表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/8

第1章: 見えざる死の兆候

 翌朝、翔太は再び数字が見えることを恐れていた。だが、通勤時間に迫ると、その恐怖と不安は少しずつ現実味を帯びてきた。駅のホームに立つと、周囲の人々の頭上にはやはり数字が浮かび上がっていた。


「0.0%」「0.3%」「1.2%」と、ほとんどの人は低い数字だった。しかし、ある女性の頭上には「15.8%」という比較的高い確率が表示されているのを見つけた。


「15.8%? 何が起きるんだ?」


 翔太はその女性を注視した。特に見た目に異常はないし、普通の通勤客に見える。だが、次の瞬間、電車がホームに到着すると同時に、彼女は足を滑らせてホームの縁に倒れ込みそうになった。


 周囲の乗客が慌てて彼女を引き戻し、なんとか事故は避けられた。しかし、その光景を目の当たりにした翔太は、心臓が激しく鼓動するのを感じた。


「やっぱり…」


 翔太はその場に立ち尽くしながら、自分の見ている数字が偶然ではないことを確信し始めていた。この「死の確率」は何かの予兆であり、何らかの危険を示しているのだと。


 電車に乗り込むと、翔太は再び周囲を見渡した。ほとんどの乗客は「0.0%」から「1.0%」の間で、大きな変化はなかった。しかし、車両の中央に立つ中年男性に目を留めた瞬間、彼の頭上に表示された「78.9%」という異常に高い数字に驚いた。


「なぜこんなに高いんだ?」


 不安を感じた翔太は、周囲の乗客も彼に注意を向けることなく、スマートフォンをいじったり、会話をしている様子を見て、改めてこの数字が自分にしか見えていないことを確認した。


 突然、電車が急ブレーキをかけた。乗客たちは驚き、身体を揺らしながら立ち直る。その瞬間、中年男性は頭を抱えてしゃがみ込んだ。


「大丈夫ですか?」


 近くの乗客が声をかけると、彼は苦しそうに「胸が…痛い…」と呟いた。すぐに救急車が呼ばれ、次の駅で緊急停車した電車から男性は運び出された。


 翔太はその光景を見ながら、震えを抑えられなかった。


「本当に…死の確率が分かるのか…?」


 自分が見ている数字は偶然ではなく、現実の危険を示している。翔太はその恐怖を全身で感じ取ったが、それでもこの現象を理解するには時間が必要だと思った。


 仕事を終え、家に帰る途中も、翔太の目には次々と数字が浮かび上がっていた。通りを歩くサラリーマンや、コンビニの店員、交差点を渡る子供たち。全員の頭上にはそれぞれ異なる数字が表示されている。


「こんなことが毎日続くのか…?」


 不安と疲れが重なり、翔太は頭を抱えた。だが、家に戻り、リビングで待っていたのは、笑顔で迎えてくれる美咲と菜々子だった。


「おかえり、パパ!」


 菜々子が駆け寄って抱きつく。その瞬間、翔太は再び二人の頭上を見た。美咲も菜々子も、「0.0%」だ。


「良かった…」


 翔太は思わず小さな安堵のため息をついた。少なくとも、家族に危険は及んでいない。この奇妙な能力に慣れることはないが、家族だけは守られているように感じた。


 その夜、翔太は眠りに就くまでずっと考え続けた。この能力は一体何なのか、そしてこれからどう使うべきなのか。彼はまだ答えを見つけられないまま、深い眠りに引き込まれていった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ