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私って悪役令嬢ですわよね? 〜全てを奪われた令嬢の逆襲〜  作者: 笛路 @書籍・コミカライズ進行中


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59/63

59:呼び止められて。

 



 ヴァイラントの者たちとは、交渉後の動きを事前に話し合っていました。


 できる限り速やかに。

 必要最低限の荷物で。

 誰ひとり欠けることなく。

 ヴァイラント帰国まで気を抜かない。


 ヘンドリック殿下にエスコートされながら、足早に歩いて馬場に向かっている時でした。後ろから聞き覚えのある声。


「ティアーナ嬢!」


 ちらりと振り向くと、ザンジル王太子――ジスラン様が走って駆け寄って来られました。

 ヴァイラントの騎士たちがヘンドリック殿下と私の周りを固め、剣の柄に手を添えましたが、大丈夫だと伝えて警戒態勢を解いてもらいました。


「ティアーナ嬢」

「はい」

「君だけでも……生きていてくれて良かった」

「私は、私だけ生き残ったことを恨みましたが」

「っ、すまない! 本当に、すまない。君を探していたんだが……」


 ジスラン様がそう言いながら、チラリとヘンドリック殿下を見ました。

 つられて私もヘンドリック殿下に視線を移すと、殿下は真顔で「ヴァイラントに戻ろう」とだけ言い、エスコートの手をクイッと引き、歩き始めてしまいました。


「ティアーナ!」


 ジスラン様に悲痛な声で呼び止められました。

 なぜ、彼はこうも私を気遣うふりをするのでしょうか。アロイス様の救命のため?


「ジス――――」

「ジスラン殿。私の婚約者を呼び捨てにしないでいただきたい」

「っ、婚約者のふりではなく……?」

「それ以上の発言は侮辱とみなす」


 ヘンドリック殿下が振り向かずに、低く唸るようにそう言うと、再度歩き始めました。今度は立ち止まらない、とでもいうように、繋いだ手を強く引き。

 



 ガラガラと車輪の立てる音だけが響く馬車内。

 ヘンドリック殿下は、馬車に乗り込んでからずっと目蓋をきつく閉じたままです。

 眉間に寄った皺が、話しかけられたくない、と言っているようで、ただ隣に座っているしかできませんでした。


 一時間ほど経ったころ、ヘンドリック殿下が俯き両膝に肘を置くと、大きなため息を吐き出されました。

 

「ティアーナ、君に伝えていないことがある」


 真っ赤な髪に隠れて殿下のお顔が見えません。


「何でしょうか?」


 聞きたくない、と思ってしまったのは、彼が醸し出す雰囲気のせいなのか、彼が今から言いそうなことが何パターンか脳内に浮かんでしまったせいなのか。

 

 ――――言わないで。


 どうか、一番聞きたくないことだけは言わないで、と願わずにはいられませんでした。




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◇◆◇ 書籍化情報 ◇◆◇


『結婚前夜に義妹に婚約者を奪われたので、責任取ってもらいます。』

☆ 2巻 6/20発売 ☆

書籍表紙

なんと!
超絶素敵な表紙絵を描いてくださったのは、『おの秋人』様っ!
このラブラブ具合、神じゃね?(*´艸`*)キャッ

2巻も、もりもりに加筆しています。(笛路比)
フェルモたんの話とか、子供たちとかもちょい出てくるよ☆
ぜひぜひ、お手元に迎えていただけると幸いです。

各種電子書籍サイトで販売されますが、一例としてリンクボタンも置いておきます。


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▷▶▷ honto

▷▶▷ ピッコマ

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