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第4章:病

 翔太は「死の確率」の見え方に少しずつ慣れてきた。だが、最近になって奇妙なことに気づくようになった。ある一定の人たちが、常に「25.0%」という同じ数字を表示しているのだ。


「25.0%って…なんだ?」


電車の中でも、会社の同僚の中にも、この「25.0%」が見える人々がいる。死の確率がこれほど固定される理由がわからず、翔太は不思議に思っていた。これまで見た高い確率は突発的な事故の予兆だったが、この場合はそうではないようだ。


ある日、オフィスでのランチタイムに、同僚の田中が苦しそうな表情で席に座っているのを見かけた。田中の頭上には例の「25.0%」が浮かんでいる。


「田中さん、大丈夫ですか?顔色が悪いですよ」


「ん…少し胃の調子が悪くてね。でも、いつものことだから大丈夫だよ」


田中は軽く笑ったが、翔太はその「いつものこと」という言葉に引っかかった。翔太の目には、彼の「25.0%」が全く変動していないことがわかっている。


その夜、帰宅した翔太は、美咲にそのことを話した。


「最近、いつも同じ確率が見える人たちがいるんだ。田中さんもその一人で、ずっと『25.0%』なんだよ」


美咲は少し驚いた表情を浮かべた。


「それって、何かの病気を持っている人たちなのかしら?」


「たぶんそうかもしれない。持病があるとか、慢性的な健康リスクがある人たちなんだと思う」


翔太はその可能性に気づき、腑に落ちるものがあった。この能力は、突発的な危険だけでなく、長期間にわたるリスクも見抜くことができるのだ。


数日後、翔太は田中と一緒にランチに行くことにした。田中が「健康診断で引っかかった」と冗談交じりに話すのを聞いて、翔太は真剣に尋ねた。


「田中さん、本当に大丈夫ですか?慢性的な病気とか、隠していることはないですか?」


田中は驚いた表情を見せたが、次の瞬間には苦笑いに変わった。


「実はね…胃がんの初期段階だと診断されたんだ。でも、まだ軽い状態だし、手術もできるって言われてるから大丈夫だよ」


翔太は内心でショックを受けた。やはり「25.0%」は、持病や慢性的なリスクを抱えている人に表示される数字だったのだ。


「気づかなくてごめん。でも、早期発見できて良かったですね」


「そうだね、定期的に検査を受けていたおかげだよ」


田中は微笑んでそう答えたが、翔太はその笑顔の裏にある不安を感じ取った。


家に帰ると、翔太はふと家族の頭上の数字を確認した。美咲も菜々子も、「0.0%」だった。だが、この新たにわかった事実は、翔太に一つの不安を生じさせた。


「もしかしたら、今は見えていないだけで、いつか家族にも『25.0%』が表示される日が来るのかもしれない」


そう考えると、いてもたってもいられなくなった翔太は、美咲に「次の健康診断は早めに受けたほうがいい」と強く勧めた。


美咲は少し困惑しながらも、「そうね、健康は大事だものね」と了承してくれた。


翔太は、この能力がただの恐怖の源ではなく、見えないリスクを警告するツールでもあることに気づき始めていた。そして、家族や友人の健康を守るために、できる限りのことをしていく決意を新たにする。


この日から、翔太は街中で見かける「25.0%」の人たちに、注意深く声をかけるようになった。時には不審がられることもあったが、何人かはその忠告のおかげで早期発見に繋がったという。


「見えないリスクを見抜くことが、この力の本当の価値なのかもしれない」


翔太は、再び訪れるかもしれない家族への危機に備えながら、次なる一歩を踏み出そうとしていた。

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