐きつけた



「ムカツク、前は泣いたりしたのにどうしたのよ喋れないのかなコトハちゃん


 その目、ムカツクんだよ」



美和は、コトハの腹を上から勢いをつけて足で踏みつけた


コトハは顔を横に背けると、長い黒髪で顔が隠れる


歯を食いしばり、痛みと大きな衝撃にコトハは耐えていた



「美和、もう止めようよ人形みたいで反応しないし


 流石に見てられないよ、可哀想だよ」



口では見ていられないと言う飛鳥は、椅子に座り携帯でコトハの様子を


先ほどから、楽しそうに笑顔を浮かべながら撮影している



「ウルサイ、何でこんなのが


 これの何処が好いのよ、暗いし喋らないしさ


 子供じゃん」


 

「可愛いよ顔が、儚げだしさ


 でも私は、今の顔が良いな何か諦めた顔をソソルし」



「黙れ、変態聞いてないし」



見張りをしていた弥生が、急いだ様子でドアを開ける



「あの、誰か来ました」



美和は、少し考えると教室奥の掃除用具が入っているロッカーを指さす



「じゃあ、そこのロッカーに入れてよ」



床に倒れていたコトハは、飛鳥と弥生に腕を担がれ無理やり立たされると


ロッカーへと押し込まれた




ドアを開け佐藤舞教諭が空き教室へと入ると、美和達に視線を向ける



「なんだ美和ちゃん達か、早く帰りなよ


 もうすぐ下校時間だからね」



「はい先生、帰ります」



「よろしくね~」




佐藤教諭が教室から出て行く



「もう今日は飽きた、弥生後は任せるコトハを寮まで送ってやってよ」



「はい」



 

「優しいじゃん美和、やっぱり心配なんだ今井美和生徒会長」



「ウルサイ、飛鳥行くよ」



空き教室を出る美和を、追いかけていた飛鳥は振り返り


先ほどとは違い、真剣な顔で弥生を見る



「弥生頼んだ」



弥生は、小さく頷く



弥生は、美和と飛鳥の足音が聞こえなくなるまでドアに耳をつけ


様子を窺っていた、2人の気配が完全に消えると


弥生は、ロッカーへと急いで駆け寄った



「コトハちゃん、大丈夫だよ


 もう行っちゃたから、今開けるからね」



弥生がロッカーを急いで開けると、コトハの姿は消えていた












場所は変わり




ある世界のとある海岸で、魔法使いと弟子が


砂の採取作業を黙々と無言で必死に行っていた




夏の炎天下で、時の砂という


そこそこ貴重で


そこそこの好事家や学者にまあまあ高価に売れる


アイテムを採取している




額に汗を受けべながら、止めたい気持ちを


何度も、もう少しだけ頑張ろうと


自分に言い聞かせながら、作業を頑張り続ける




弟子の方は、限界を迎え手を止めた


目の前の海に、ローブとレギンスを脱いで


飛び込みたい衝動に駆られるが


肌が焼けるので、我慢する



手を握り締めて、プルプルと手を動かす


まだ、作業をしている師匠の方へ視線を向けた



「ミラさん、もう休憩しましょうよ


 時の砂はもう十分採取しましたよ


 もう私ダメです、干からびますよ」



弟子のルナは、砂袋を置き


熱を逃がす布を、広げ砂浜に座り込んだ



そしてとても大きな日傘を取り出し


砂浜に、突き刺した




ミラは、額の汗を手でぬぐいながら


シガレットケースから2枚の板チョコを取り出す


一枚を口に含み、もう一枚を


大きな口を開けている、ルナに放り投げた




板チョコは、放物線を描きながらルナの口へ


辿りついた





ルナは、板チョコを口に含む


口の中で、チョコの甘みが広がる




冷えているチョコが、とても心地よい清涼感を醸し出す


(ほっとします、命の危機から救われます)






「ミラさん、冷えていてとても美味しいです


 漸く一息つけますね」





ミラは、時の砂をスコップで、砂袋に入れていく


(もういいわ、これだけあれば十分よ)





ミラは、ルナが広げた日傘に入りゆっくりとルナの隣に座り


水平線をぼんやりと見つめる





暫くしてルナは、人の気配を感じて


日傘から、外の様子を窺った




上空に、気配を感じ見上げる


指を差して、大きな声でミラに声をかけた






「ミラさん、何か来ますよ


 あれは、何でしょうか~」




ルナは、口を半開きにして上を見上げた


ミラは関心が無いようで、返事をせず


先ほどの姿勢のまま、水平線を見つめ続けている



ルナは、眼を細めて空を見上げる


空気が揺れ、突如人が空から落ちてきた



ルナは大いに慌て、助けを求めてミラに視線を向ける


「ミラさん、人が落ちてきます


 どうします?怪我しちゃいますよ」





ミラは、特に慌てもせず上から落ちて来る人を


見上げる





とうとう、砂浜に人が落ちた


ルナは、人影に駆け寄りミラを呼ぶ





「ミラさん、やばいですよ


 この人死んでるんですか?傷だらけですよ」






ミラは、ゆっくりと歩いてルナの足元にいる


人を覗きこむ、ミラはその場で回復魔法を行使した




ミラの、魔力が高まり長い真っ白な彼女の髪が


揺れ動く




「ミラさん、凄いです傷が治っていきますよ」



ミラは、手を叩きピョンピョンと飛び喜んでいた


ルナの腕を掴む





「ルナ、緊急事態だから魔力を借りるわよ」


「どうぞどうぞ」



ミラは、ルナの腕を掴んだまま


空間移動魔法を発動した




ルナの体から、魔力を借りながら


術式を完成させる






後に残ったのは、砂浜に水たまりの様に溜まった


大量の血痕のみ











コトハは、人の気配を感じ


眼を空けた、すると覗きこんでいるルナと視線が合う




(誰?この人


 髪の色が、銀色?染めてるの?)




ルナは、ニッコリと笑う




「ミラさん、落ちてきた人が起きましたよ」




ルナは、ドアを乱暴に開けて


部屋から、駆け降りて行く





コトハは、ルナの姿が消えてから


体が拘束されている事に気がついた





口も動かず、声が出せない


眼だけが唯一動かせる事が出来る




コトハは周りの様子を確認してみる


木の机に、本棚といった物が置いてあり


窓からは、木々が見えた





(なんで?、動けないの


 ここは何処、なんでこんな所にいるのよ私は)



必死に考えをしているコトハ、なにが自分に起こったのか見当もつかない


ドアがノックされ、ミラが入って来た





コトハが拘束されているベッドに、近ずく


動けないコトハに、顔を近ずけ話し始る





「元気そうで何よりだわ、コトハ


 貴方の名前よね、何時までも落ちてきた人じゃね

 

 不便だから、少し覗かせて貰ったの頭の中をね



 貴方、覚えてないかもしれないけど空から落ちてきたのよ


 大人しく私に従いなさい、暴れない、勝手に家出しない 


 分ったなら瞬きを二回しなさいコトハ」





コトハは、ミラの指示に従った




(この状況はやばいかも、誘拐?メリットないし


 今は従うしかないし



 状況が分るまでは、無闇に動くのは得策では無いし


 小説やドラマでも、ここは従ったほうが良いはず


 大丈夫、多分)




「よろしい、今から私がコトハに説明してあげるから


 一切質問は受け付けないからね



 私の名前はミラよ魔術師


 コトハ、当然貴方よりも強いから


 無駄な抵抗はしない事を進めるわ」



ミラは後ろに控えていた、ルナを手招きする




「この子は、ルナよ


 私の弟子、因みにコトハに最初に気が付いたのがこの子だから」



ルナは、楽しそうにコトハに話しかける


「コトハって良い名前だね、これから宜しくね」


2人を見ていたミラは、コトハを拘束していたのを思い出し


ミラは、手をコトハに掲げて


拘束魔法と口の硬直を解く



コトハは、体の調子を確かめる


肩や足にペタペタと触り、動きを確かめた



「宜しくお願いします、ミラさん、ルナさん」



コトハは、ベッドから立ちあがり丁寧にお辞儀をした


コトハの様子に満足した、ミラは話しを再開する






「まあ、そこに座りなさいなコトハ


 貴方の様な人を、渡り人と呼びます



 ごく稀に、世界の歪みに巻き込まれて


 異なる世界に、つまりこの世界に落ちてくる人がいるのよ


 それが貴方」




ミラは、コトハに指を差す





(まさかのファンタジ―、渡り人


 私が、魔王とかドラゴン倒すの?



 絶対無理、特技も無いし何も出来ないよ


 そうだごめんね弥生、貴方に借りていたお金返せないかもしれない



 私の部屋のDVD、姉さん頼むから捨てないでよ


 帰れるのかな?とにかく死なないようにしなきゃ)






「コトハ、あんた見込みあるわ


 取り乱さないようね、



 さっきの続きね、渡り人が最近来たのは


 数千年前ね、まあ大体はね


 体が持たずに、この世界に着いてすぐ亡くなるんだけどね



 コトハは運が良いわね、その場に私が居たのだから


 貴方も、私達が発見した時は


 瀕死だった訳よ、でね持ち物も服も使い物に


 ならないから、処分したから」





「そうですよコトハ、ミラさんが魔法で治療してくれたんだよ」



(魔法?まさかお目にかかるとはこの私が


 ファンタジーの世界か~そうだ御礼を)



「そうなんですか、色々有難うございます」



(命の恩人なら、信用しても大丈夫だよね


 頼れる人はミラさんとルナさんだけだし


 大人しく、信用されるように行動しよう)



「という訳で、詳しい情報は分らない訳だから


 暫くは、私の弟子として此処にいて良いから



 安心しときなさいな、今日はゆっくり休みなさいな


 あとはルナ宜しくね、じゃあねコトハ」



ルナは大きく頷いた


「任せて下さい」





ミラは部屋から出て行く


ルナはコトハの手をとる



「コトハ宜しくね、一緒に頑張ろうね


 早く一人前の魔術師になろうね」



「こちらこそ、ルナさんよろしく」



(何故、魔術師になる事に決定なの?


 せっかくファンタジーの世界なら



 聖騎士とか魔法戦士とかが良いかも


 でも、魔法と剣も教えて貰えば


 自称魔法戦士かな、うん前向きに考えよう



 手が痛いし、ルナさん馬鹿力なんですね


 手を離して、マジでやばいよ」





コトハの顔から、冷や汗が出ているのも気にせずに


ルナは、魔法の素晴らしさを話す




「お腹へったら、一階に降りて来てね


 何か用意しとくからね



 少し一人になりたいよね、ゴメンゴメン


 直ぐ出て行くから」






コソコソとルナは、部屋から出て行った


(う~ん、渡り人か


 情報が少なすぎる、かといって数千年前に来たと言われてるし



 直ぐにお亡くなりになるんじゃ、どうしようも無いよね


 とにかく修行?此処で暮らしていかなきゃ



 帰るにしても、帰れない?多分無理っぽいし


 あ~とにかくやらなきゃ


 前向きに考えよう、ファンタジー世界に来たら魔法と剣だよ



 伝説にロマンだよ、うんうん



 あ~ダメ、頭で理解しようとしても


 納得できない、理不尽だよ



 神様、居るのなら今こそ


 出番ですよ、私を助けて下さい) 




いつの間にか、眠りについたコトハは


空腹で、目が覚めた




眼を開けると、ため息をつく


(現実だったんだ、分っていたけど


 キツイよ~嫌だ)





コトハは、目から流れる涙を必死に堪えるが


涙がこぼれた




肩を揺らし涙を耐える、手で涙を何度もぬぐう


暫くすると、コトハは部屋にある



手鏡を手に取り、自分の顔を確かめた


(少しは落ちついたし、うん大丈夫大丈夫)

 


コンコンとドアがノックされる

 

ドア越しから、ルナが話しかけた


 

「コトハ起きてるよね?御飯出来てるから


 ルナ特製の朝ごはんだよ


 早く降りてきなよ~」






コトハは、ベッドからゆっくりと立ちあがる


「はい、直ぐ行きますルナさん」


 




コトハが、階段を下りると既にミラが席に座っていた


ルナは、テキパキと食事を用意した




コトハの姿を見て、ルナは手招きする




「どうぞどうぞ、座って今日は特別だからね}


コトハが椅子に座ると


その様子を、ずっと見ていたミラが杖を何処からともなく


取り出し、スカイの肩をつつく





「安心しなさいなコトハ、私は見た目より弟子思いだし


 貴方を何時か、元の世界に戻してあげるから?」




「なんで疑問形なんですか、ミラさん」


「嘘は、つけないんですよコトハ」




何時のまにか、椅子に座っていたルナが


コトハの手を、両手で包みこむ




「ミラさんは、ウソはつかないから安心してよ


 弟子思いだから、大丈夫安心してね」




「はい、お二人ともこれから宜しくお願いします


 それと励ましていただいて有難うございます」





「素直な事は良い事です、コトハ


 素直に感謝の言葉が出るのは、コトハの素晴らし才能ですね」




ミラはルナに視線を向ける



「うんそうだよ、泣きたかったらお姉さんの所にきなさい


 私も、悲しい時はミラさんのお部屋に行ってるし」





「考えておきます、ルナさん」




「さあ、食べましょう食べましょ


 今日は豪華ですからね、ミラさん、コトハ



 いっぱい食べてね、自信作だからではいただきます」





凄い勢いで、ルナは食事を始める


「コトハ、早く食べなさい


 無くなるわよ、ルナに全て食べられてしまうわ」



「そうですね、ミラさん」

お疲れ様です、失礼します

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