51:統治者として、学ぶ。
講師たちから受ける授業は、とても興味深いことばかりです。
帝王学に関しては目から鱗といいますか、初めて知ることも多く、講師のバルリエ侯爵閣下を質問攻めにしてしまっています。
「統治者として抜け落ちてしまいがちなものですか。そうですね――――」
コミュニケーション力を疎かにする者がいる、とバルリエ侯爵閣下が仰いました。
どんなに統率力があろうと、経営力があろうと、コミュニケーションを大切にしない者は大抵が行き詰まり失態をおかすのだそうです。
また、ストレス耐性がない者も同じなのだとか。
「ストレス耐性ですか…………」
自分にあるのかと考えましたが、あまりないような気がします。
転ばぬ先の杖を用意したい派ですし、小さなゴールや逃げ道をいつも用意していますので。
「ふむ。ティアーナ嬢は自分に合ったメンタルコントロールをちゃんと理解していますな」
「そうでしょうか?」
ヘンドリック殿下と小さな衝突やすれ違いを起こし、泣いたり心を閉ざしかけたりしました。
ストレスに強いとはあまり言えない気がします。
それに対して殿下は、コミュニケーションをとても大切にされています。ちゃんと話し合おう、伝え合おうとよく言われますから。
ストレス耐性に関しては、まだ知らないところも多いのでなんとも言えません。
「そうですなぁ。殿下は……まぁ、あのご両親ですから。どうやってもそこを伸ばさざるを得ませんでしたからなぁ」
バルリエ侯爵閣下が昔を思い出したようで、苦笑しながら話し始めました。
侯爵閣下は、ヘンドリック殿下が幼い頃から教育係を務めていたそうです。
幼い頃の殿下は、可愛らしかったのでしょうか?
それとも今と同じように格好良かった?
とても気になります。
「そうですなぁ――――」
五歳になったばかりの頃は、女の子と見紛うほど可愛かったそうです。そして引っ込み思案で、慣れた相手にしか心を開かなかったそうです。
今しか知らない私には、わりと衝撃でした。
――――引っ込み思案?
あんなに堂々とされていて、誰とでも笑顔で話されているのに。
後天的に取得できはするのでしょうが。当たり前にされている姿を思い浮かべられるほどに、自分のものにされているということ。
「殿下は努力家なのですね」
「ええ。本当に、凄いお人ですよ」
柔らかく微笑んだバルリエ侯爵閣下につられて、私も微笑み返しました。閣下とお話するのはとても楽しく、穏やかな時間が過ぎていきます。
「おっと、もうこんな時間ですか。ではまた明日」
「はい! 本日もありがとうございました」
次は、ダンスの時間です。





