55:明日は、決戦。
浴後、ソファに座りナイトティーを飲んでいましたら、隣室との繋ぎの扉がノックされました。
ルネにヘンドリック殿下の入室を許可していいか聞かれました。
「どうぞ」
扉の隙間からひょっこりと顔を出したヘンドリック殿下。何故かホッとした表情です。
「大丈夫そ――――っ、また夜着かっ!」
何やら心配してくださっていたようなのですが、夜着の方が気になったようです。
そして、せめてガウンを羽織ってくれと両手で目を覆って言われました。
ルネが慌てて持ってきてくれたガウンを羽織り、胸元をしっかりと閉じ、ヘンドリック殿下に声を掛けました。
「もうちょっと、こう…………気をつけて……」
「はい」
耳を少し赤くしたヘンドリック様がなにやらモショモショと呟いていますが、最後の方はよく聞き取れませんでした。
「それよりも、なにか御用でしたか?」
「あ、うん。夜会では頑張ったね」
ソファに移動した直後、頭をよしよしと撫でられました。そして、明日のために早く寝たほうがいいだろうが、どうしても話しておきたかったと。
見たくないものを見せられ、我慢したくないであろうことを我慢して、私の心が心配だったとのことでした。
ヘンドリック殿下の優しさが染み入ります。
「全ては、明日のためです」
「ん、君は強い。明日はずっと側にいるから、存分に戦いなさい」
「はい!」
ヴァイラントのことも、殿下のことも、使いまくっていい。もし、手助けが必要なときは言うようにと。
なるべくそうしたくはないのですが、どうしても頼らざるを得ない事態にはなるでしょう。
「明日の流れは大丈夫?」
「ええ。完璧に頭に入れています」
会議が始まり、ヘンドリック殿下が契約の更新を破棄する旨を伝えたあとからが、私の戦場です。
何を言われようと、何をされようと、何が起ころうとも、絶対に望む結果を掴み取ります。
「はい!」
ヘンドリック殿下とお休みを伝えあいました。おでこにお休みのキスをいただいて、なんだかゆっくりしっかりと眠ることが出来そうです。
――――明日は、決戦です。





