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動画中継2

深夜、窓の無い強化プレハブの中、4人の男女が険しい表情を浮かべながらパネルに向かい座っている。少年が小型端末にコードを接続し、録画映像を中央パネルに出す。


軽いノイズの後に画像が鮮明になる、チカチカと夕日を反射しているバスが映る。映像の倍率が上がり反射光を抑えるため自動補正される、少し緑かかった画像にはバールのようなものを持った二人組みの男が警戒しながら歩いている。二人の後方にはバスを中心に座ったりウロウロしている人の集団と、それを守るように数人のシャベルや鈍器を持った人が周りを警戒している。


「本日、旧S町準安全地帯を偵察していたところ、故障したバスと避難民60名を発見しました。話を聞いたところ関東平野の準危険地帯から避難してきたそうです。バスは車輪が取れかけ車軸が曲がっており走行は不可能です」


「報告ありがとう。故障が無ければ国道を使い避難センターへ収容されていたでしょうが、タイミングが悪いことに私達がいるこの準安全地帯は、統制されたゾンビの大群が山岳地帯を越え、拡散浸透行動をしており、準危険地帯や危険地帯へと順次変更されています。そのため封鎖地区が増加しており、避難センターへ救助要請をしても到着するまでに数日から数週間かかると予想されます。

物資輸送用のトラックに、避難民を乗せ移動させることは可能ですが、ゾンビの群れに囲まれた場合、高い確率で罹患者が出ると思われます。現状では最寄のバリケードでの保護か、短時間での簡易バリケードを構築するかの選択がありますが、避難民と最も近いこのバリケードはどのように対応しますか?」


女性が、二人の成人男性に聞く。白色LEDの光に照らされているためなのか、2人の顔色が悪い。人道的に考えれば、避難民を受け入れるか一時的にでも保護するべきだろう。しかし、大丈夫だろうか?潜伏期寒中の罹患者がいたら?避難民を全員収容できる防護施設は無い、音を聞きつけられてゾンビの大群が押し寄せてきたらここは耐えられるのか?準安全地帯基準のバリケード壁では、どこか一箇所でも破られたら数時間でゾンビが溢れてしまい危険地帯として封鎖されてしまう。そうなれば救援がくるまで逃げ出せない、下手をすれば餓死する。


「あんたはどう考えてるのかね?」


初老の男性が女性に聞く。


「先に断っておきますが、私にはそういった事を決める権限はありません」


それを聞いて、もう一人の小太りな中年の男性が、高圧的な態度で彼女に詰め寄る。


「おまえには、権限は無くても撲滅実施隊員としての責任があるだろ。あんたが責任もってどうにかしろ!一番安全なとこ住めて、いい服着てたらふく食ってるあんたらが、何もできないって言うわけないよな?」


中年男性が嫌味をこめて言う。女性は表情を変えず一度天井を見てから一言。


「私は、提案をすることはできますが、決定権はありません」


と短く答える。中年の男性がいきなり大声を出してわめき散らす。


「なんだその言い方は!余所者の癖に目上の者に使う言葉か?お前は、あいつらをぶち殺して俺達を安全に生活させるためにいるんだろうがぁ!お前が責任を持ってどうにかしろ!!!」


それに追従するように初老の老人も大きく頷く、そして…。


「あとはあんたに任せる、わし等は忙しいのでな」


と言いながら中年の男性をつれてそそくさと出て行く。


強化プレハブの中には、彼女と少年だけが取り残される。少年は呆気にとられていたが思い出したように小型端末をケースにしまい、そのまま外に出ようとドアのノブに手をかけたとき……。


「少年ちょっといいかな?かな?」


「はい?」


彼は、愚痴か文句でも言われるのかと思いながら振り向く。彼女は満面の笑顔で近づいてきて……。


「少年、いいお尻してるわね」


「!?」


「そのお尻を見込んでお願いしたいことがあるんだけど…いいかしら?」


彼女は妖艶に笑みをたたえながら、少年の耳元へ唇を近づけ、囁く。


「お願いを聞いてくれたら、大人の味を教えてあげる」


言葉は少年の内耳を、微風を伴いながらくすぐる、脳にその言葉が届いたのか届きすぎてしまったのか硬直してピクリとも動かない。その姿を見ながら彼女は小型記憶端末を彼の手に握らせる。


「お願いね~」


彼女はにこやか笑いながらに去っていった。少年が想像か妄想か、どちらかの世界から戻ってきたとき彼の口元には自然と笑みがこぼれていた。


「こっこれはフラグだよな…、大人への偉大なる、わんすてっぽう!幼女もいいけどやっぱお姉さんだよね!!!」


強化プレハブが防音処置されていなければ、別の意味で彼の人生が一歩踏み出せそうな発言を大声でしながら、手渡された端末の内容を見る。


 1:非常用備蓄から60人、最低2週間分の食料と資材を指定した場所に運ぶこと。

 2:指定場所の安全確保。

 3:バリケードの作成と施設の補強。

 4:他、必要な処置をすること。

 ※指定場所は添付ファイル参照。

 ※避難民への話はしておいてあげるね☆


 追伸:あきらめないで、がんばれ♪


「…………」 


 彼は絶句していた。この内容の意味するものはもう分かっている、即席の避難所を作れと言うことだ。

地図を見ると指定された場所は昔スーパーだったらしい。避難民をこのまま放置してもゾンビに飲み込まれる可能性が高い、ここのバリケードに収容するのはさっきの話から判断すると、たぶん無理…短時間でバリケード構築作業をやるしかない。


 やるしかないのは解っているけど、そのまま責任者役になってしまうのも確定してしまう。避難民が要求や苦情と言った自己の欲望を正当化し、際限なく自分に持ち込む。それが、当人にとって有利に改善されることが当たり前と考える人がほとんどだ。もし、満足できない結果になり不満が高まると、避難民の中で派閥ができ、分裂崩壊の危機が訪れる。


 高い統率力と調停力、なにより信頼されることが重要となる…。10年前の彼が、最初に経験した避難所では暴力と裏切り、略奪と殺戮そして飢餓によって壊滅した。


「なんか胃が痛くなってきた……」


そう言いながら少年は、必要資材の数量計算と平行して指定地区の住宅地図を参照し、小型端末に各種マニュアルをダウンロードする。時計を確認するといつの間にか朝になっていた、事務作業を終らせ装備を整えてから、軽い朝食と眠気覚ましにカフェイン剤を飲んで備蓄集積所へ向かう。


「え~と、ビスケット型非常用食料を2週間、60人分よりちょっと多めで。ドライフルーツ10キロ、ついでに金平糖と~……」


少年が数人の備蓄管理者に必要物資を伝えていく。


「おい小僧、その物資で大丈夫なのか?カロリー計算や、食事における心理的要因は考慮しておるのか?」


年配の備蓄管理官が疑ってくる。管理官の高圧的な言葉使いに少年の表情が厳しくなり、怒気をはらんだ声でまくし立てる。


「ちゃんとマニュアル通りに計算しましたよ、これでも食料は多めにとってあるんですよ!」


「いやいや、そんなつもりで言ったわけではないんだが。悪かった、疑ってすまなんだな」


備蓄管理官が、謝る。それを見た少年の表情から険しさがとれ、微笑みを浮かべながら必要な物資量を入力してある端末と地図データのコピーを、備蓄管理官に手渡す。


「これ見てくださいよ、酷いと思いませんか?」


少年はスーパーの地図情報を出しながら、インフラ整備会社が配信している、設備使用可能地域の地図データを重ねる。地図上ではちょうど境界線のあたりで、微妙にインフラ関係は全滅しているようにも見える。


「ふむ、こいつぁ難儀な場所だな、ゾンビ共が出てくる前に一時期滞在していたことがあったが、ここの山が邪魔をして電波を遮る、中継地が無いと有線か衛星回線以外の連絡方法は厳しいぞ」


備蓄管理官がそう指摘した瞬間、少年はいきなり敬礼をする。


「備蓄管理官殿、若輩者の自分には無い幅広い見識と人望をお持ちと伺っております。つきましては、是非とも御助勢をよろしくお願いします。自分は先行して避難場所の安全確保を行い、物資等の受け入れ態勢を整えておきますので、後はよろしくお願いします。」


一息に、勢いよくまくしたてたあと片手をあげて…。


「じゃっ、そうゆうことで」


と言いながら、装備を満載したEVスクーターに飛び乗り、少年は風のように去っていった。取り残された備蓄管理官は、複雑な表情を浮かべながら頭をかく。


「まったく、あやつはワシが何もしなかったらどうするつもりなのだ?」


と言いながら小型端末をいじる、必要量として入力されている物資数量の中で気になる部分を再計算すると、カロリー計算の不備やここでは手に入らない機材と物資、または交換部品等がごっそり抜け落ちていて苦笑する。


「あの馬鹿ガキがぁ」


備蓄管理官はデータの修正と追加をしながら、他の管理者達に指示を矢継ぎ早に出し、電話を何処かへかける。



放置されたスーパーマーケットは、かつて平和であった頃の痕跡と、初期の混乱の中ここへ食料を求めてきた人や立て篭もった人達の残滓が混ざり合い、いたるところにばら撒かれている。かつて人であった乾燥した物体と、血痕を残し横たわるマスコットキャラクターという形で………。


「さーてと、まずは安全確認をしますか~」


少年は、まずスーパーの周囲を確認する。店舗正面入り口は過去に作られたバリケードにより進入するのは難しそうだ。窓も内側から板を打ち付けてあるのか補強されており、店舗内をうかがう事はできない。店舗側面は穴等見られない、そのまま裏の資材搬入口へ向かう。


「あ~なるほどね……」


思わず声に出てしまう。ドアの前や窓にはしっかりとしたバリケードが作られ、突破された痕跡は無いが、電動シャッターの部分はバリケードらしいものが無く、破壊されたシャッター部分が大きな口を開けていた。ここからゾンビ共が中へ雪崩れ込んだ事が容易に想像できる。これでは中にいた人は逃げ場が無かっただろう……。


「ここから入るか」


少年は電動シャッターがあったであろう部分から中を慎重に覗く、通路の奥は暗くほとんど見えない。とりあえずいつでも逃げ出せる準備をしながら、携帯音楽プレイヤーを出し目視可能な場所へ床を滑らせるように投げ、組み立てておいたクロスボウを構え周囲を警戒する。10秒後、ゾンビ用デスメタル系の音楽プレイヤーから流れる。


「楽曲終了…無音状態5分待機……変化なし、内部調査を開始する」


クロスボウを外し、入り口部分に簡単なピアノ線トラップを設置する。シャベルを片手に用心をしながら音楽プレイヤーを回収する。周囲の気配や音に神経を集中させ、フラッシュライトの光でバックヤード内を照らし、動くものが無いか確認する。棚などはバリケードに使われたらしく、雑然としているが遮蔽物は無い、おかげで視界は良好。


2階への階段があるが、とりあえず上り口にピアノ線を張っおき簡易バリケードにしておく、まずは一階から調査を開始する。


作業室や調理室らしき部屋を4箇所と付随する冷蔵庫が8箇所、トイレ2箇所を発見し確認する。店内とバックヤードを仕切る窓付きの扉から売り場だったであろう場所を覗く。バックヤードと同じようにゴミ等があるぐらいで他には何もいない、そのまま店内へ移動し周囲の確認をする。


窓に打ち付けられた板の隙間から、光が射し込んでいるおかげで死角なく、茶色い滲みや骨のようなものが散らばっているだけだ。バックヤードへ戻り、2階へ調査を開始する。階段を慎重に上がる途中、壁の鏡に自分の姿が映り、ゾンビと勘違いして叩き割りそうになったが寸前で気がつく。2階には事務所と休憩室、それとトイレがあったがゾンビはいなかった。


「とりあえず施設内に変なのはいないみたいだな~あ~疲れた」


と大きな独り言をいいながら少年は電動シャッターの所から外に出る。その瞬間いきなり後ろから羽交い絞めにされ、抵抗する暇も無くそのまま押し倒される。


「しまった!」


油断していた、彼は自分の背中に乗っているモノを剥がそうと暴れるが効果が無い。背中の奴がカチカチと歯を鳴らす。このままでは噛まれる、恐怖が彼の動きを一瞬止めてしまい、その隙を狙ったかのように無防備な首筋に………。


「ふ~~~~~~♪」


「はひっん」


少年は激痛ではなく、生暖かい息が首筋から耳えとくすぐるように吹きかけられて、間抜けな声を出してしまう。とたんに体の拘束を解かれ自由になる。


「ぶっははははははっは、何その『はっひん』ってっ~ぷっぷははっはは」


少年のすぐ側で女性が大爆笑している、彼女こそ少年に指示を与えた本人だ。涙を流しながら爆笑している姿を見て、少年は真っ赤になりながら何も言わずに睨んでいる。


「はいはい、そんなに睨まないの。出口だと思って気が緩むのは分かるけど、そういう隙が生死にかかわってくるんだからね?それに、ゾンビの対応より人間のほうが怖くて危険かもしれないわよ~だから…いい男がいてもホイホイついていっちゃダメよ?」


「何の話ですか!そんな事より避難民との話はどうなりました?あと、暇なら手伝ってくださいよ。」


「あ~そうそう、避難民には話をし通しておいたから安心して『どきっ、男だらけの避難所生活・ポロリもあるよ?』を楽しんでね☆」


「楽しめるかー!てか、あんたは何してんだ!!!」


「HAHAHA!私は、まだやる事あるからね~あなたの同期でガチっぽいのいたから要請しといたわ、親交を深めつつがんばってね、お姉さん応援してるから。ポッ☆」


「………とりあえずその話題から離れてください、殴りますよ?グーで」


「暴力反対~それじゃ~お詫びにいいこと教えてあげる、このお店にある地下水の汲み上げ用ポンプは生きていたから有効に使ってね。さ~てと、私はそろそろ行くからがんばってね~。」


彼女はそう言って、少し離れた草むらに隠しておいたらしいカブ型EVバイクに乗って静かに去っていった。


「あの人は何がしたいんだ?わかんねぇ……。とりあえず、店の周囲にピアノ線を張っとくか」


少年は、また独り言を呟きながらスクーターに積んでおいた工具とピアノ線の束を取り出し、木やコンクリートに固定された柵などに繋げ周囲に張り巡らす。


「腹減ったな」


一人ダラダラとスクーターへ歩いていく。装備を入れた袋からブロックタイプの不味いクッキーをケースから取り出し、ビニール臭い水で胃に無理やり押し込む。毎回の事ながら、このエネルギー補給さえ出来ればいいというコンセプトの携帯食料には嫌気がさす、というか仕入れした奴は味見したのかと小一時間問い詰めたい。そんな事を考えながら食事を終わらせると…。


「ほわたぁあ!」


いきなり奇声が聞こえ、思わず振り返えろうとしたところへ飛び蹴りを喰らい、2メートルほど吹き飛ばされる。倒れこむ寸前に受身を取り、転がりながら体勢を整え襲ってきた相手を見ると、年配の男性が少年を指差して。


「お前はもうすでに死んでいる」


「だまれ、備蓄管理官おっさん


少年の背後から飛び蹴りをしたのは、物資を頼んだ備蓄管理官おっさんだった。少年は蹴られた背中に手を当てながら文句を言う。


「いきなり何するんですか、おっさん!」


「だまれ馬鹿ガキ!油断しているほうが悪いと思わんのか未熟者め!!!」


「くっ……」


「常に周りの気配に気を配り、死角をなくすことが生き残る術だと心得よ!」


「……はい」


少年はおっさんに反論したかったが、何も思いつかず素直に返事をするしかなかった。


「うむ、注意一秒怪我一生だぞ分かったかこの馬鹿ガキ!そんな所に転がっている暇があるなら仕事の準備をしろ」


そう言って、おっさんは無線機を取り出し呼びかける。


「ワシじゃ、来ても良いぞ」


少し離れた場所から力強いモーター音とともに、資材と重機を牽引した大型トラックが全部で8台来る。少年が要請した量よりも明らかに多く頼んでいなかった機材もかなりある。


「こっこんなに大量の物資、どこに隠してたんですか?」


少年が驚きながら聞く。


「ワシを甘く見るでないぞ馬鹿ガキ、お前は電源と通信についてまったく考えておらなかったであろう?そういった手配をしないで現地にくるとは、この愚か者めが!それとな、成人1日の必要カロリーを貴様1500calで計算しておったな?」


「はい、そうですけど何か問題でも?」


「おおありだ愚か者がぁ!その数値は事務作業などをする18歳以上の女性用数値であろう、ゾンビとの戦闘やバリケードの構築と修理、そして篭城戦を考えた場合最低でも3200cal以上の備蓄を用意しなくてなんとする!それと……」


そう言いながらおっさんは、ピアノ線が結び付けられているフェンスの一部に近づき軽く蹴る。とたんにフェンスは、ありえないほどグラグラと大きく揺れる。


「よく見ろ馬鹿ガキ!コンクリートの基礎部分が雨で侵食され腐っておる、ここから奴らが入ってきたらどうするつもりだったのだ、この愚か者。同じミスはするでないぞ?」


「……はい」


気をつけていれば防げたミスを指摘され、少年は唇を噛む事しか出来なかった。


「おい、馬鹿ガキ。突っ立ってないで手伝え!」


少年は、いつの間にか作業を始めている人達の元へ走っていく。


「バリケードの資材は、単管パイプとコンパネ……。こんなもので守れるんですか?自分が予定していたのは、鉄骨と鉄壁板でしたよ」


「むろん知っておる。だがな、無い物を持ってくることはできんだろ?それに、この単管パイプは3本の径が違う物を内部に通しておる、だから強度は高い。それにコンパネと言ったが、これはJAS規格品の構造用合板だ、防炎・防湿・対衝撃に高い評価を得ておる、そこらにあるようなヤワな物でわない」


「それでも鉄筋コンクリートの土台で固定しなければ、押されたら動いちゃうんじゃないですか?」


「うむ、本来ならば5メートルほど掘った穴にコンクリートと鉄筋で土台を作りたい所だが、あいにくと時間と資材が無い。だからな、動かないようにラセン杭と1トン土嚢を大量に使って固定する。土嚢が届くまでに骨組みと足場を完成させておかねばならぬ、ワシよりいい働きをしたら褒美をやっても良いぞ?馬鹿ガキ」


おっさんはニヤリと笑う。


「俺が凄いってことを見せてやるぜ、覚悟しろよおっさん!」


数時間後……。


少年は、ヨロヨロしながら働いていた。


原因は、ペース配分を考えずに最初から全力で働いたためだ。おっさんや他の人達は、ほとんど同じペースで彼の2倍の資材を運び、瓦礫の撤去をしてバリケード内の防護用構造物や生活用設備の設置と、野外指揮所と簡易隔離施設を構築をしている。


正直言ってこいつら本当に人間か?機械か化け物じゃないか?と思うほど無駄な動きが無い、そして無限のスタミナを持っているように見えた。そうこうしているうちに施設内の清掃と物資等の搬入が終わる。パイプの骨組みが完成した所へ、丸太や30キロ土嚢と1トン土嚢が次々と隙間無く積まれワイヤー固定される。最後に外周へ約3メートルの防護壁が設置されて完成した。


最終点検として、設備と機材や構造物をチェックする。外部からの電気配線と通電状態の検査をし、地下水の汲み上げポンプが電動と手動両方で作動するかのテストを行う。太陽発電パネルも設置されたが、あまり期待できない数値だった。そして全ての作業が終わる頃に有線の電話回線が繋げられる。


「さて、これで電気と通信そして安全な水が使えるようになったな。便所の汚物も流せるし、幸せと思うんだな馬鹿ガキ」


「馬鹿、馬鹿いわないでくださいよ!」


「ふむ、生きて再会できたならば弟子として鍛えなおしてやる、喜べ」


「お断りします!」


「おのれ馬鹿ガキ!憎まれ口を叩けるだけの元気はあるようだな。次に会う時を楽しみにしておるぞ、さらばだ」


おっさんはハシゴを使わずに、土嚢を軽々と登り防護壁を乗り越えて去っていった。


「それにしても、短時間でスーパーマーケットが陣地みたいになったな。3mを超える壁とそれを支える大量の1t土嚢。その内側にも障害物として、30キロ土嚢や丸太の壁を設置していて、塹壕のようになっている。ってよくよく見たら出入り口が無い!」


少年はもう一度バリケードの確認をし出入り口を作れる場所が無いか探す。しかし、隙間無く強固に設置固定されていて、いまさら入り口を作ることは不可能とあきらめる。


「あ~まぁ、ハシゴ使えばいいですよねー。そんな事より、自衛隊装備の野外炊飯具3号・野外洗濯セット・仮設風呂まで用意されてる。それに施設内に搬入された物資が、下着から武器や医療品まで、いったい何処から持ってきたんだか、呆れるような頼もしいような、謎すぎるほど多種多様に揃っている。おっさん何者だ……?」


少年が大きな声で独り言を満足そうに言いながら、施設を外から眺めている。にんまり、としていた顔が急に引き締まり素早い動きで前方に飛び退く。その刹那、少年がいた場所に何かの塊が地面に落ち、不気味な音を出す。ぶよぶよと蠢く醜い肉のような物体と、謎の体液を周りに撒き散らしながらおぞましい顔をこちらへ向ける……その顔を見たとき少年は……。






読んでいただいたり、期待していただき本当にありがとうございます。


頭の中にはイメージとか残っているのですが、文章に出来なくて泣きそうになっていました。


個人的に、スーパーマッケットまたはショッピングモールでの籠城はお約束なので

気合を入れたいのですが空回りしてます。日本の平屋型スーパーは立て篭もるには

不向きですので防御力を高めようと考えた結果がコレです。


自分でも突っ込み所をいろいろと思いつきますが、ゾンビものは突っ込むのも楽しみ方のひとつ

と言うことで、ニヤニヤしていただけたら嬉しいです。

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