48:マシュマロのよう。
「ん。それでも……というのは、わがままが過ぎるな。すまなかった」
密着していた身体をするりと離したヘンドリック殿下に、少しだけ淋しさを感じた瞬間でした。
膝裏と背中に腕を回され、ひょいと抱き上げられていました。
「ひゃっ!」
「脚は大丈夫?」
「っ、はい」
脚は大丈夫です。膝や足首に力が入らないだけなので。
ただ、心臓が爆発しそうです。
重たくないかなとか、密着してるとか、顔が近いとか、殿下の手がちょっとだけ横胸にあたっているなとか、いろいろと気になることが多すぎて、落ち着きません。
「…………うん」
キュッと縮こまって、恥ずかしさを堪えていたら、なぜかヘンドリック殿下がスンとなりました。
ゆっくりと運んでもらい、ソファに下ろしてもらえたのでお礼を伝えたのですが、スンとした表情のまま。
「殿下?」
「……うん」
殿下が左手をじっと見ながら握ったり開いたり。ワキワキと動かしてキュッと握って、また開いて。
「…………マシュマロ」
「っ!?」
手がちょっとあたってるなとは思っていましたが、わりとガッツリ横胸を触っていたのですね!?
横にあったクッションを胸の前で抱きしめ、ヘンドリック殿下から胸を隠すようにしましたら、殿下が焦ったように弁明を始められたのですが、それがあまりにもしどろもどろ過ぎて、最後には大笑いしてしまいました。
「っ、笑うな……」
「ごめっ、ごめんなさい、無理ですっあはははは!」
ヘンドリック殿下が顔を真っ赤にして「クソッ」と悪態をつくと、隣にドサリと座って来られました。
「格好悪い。ものすごく、格好悪い……」
「ヘンドリック殿下は素敵ですよ。いつでも私を前向きに、上向きにしてくださいますから。今も。たくさん笑わせてくださいました」
ありがとうございますと伝えると、ヘンドリック殿下がほにゃりと笑って手を繋ごうと言われました。
差し出された左手に右手を重ねると、力強く握りしめられました。
「すれ違いが起きようと、喧嘩をしようと、君のこの手を支えるのは私でいたい」
「はい」
「言いたいことを言い合える関係でいたい」
「っ……努力、します」
どうしても、自分の中でぐるぐると考えてしまいます。
「すぐに話してくれとかではないんだ。ただ、今日はそのままにしておきたくなかったから……無理に押しかけてすまなかった」
「いえ。こうやってお話できてよかったです。その、王城を出て少しだけ心細かったので」
「っ! 可愛いが過ぎるぞ?」
「ええ?」
良く分からない理由で、何故かお仕置きという名のキスをされました。
ヘンドリック殿下は、キスがとてもお好きなようで、何度しても足りないと、いじけたようにおっしゃいました。





