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幕間:ベアトリスとエミリー

再びベアトリスの過去編です。

ついに明らかになるベアトリスの過去。

エミリーとは誰なのか読んで確かめてください。

そして真のメインヒロインアスタロテが少しだけ登場します!

これはある令嬢の始まりの物語だ。

時はさかのぼり三十年以上前。

ベアトリスの屋敷で……


エミリーという美しい茶髪を、

ひと結びした執事が、

ベアトリスの寝室に入ってくる。


「ベア!」

「早く起きて!」

エミリーはベアトリスと幼い頃から一緒で、

数年前に付き合い始めた。


「エミリー」

「待って……」

「今日は学院も休みだし……」

「もう少し寝かせてちょうだい……」

朝はすこぶる弱いベアトリス。


「何言ってるの?」

「今日はあたしとデートする約束でしょ?」

エミリーは布団をはぎ取る。


「そうだったわ!」

「待ちに待った湖デート!」

「危うく逃すところだった……」

ベアトリスは飛び起きて準備を始めようとし、

足をもつれさせる。


「なんのためにテストを、」

「死ぬ気でやったのか……」

フラフラの状態で倒れそうだったので、

エミリーが支える。


「そうよ!」

「恋人とのデートを忘れるなんて」

「悪い彼女ね」

エミリーは膨れた顔をする。


「ごめんなさい……」

「キスしたら許すわ」

ベアトリスはエミリーにキスする。


「ありがと」

「学院でもモテモテの……」

「令嬢様は大変ね」


「そうでもないわ」


「またまた謙遜して!」

「大量のラブレターが男女問わず届くんだから!」

「開封を手伝う私の身にもなってよ!」

エミリーはタンスを開けて、

着替えを準備する。


「恋人とラブレターの中身を、」

「読むっておかしいわね」

ベアトリスは冷静に分析する。


「早く準備して!」

嫉妬して着替えを、

投げつけるエミリー。


「エミリー手伝ってくれる~?」

ベアトリスはやはり朝に弱いのか……

まだ上手く頭が回っていない。


「もうベアは甘えん坊なんだから……」

ため息をつきつつ、着替えを手伝うエミリー。


「仕方ないでしょ!」

「あなたがいて毎日幸せなのよ」

ベアトリスは化粧台に座りながら言う。

エミリーは満更でもなさそうに、

髪の毛をくしで優しくとかしていく。


「それは嬉しいけど……」

「私たち結婚はできないし……」

エミリーは現実的な話をして誤魔化す。


「それなんだけど!」

「他国には同性でも、」

「結婚できる国もあるのよ!」

図書館で調査して良かった。

二人で結婚したいわ。

ベアトリスは内心ウキウキしている。


「本当!?」

驚愕するエミリー。


「最悪の場合は……」

「エミリーと駆け落ちしてもいいわ……」

お嫁さんになりたいわ……

ベアトリスは妄想を加速させていく。


「それは……」

「許されないわ……」

エミリーは話を中断させる。


「どうして?」

「愛があれば何でもできるって……」

「そう言ったのはあなたよ」

まだ厳しい現実を知らないベアトリス。


「そうだけど……」


「まあこの話は置いておいて……」

「湖に行きましょう!」

上手く誤魔化したけど……

あとで話さないと……

ベア……ごめんね……

エミリーは罪悪感を感じる。


「そうね!」

「サンドイッチは作ってあるから!」


「エミリーのサンドイッチ大好きよ」

「あとで食べさせて~」


「仕方ないわね……」

それから一時間以上かけて、

馬車に乗り二人は湖に移動する。


「ここは本当に綺麗ね」


「湖はたくさんあるけど……」

「やっぱり思い出の場所が一番よ」


「あたしたちが出会った場所だから?」


「それもあるけど……」

「その告白に成功した場所だし……」


「ふーん」

「ベアって本当に素直じゃないわね」

「あたしはそこがいいんだけどさ……」


「エミリーって時々意地悪だよね」


「ベアだけです~」


「職務放棄したな」


「今はオフだから!」

「はいはい」


「ねえ、キスして?」

可愛くおねだりするベアトリス。


「テストお疲れ様」

エミリーは優しくキスする。

「ありがとう」

「元気出るわ」


「さあ!サンドイッチ食べましょう!」

「あー、エミリー様」

「私にサンドイッチを食べさせてくださる?」

ベアトリスは大根役者ぶりを、

遺憾なく発揮する。


「フフ……」

「何よ」

「その変な言い方は!」


「今度の劇の真似よ」


「とんだ大根役者ね」

エミリーは批判する。

「酷いー」

ベアトリスは棒読みで言う。


「大根役者に食べさせてあげるわ」

「サービスよ」


「ありがとう」

「美味しいわね」

「人生最高ー!」


「大げさなんだから」

「ベア大好きよ」


「私も愛してるわ」

なぜか黙り込むエミリー。

そしてサンドイッチを食べ終えた二人。

湖畔のコテージで景色を眺める。

もう夕方になってきた。


「エミリー」

「私たち結婚しない?」

「他国でさ」


「大変だろうけど……」

「二人なら生きていけるよ」

ベアトリスは最高のシチュエーションで、

手を握りプロポーズする。


「ベア……」

「無理なのよ」


「どうして!?」


「実はあなたに婚約の話が来てるの……」

エミリーは残酷な現実を突きつけてしまう。


「は?」

「意味が分からないわ」

「急すぎない?」


「お相手のユリウス様は……」

「本当に良い方よ」

「家柄も良くて穏やかで優しい人」


「今はそんな話聞きたくないわ」

「なおさら駆け落ちしましょう」

「二人で生きていくのよ!」


「あたし実家に帰って家業を継ぐことにしたの」


「え?」

「どういうこと?」

「実家って遠いわよね?」


「もしかして辞めるの?」


「仕方ないのよ」

「母と父の具合が悪くて……」

「あたしがいないとダメなの……」


「そう……」

「でもたまには会えるんじゃないの?」


「無理よ……」

「あなたは婚約者と生きるの」

「世界一の令嬢として」


「どうしてそんなこと言うの?」

「私はあなた以外いらないわ」


「ダメよ」

「あたしたちはここでおしまい」

「女二人で生きていくのは大変なのよ」

「偏見としがらみが多いし……」

「耐えられないわ」


「だからわかって……」

「ここで終わりにしましょう」

「綺麗な思い出として……」


「もうわかったわ……」

「それでいつ帰るの?」


「明日よ……」


「早すぎない?」

絶望するベアトリス。


「だから最後に……」

「思い出の場所に来たかったの……」


「じゃあ今日はずっと一緒にいて?」

「夜も……」


「わかってる」

「ベアごめんなさい」

「こんな卑怯な女で……」

エミリーは泣きそうになっている。


「いいのよ」

「残りの時間は楽しく過ごしましょう」

「喧嘩もしたくない」


「ええ……」


その時だった……

巨大な赤色のドラゴンが飛んできて、

夕焼け空に向かって雄叫びをあげている。

「嘘でしょ……」

「ベア見てよ!」

エミリーはドラゴンをみて驚愕している。


「ドラゴン!?」

「あんたそんなにデカいんだから!」

「こんなセカイ滅亡させてよ!」


「もう嫌なのよ!」

「あんたのブレスと力で!」

「全部ぶっ壊してよーーー!!!」

ベアトリスの叫びはただ湖に、

こだましただけだった……


ドラゴンは反応するわけもなく、

飛び去ってしまった。

「ベア帰ろう……」

「うん……」

二人はそのあとぽつぽつと話しながら、

屋敷に帰宅し……

突然セカイは暗転する。


誰もいない暗闇の中で、

ベアトリスはさまよっていた。

そして……

「ベア逃げて!」

「あなただけでも!」

エミリーの言葉だけが聞こえてくる。


あの時の……

「無理よ」

「一緒に逃げるの!」

ベアトリスは暗闇で必死に叫び続ける。


「ダメ!」

「ベアは生き延びて幸せになるの!」

「愛してるから」

「イチかバチかだけど……」

「今からあなたを他の場所に飛ばすわ」


ベアトリスはなんとかわらを掴む思いで……

エミリーを探そうとするが……

その手は宙を切るだけだった。

「エミリー!!!」


そしてベアトリスは目が覚める。

知らない天井と隣には姪っ子。


「叔母しゃん?」

「どうしたの?」

アリシアは寝ぼけている。


「ちょっと怖い夢をみたの」

「久しぶりにね」

実際に冷や汗をかき放心していた……


「そうなんだ」

「ベア……」

「大変だったね……」

そう言って寝落ちするアリシア。


「っ……」

いけないとわかっていても、

アリシアに抱きつき温もりを、

感じるベアトリス。


「エミリー……」

エミリーは助けられなかったわ……

でもアリシアだけは……


一筋の涙を流して、

再び眠りにつくベアトリスであった。

シアンは珍しくだまって聞いていた。

こうして夜が明けて、

新しい素敵な一日が始まる。


ベアトリスとエミリーの別れ……

この出来事があったからこそ、

アリシアを守ろうと考え始めています。

次回はついに剣聖ガランドが登場します。

楽しみに待っていてください。

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