井上源三郎のお茶時間&総司、健康証明書再更
夕暮れ、屯所の縁側。
張り詰めた一日の空気がようやくほどける。
近藤勇は湯呑を手に、ふう、と息をついた。
「……まったく、今日は騒がしかったな。
あいつ、ようやく“監視隊解散”って喜んだ途端これだ……可哀想になあ」
遠くで聞こえる、こんこんという咳。
掲示板には新しいお達しが貼ってある。
『沖田監視隊・第二期 再始動』
※健康証明、再検査の上更新すること
総司の風邪はしっかりバレ、
あの黄金の幕府大学病院の健康証明は
効力を失ってしまった。
井上が立ち上がる。
「ちょっと行ってきます。湯たんぽ入れてやりますよ。あったかいのが一番ですからなあ。」
しばらくして戻ってきた。
「熱、けっこうあるねえ。これからまだ上がりそうだ」
「ははは……しかし隠れるとは、相変わらずだなぁ」
茶を注ぎながら井上は笑う。
「子供の頃も、熱出すたびに隠れたりしてましたなあ」
「勇さんがミミズの黒焼きを飲ませようとするもんだから」
近藤も苦笑する。
「試衛館は貧乏で、ちゃんとした薬を買えんで
トシがその辺のミミズで、それらしく作ったものだから、
苦いしグロいし……かわいそうなことをしたよ」
「しょっちゅう熱を出しましたなぁ。
まあ、栄養が足りなかったからだと分かってはいたが」
井上は湯気を眺めながら続けた。
「まあまあ、親を亡くした総司がここまで大きくなれたのは、
勇さんやトシのおかげですよ。
焦らず見守るんですな。今はまだ子供の体ですが、
ちゃんと丈夫な大人になりますよ」
⸻
「総司、健康証明書再更新」
朝の町医者の診療所。
総司はドキドキしつつ扉を開けた。
黄金の幕府大学の健康証明書は、例の風邪で効力を失った。
もう一度もらうには手続きが大変すぎるため、
今日は昔ながらの町医者のところへ来ている。
医師はにこにこしながら診察を始める。
総司は必死で訴えた。
「近藤先生が大騒ぎしたせいで、僕がしょっちゅう倒れてるみたいなイメージになって……
監視隊まで作られてしまったんです。
厠で失神したのは昔の一回だけ!
風呂だって、寝ちゃっただけ! 事故なんです!」
医師は笑って言う。
「なるほど。近藤先生はかなり心配性なんだねぇ。
そういえば近藤先生の神経性胃炎もひどそうだよ。
治療したらどうかと言ったんだが、
『自分はいい、総司を頼む』って言われてね」
総司は思わず固まる。
(……先生の方が重症じゃないか)
“健康こそ誠”
そう決心した総司は、心の中でうなずく。
( 近藤先生を病院へ連れてこよう)




