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私って悪役令嬢ですわよね? 〜全てを奪われた令嬢の逆襲〜  作者: 笛路 @書籍・コミカライズ進行中


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62/63

62:馘首――かくしゅ。

 



 ザンジルに与えた猶予は三カ月。

 その期日を迎えるギリギリに、ザンジルから書簡が届きました。

 

「人数も多いようですし? こちらから出向いて差し上げます、とお返事してください」

「んはは。このタイミングで悪役令嬢ムーブするのか」

「あら? 私は悪役令嬢ですわよ?」


 このタイミングで、とヘンドリック殿下が言われましたが、そもそもダンスの練習中にそんな話をしてきたのは殿下ではないですか。

 くるりとターンしてフンッと鼻を鳴らすと、殿下が楽しそうにクスクスと笑いました。

 



 ◇◆◇◆◇



 

「殺さないでくれ!」


 ザンジル到着後、挨拶もそこそこに処刑場へと向かいました。

 到着後直ぐに、と希望を出しておきましたので。

 元婚約者であるアロイス様が目の前に跪き、縋り付きながら懇願してきます。

 私はそれに侮蔑の眼差しを送りながら、左手に持った杖で払うようにして彼の頬を打ちました。

 

「私って、悪役令嬢ですわよね?」


 金品に目がくらみ、私を『悪役令嬢』と罵り、私の家族に『売国奴』と無実の罪を着せ、公衆の面前で断罪してきたアロイス様。

 彼のせいで家族は死に、私の脚には一生癒えることのない傷。

 世間にどう思われようとも、私は全ての命を奪い、復讐すると心に決めたのです。


「貴方が私をこうしたのですよ? これは、因果応報です。甘んじて、死になさい」


 少し乱れてしまった黒髪を耳にかけ、スッと右手をあげると、処刑人たちがアロイス様の両腕を掴み、引きずるようにして断頭台へと連れて行きました。


「嫌だぁぁぁ! 死にたくない! 父上っ……助けて」


 自慢の金髪を振り乱し泣き崩れるアロイス様から目を背けるようにして、ザンジルの国王陛下が斬首を命じました。


「嫌だ嫌だ嫌だいギャ……ダ………………」


 ゴトリと落ちたそれに、急いで布が覆い被せられました。

 そうして次々に行われる処刑。

 ザンジル国王は、全ての関係者の処刑を決定しました。その数、三〇名。

 あまりにも多くの命が消えました。私のせいでもあり、アロイス様のせいで。

 唯一免れたのは、産まれた赤ちゃん。

 

「一カ月の猶予を、ありがとう御座いました」


 地面に跪いた第四王子妃殿下。

 調べる時間を与えるためではありましたが、期間を三カ月にしたのは、赤ちゃんを産む時間を与えるため。

 いくら復讐鬼になったとはいえ、意志がまだない子どもまでは殺しません。


 王子妃殿下は粛々と処刑を受け入れるそうです。自分たちの行いは、最低だったと。反省など述べても意味がない、命を差し出すことが償いになるのならそれでいい、と誰よりも覚悟の決まった顔をしていました。

 彼女は娘の命も無くなるものだと思っていたそうです。ザンジル国王はそのつもりでしたから。


 赤ちゃんは、連絡を受けて国に戻って来ていた第三王子殿下に育てて欲しいとお願いしました。彼は、よくも悪くも、この国のことが嫌いな人なので。

 外遊という扱いですが、様々な国で商いをしており、ザンジルに戻ってくることがほぼない人なので。

 第三王子殿下が、一切の禍根を残さないと約束してくださいました。

 それが現実的に可能かはわかりません。ですが、もしいつか何かあったとき、私はそれを受け入れようと思いました。  


「…………満足かね?」

「あぁ、満足だとも。私はな」


 ザンジル王の問に私が返事をする前に、隣に立っていたヘンドリック殿下が答えていました。そして、ヘンドリック様は私の顔が誰にも見えないようにするためか、抱きしめて下さいました。

 きっと、私が泣いていたから。

 

「ティアーナの涙が、安心から来たものではないと理解しているな? 私たちはこれ以降、手出しすることはないが、貴国の対応はいつでも見ていると思え。これで失礼する」


 ヘンドリック殿下に抱きかかえられるようにして処刑場をあとにし、馬車に乗り込みました。

 このままヴァイラントに戻るそうです。


「ティアーナ」

「っ…………はい」

「ちゃんと泣け。泣いていい。見られたくないなら隠すから」

「ゔ……はぃ。へんどりっぐざま」

「ん?」

「あり、がどぉ……ございま…………っ、じだ」

 

 整わない息で、どうにかこうにかお礼を言うと、ヘンドリック殿下がくすくすと笑いながら気にするなと仰いました。

 

「契約だっただろう?」


 その言葉にビクリと身体が震えました。

 そう、これは契約でした。私が研磨技術をヴァイラントに伝えるための。

 なぜかヘンドリック殿下が、クスリと笑われます。


「すまない。反応を見たくてつい言ってしまった。大丈夫だ。大丈夫。いまは、思う存分に泣いていい。そうして笑顔に戻れたなら、また二人だけの秘密の約束をしよう」


 耳元で柔らかくそう呟かれ、ボタボタと涙がこぼれるのに、頭の中はパニックで、自分でもどんな感情で泣いていたのか分からなくなってきました。

 ただ、力強く抱きしめてくださっているヘンドリック殿下の温かさは、全身から力が抜けていくほどの効果がありました。

 泣いて泣いて、泣き止んで、落ち着いたら、これからのことを、ちゃんと話し合いたいです――――。




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◇◆◇ 書籍化情報 ◇◆◇


『結婚前夜に義妹に婚約者を奪われたので、責任取ってもらいます。』

☆ 2巻 6/20発売 ☆

書籍表紙

なんと!
超絶素敵な表紙絵を描いてくださったのは、『おの秋人』様っ!
このラブラブ具合、神じゃね?(*´艸`*)キャッ

2巻も、もりもりに加筆しています。(笛路比)
フェルモたんの話とか、子供たちとかもちょい出てくるよ☆
ぜひぜひ、お手元に迎えていただけると幸いです。

各種電子書籍サイトで販売されますが、一例としてリンクボタンも置いておきます。


▷▶▷ Amazon

▷▶▷ honto

▷▶▷ ピッコマ

― 新着の感想 ―
[一言] 平清盛が情けを掛けた為 平家は滅びました。 情けを掛けた この子が波乱を呼ぶ事は確定です。 家康の非情さが 必要な時に ・・・ 甘い ・・・ 子孫がその報いを受ける事でしょう。
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