第6章: 危機
翔太は仕事を終え、福岡市地下鉄の駅に向かって歩いていた。夕方のラッシュアワー、人々が足早に改札へと向かっている。ホームに着いた主人公は、ふと周囲を見渡し、いつものように目に映る「死の確率」を確認していた。だが、その時、信じられない数字が目に飛び込んできた。
「100.0%」
一瞬、目を疑う。数名の乗客の頭上に、真っ赤な数字が浮かんでいる。普段、どんなに高くても「99.9%」までしか見たことがなかったこの確率。つまり、このまま何も起こさなければ、彼らは確実に死んでしまうということだ。
(いったい、何が起きるんだ?)
心臓が早鐘のように打ち鳴り、全身に冷や汗が流れる。原因がわからない以上、何をすればいいのかも見当がつかない。だが、この数字が現れた以上、何か大きな事故が起こるのは間違いない。
電車がホームに入ってきた。その瞬間、ふとしたひらめきが頭をよぎる。
(もしかして、これから乗るこの電車が――脱線する?)
予感が確信に変わる。直感的にそう感じた主人公は、電車の発車を遅らせる方法を探した。そして、一つのアイデアが浮かぶ。すぐにポケットからスマートフォンを取り出し、線路へと投げ入れた。
「うわっ!スマホが線路に!」
周囲の人々が驚きの声を上げる。すぐに駅員が駆け寄り、電車の運転手に無線で連絡が入る。電車は発車直前だったが、スマホを拾うために一時的に停止せざるを得なくなった。
主人公は周囲の混乱をよそに、再び目を凝らした。「100.0%」だったはずの数字が、「0.0%」へと変わっているのを確認し、ようやく深く息をついた。
(間に合った……)
しばらくして、スマホが線路から回収され、電車はゆっくりと再開した。その後、駅員の無線で「異常が発見された」との報告が流れる。どうやら、電車の制御システムにトラブルが発生していたらしい。
脱線事故は未然に防がれた。周囲の乗客は何も知らず、ただ発車の遅れに不満を漏らすだけだったが、主人公は心の中で安堵していた。
(この能力……やはり、人々を守るためにあるんだ)
次の目的地に向かう電車に乗りながら、主人公は今までにないほど強く、この力の意味を実感していた。