27:国王陛下とガゼボで。
国王陛下の『王族専用』という言葉に、焦りを感じていたのですが、陛下はくすくすと笑うばかり。
「真面目だねぇ」
「そういうことではないような?」
「ほら、あそこのガゼボに座ろう」
陛下が話を聞いてくれません。
そして、とても楽しそうです。
ひまわりやマリーゴールドといった夏の花が咲き誇るガゼボのベンチに、陛下と向かい合って座りました。
「ルネ」
「はい」
私についてくれている侍女の名前を陛下が呼ぶと、彼女がカーテシーをしてどこかに行ってしまいました。
「せっかくだ、お茶をしよう」
「はい」
――――あぁ、取りに行ったのね。
ルネが戻るまで少し話をしようと言われたので、頷きつつ返事をすると、またにこりと微笑まれました。その笑顔がとても為政者らしい顔すぎて、妙に緊張してしまいます。
「嵌めるつもりはなかったんだが、そう思わせてしまったね」
「……いえ」
「君らの関係が気になってね。老婆心だと思ってくれ」
――――そんな無茶な。
「ヘンドリックは真剣なようだけど。君は? と、ストレートに聞いてみようと思ってね。怒らないから、正直に言ってごらん。この返答で君をどうこうすることはないと約束しよう」
「っ…………」
甘言だと突っぱねてもいいし、自分の都合の良い形で答えてもいいのでしょうが、それをしてしまったら、ヘンドリック様の目を真っ直ぐ見れなくなるような気がしました。
あと、妙に子ども扱いされているのは、なぜでしょうか。いえ、陛下にとっては完全に子どもなのでしょうが。
「正直に申しますと、未だハッキリと断言できない部分があります」
「ふむ」
「私の存在が、どこまでこの国に悪影響を及ぼすのか不安です」
「んー。気にしないでいいよ。それ以外は?」
「一時的な感情ではないかと…………。吊り橋効果のような」
「なるほど。それはヘンドリックの誠意の問題だね。うん」
陛下が立ち上がり、私の頭に手を差し伸べて来られました。そうして撫で撫でとまたもや子どものような扱い。でも今回はなんとなく嬉しい気持ちも。
お父様にまた撫でてもらいたい。もう、叶うことはないけれど。
それからは、ヘンドリック殿下の幼い頃の話を聞きました。研磨技術の話は少しだけ。そうこうしている内に、侍女――ルネが数人のメイドたちと戻ってきました。それぞれが飲み物や焼き菓子を乗せたお盆を持っています。
そして、その後ろにはヘンドリック殿下が。
「ずいぶんと遅かったな」
「執務中に呼び出されたわりには、早かったと思いますが…………」
陛下はルネに何も言わなかったのに、彼が『呼び出された』と言うということは、最初から仕込まれていたのでしょう。
先ほど陛下と色々と話したおかげか、怒りのようなものは感じないものの、なんとなく淋しさのようなものは感じてしまいました。
それにしても、陛下はなぜヘンドリック殿下を呼び出したのでしょうか?





