最終話:私って悪役令嬢ですわよね?
ザンジルからの帰り道、事故現場に花を添えました。
道中で花屋に寄ってもらい、母と妹が好きだったデイジー。花びらが数枚から百枚近いものなど様々な品種があり、見た目がとても可憐です。
ゆらゆらと揺れる花たちを見ながら、馬車に乗り込みました。
「もういいのか?」
「はい」
身体はヴァイラントにあるものの、あの場所もなんとなく軽視したくなかったので、花だけでも添えておきたかったのです。
ヴァイラントに戻って一番にやったことは、国王陛下と王妃陛下への報告。
次に、両親と妹への報告。
墓前に花を添えて、「終わったわ。遅くなってごめんね」と言うと、ぶわりと風が吹きました。
デイジーの花びらが数枚、風に舞い上げられて天高く昇っていきました。
「……偶然よね?」
「どうだろう。ティアーナの黒い髪がまるで撫でられたように風に靡いていた。『よく頑張った』と褒めて行ったのかもしれない」
「っ…………そうだと、いいですね」
「ん」
また来るわねと心の中で声をかけて、ヘンドリック殿下と手を取り合い、馬車に乗って養父母の家に戻りました。
処刑から二カ月。
ザンジルとは和平合意しているものの、宝石類に関する契約は破棄されました。
ヴァイラントが自国で生産できるようになったから。
そのせいで仕事にあぶれたザンジルの職人たちには、ヴァイラントに移住を勧める声かけをしました。
我が家で抱えていた職人たちの半数以上が移住を決め、ザンジルに残った職人たちには、そんなに多くはないものの、一年間のみ仕事の斡旋をする約束をしています。
それ以降は、自分たちで国と交渉して道を切り開いて欲しいので。
国交面においては、わりとすんなりと話が進んでおり、問題もほとんどないのですが、別の問題が勃発しだしています。
「赤!」
「何を言っていますの!? 花嫁は白でしょうが!」
「ティアーナも赤がいいよな?」
養母とヘンドリック殿下がウェディングドレスについて、一時間以上も言い合いをしています。
「そうですね、赤がいいです」
「ほらな!」
「なんでよぉ! 花嫁は白でしょう!?」
「うふふっ」
――――私って悪役令嬢ですわよね?
悪の道、貫き通したいと思います。
今回のことで私の過去がヴァイラントの貴族たちに知らされ、彼らは少なからず動揺しています。
そして、王太子であるヘンドリック殿下との結婚に反対する勢力も。
だから、真っ赤なドレスで、戦うのです。
誰にも反対などさせないという気持ちを表すために。
未来も旦那様も、欲しいものは全て手に入れてみせます。
―― fin ――
最後までお付き合いありがとうございました!
なんか、頑張ったな、笛路。
そんな感じでいいので、ブクマや評価など入れていただけると、小躍りするほど喜びますヽ(=´▽`=)ノ





