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朝礼の異変 新選組は進歩する。



朝の屯所。


全員がきちんと整列し、直立不動で近藤勇の訓話を聞く――

新選組名物・朝礼である。


その最中だった。


バタン。


乾いた音がひとつ響き、

屯所の空気が一瞬で凍りつく。


「……あ」


列の中で、沖田総司が崩れ落ちた。


「総司!?」


「おい!!」


近藤勇と土方歳三が同時に駆け寄る。

隊士たちの視線が一斉に集まる。


――ああ、やばい。


意識が戻ると、視界いっぱいに心配そうな顔。

近藤先生、土方さん、隊士、隊士、隊士。


……視線が、痛い。


(や、やらかした……)


湯場での一件以来、

屯所では「沖田総司は倒れやすい」という噂が

やたらと元気に育っている。


ここで朝礼バタン。

もう言い逃れできない。


(病弱イメージ、確定だ……)


案の定、医者が呼ばれた。


いつもの老医師ではなく、

今日は見慣れない若い医師である。


「どうなさいました?」


落ち着いた声で脈を取り、顔色を見る。


近藤が身を乗り出す。


「総司の容体は!? なぜ倒れた!? 大丈夫なのか!?」


「え、ああ……」


医者は一瞬戸惑ったあと、穏やかに笑った。


「心配ありません。“起立性調節障害”ですね」


「……何だそれは」


「成長期の若い人によくある症状です。

長く立っていると、血が下がってしまうんですよ」


「朝礼ですか? よくあります」


医者はさらりと言った。


「お話が、少し長かったのかもしれませんね」


近藤は、微妙な顔でうなずいた。


(朝礼が長いとは……言えない……)



翌日も、朝礼は続く。


ただし今日は、総司は椅子に座らされていた。


……若いのに。


(恥ずかしい……)


そのとき。


バタン!


今度は藤堂平助が倒れた。


「おい、藤堂!」


藤堂もまた、成長期まっただ中の若者である。


総司は思わず、くすっと笑った。


「……仲間、できたなぁ」



さらに翌日。


朝の屯所。


整列――のはずが。


総司と藤堂の後ろに、

ずらりと並ぶ椅子、椅子、椅子。


井上、永倉、原田まで、ちゃっかり着席している。


「立ってると腰に来るんだよ」


「俺、昨日筋トレしたし」


みんな、優しい。


結果、朝礼はまさかの

全員着席式へ突入した。


演台の近藤が、困ったように見回す。


「えー……みんな……座ってるのか……?」


土方の眉がぴくりと動く。


「おい……朝礼ってのはな、

直立不動で聞くもんだろ……!」


だが前列では、井上が穏やかにうなずきながら――

すでに船を漕いでいた。


「すぅ……すぅ……」


「井上さん!? 寝てますよね!?」


土方の苛立ちは限界に近い。


「誰だ……こんな、ぬるい朝礼にしたのは……」


だが、井上の船はもう出航中だった。


「すぅ……すぅ……」


こうして――

全員 直立不動の朝礼は

**「全員着席式朝礼」**へと進化を遂げたのである。


近藤勇は、安心したのか、

朝礼は日に日に長くなり、

井上の船は、今日も元気に出航していった

            

           ーつづくー

読んでくださってありがとうございます。

次回は とうとう 沖田総司が 尊厳を取り戻すため 立ち上がる予定です

どうぞ お楽しみに

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