4:弔う。
まずやったことは、両親と妹の埋葬。
ヘンドリック殿下のご厚意で、貴族用の埋葬地で眠らせることになりました。
参列者は私と殿下のみ。
葬儀はヴァイラント式でいいのかと聞かれましたが、ほぼ変わらないので、大丈夫だとお伝えしました。
牧師様を呼んでいただけ、祈りまで捧げていただけるとは思ってもいませんでした。
それぞれの墓標に花を添え、心の中で誓います。
――――必ず報いを受けさせます。
悪魔に魂を売ろうとも、どれだけの人になにを言われようとも。その結果、誰が処刑されようとも。
絶対に私は止まりはしない。
「身体に障る。そろそろ戻ろう」
「はい」
ヘンドリック殿下に支えられながら松葉杖をつき、馬車に乗り込んで王城に戻りました。
先ずは、怪我を治すことから。
ヘンドリック殿下とそう約束しました。
しっかりと食事を取り、よく眠り、ちゃんと治療を受け、体力を落とさぬようリハビリをする。
あの日、私が寝かされていたのは王太子妃専用の私室。夜中に戻ったため直ぐに使える客間がなかった、と言われましたが、果たして本当にそうなのでしょうか? なんてことは、流石に聞けませんが。
彼の優しさに甘えて、いまもなにも言わずにお部屋を使わせてもらっています。
「では次は明後日に参りますね。二ヵ月は動かされませんよう」
「はい」
王城勤めのお医者様をわざわざ部屋に呼んでくださり、診察と治療までも受けさせてくださいます。
足の骨はたぶん元には戻らないとのこと。
今は骨がくっつくのを待つばかり。その間に折れていない方の脚や上半身の運動を欠かさないようにと言われました。
夜に時間がある際は、ヘンドリック様が今日あったことなどを話しに来てくださいます。
「ベッドの上から申し訳ございません」
「いや、夜分に来た私が悪い。動かなくていい」
ヘンドリック様がレターデスクのイスをベッド横に置き、そこにゆっくりと腰掛けられました。
「やはり、杖になるか」
「はい。そのようです」
「辛いな」
ヘンドリック様が痛ましそうなお顔で、包帯でぐるぐる巻きにされた私の左脚をそっと撫でられました。
寄り添うように、穏やかに話してくださるヘンドリック様のおかげで、心を病まずに済んでいるような気がします。
「ありがとうございます」
「ん?」
「ヘンドリック様とお話すると、心が軽くなります。だから、ありがとうございます」
「っ――――! 君は……いやいい。ゆっくり眠りなさい」
少し照れくさそうなお顔になったヘンドリク様が、赤い髪をふわりとなびかせて自室へと去っていかれました。
感謝してもしきれなくて、何度も何度もお礼を言いたいのですが、彼は気にするなと言うばかりです。
私がお返しできるのは、私の中にある知識のみ。
とにもかくにも、早く怪我を直してからですね。