28:ヘンドリック殿下が呼ばれた理由。
国王陛下がヘンドリック殿下に、自分の横に座るようにと言ったのですが、ヘンドリック殿下は私の横に座ってしまいました。
「おやおや。反抗期か?」
「そういう煽りはいりません」
「ティアーナ嬢が困っているぞ」
「…………でしょうね」
「ふっ」
なぜにこうも国王陛下は楽しそうなのでしょうか?
そして、楽しそうな国王陛下とは反対に、ヘンドリック殿下は真顔です。
ただ、膝の上に乗せていた手をそっと撫でてくださいました。大丈夫だというように。
「見せつけてくれるなぁ」
「っ!?」
角度的に国王陛下からは、ガゼボのテーブルで隠れて見えないかと思ったのですが、どうやらしっかりと見えていたようです。
慌てて引き抜こうとしたのですが、ヘンドリック様は気にしていないというか、見せつけるためだったようで、ぎっちりと握りしめられてしまいました。
「で、話とは?」
「あぁ、ザンジルから捜索依頼が出ている」
「は?」
「正確には、ザンジル国王とザンジル王太子の連名でな。ティアーナ嬢たちが入国していないか調査をしてほしいと」
私を探している?
私というか、私たち家族を?
「国外追放は重すぎるので、もう一度しっかりとした調査をしてから罪状を確定させたい、と書いてあった」
「――――罪状」
私たちが何をしたというのでしょうか? 罪を着せておいて、国外追放しておいて、探している? しかも、結局は罪を着せるのですよね? なんのために?
「書面はそうだったが、みつけた場合は王太子宛の私信の中にティアーナ嬢の情報を紛れ込ませて欲しい、と走り書きが加えられていたところを見ると、内部分裂を起こしているようだぞ」
「王太子殿下が……?」
ザンジルの王太子殿下は、気弱なザンジル国王に似てはいるものの、国王よりは為政者らしい芯の強さがある方です。
弟の婚約者だからと、誕生日には花束を家に送ってくださる気づかいもできる方でした。
「――――ティアーナ、それは、気づかいじゃない」
「え?」
「んはははは! 全力の下心だな!」
「ええ!?」
見事なほどに伝わってないなと、国王陛下は大笑い。ヘンドリック様は苦笑い。
ただの気づかいだと思うのですが、お二人ともがそう言われるのなら、そうなのかもしれません。ちょっと信じられませんが。
「下心がなければ、走り書きを加えてまで君を助けようとはしないよ」
「……渡しませんからね?」
「ヘンドリックの意見は聞いていない。ティアーナ嬢、どうしたい?」
どうしたいと聞かれても、いきなり過ぎて頭が混乱中です。





