表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
私って悪役令嬢ですわよね? 〜全てを奪われた令嬢の逆襲〜  作者: 笛路 @書籍・コミカライズ進行中


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

19/63

19:出したくない答え。

 



 部屋に押し入るように入って来たヘンドリック様。

 彼に抱き締められたままで、既に数分が経った気がします。

 すまないと謝られましたが、何に対してなのか、なぜ抱き締めたままなのかがわかりませんし、何も言ってはくださいません。


 ただ、彼の体温であろうぬくもりや、鼻腔をくすぐるスパイシーな甘さに嫌な気持ちは一切感じませんでした。

 杖をついた左手とは違い、宙ぶらりんな右手をどうしたらいいのか分からず、悩みに悩み抜いて、ヘンドリック様の背中にそっと回した瞬間、ビクリと震えられてしまいました。


「っ!」


 それはまるで、引っ付いた何かを剥がすように。

 私の肩をガッチリと掴んで、勢いよく押し退けられてしまいました。

 明らかな拒絶の反応に、鼻の奥がズンと重くなります。


 何度目でしょうか?

 ほんの少し芽吹いては、萎れ。

 ほんの少し成長しては、また萎れてしまう。

 勘違いしてはだめだと思うのに、簡単に期待してしまう。 

 

「……………………勝手に触れて…………申し訳、ございません……でした」


 震える唇から出た声は、あまりにもか弱く、唇と同じくらいに震えてしまっていました。

 まるで、泣きそうな声。頼りなく甘えを含んだ声。

 悪役令嬢になると決めたのに。


「っ、あ……違う。勝手に触れたのは私だ」


 でもそれは、ふらついた私を助けるためだったはずです。それに甘えたのは私。


「ソファに座ろう。脚に障る」

「…………はい。ありがとう存じます」


 腰に腕を回され、ソファに(いざな)われました。そして、そのまま隙間なく二人で寄り添って座ったところで、やっと違和感に気付きました。


 ――――近い。


 いつもなら半身空けられるのに。

 いつもなら私を先に座らせて、左側に移動されるのに。

 今日は右側のまま。


 二人の間にある私の右手を、ヘンドリック殿下が持ち上げました。そして薬指の根元をゆるりと撫でています。

 薬指にはアロイス様との婚約指輪をはめていたのですが、馬車での事故の際に強く打ち付けて痣になっていました。

 今はずいぶんと薄れてはいますが、まだ黄色というか黄緑というかの、微妙な色になっています。


「殿下?」

「愛していた?」

「え……」

「あの王子だ」

「アロイス様です――――っ?」


 アロイス様の名前を出した瞬間、手がギュッと握りしめられました。


「っ、すまない」


 慌てたように手を離されてしまい、ぽっかりと心に穴が空いたような気持ちになりました。


 この人はなぜ、こんなにも触れて来るの?

 私はなぜ、触れないでと拒否しないの?

 なぜ、こんなにも期待させるの?

 なぜ、期待してしまうの?

 

 湧き続ける疑問。

 出したくない答え。

 それらがぐるぐると頭の中で嵐を起こしていました。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

◇◆◇ 書籍化情報 ◇◆◇


『結婚前夜に義妹に婚約者を奪われたので、責任取ってもらいます。』

☆ 2巻 6/20発売 ☆

書籍表紙

なんと!
超絶素敵な表紙絵を描いてくださったのは、『おの秋人』様っ!
このラブラブ具合、神じゃね?(*´艸`*)キャッ

2巻も、もりもりに加筆しています。(笛路比)
フェルモたんの話とか、子供たちとかもちょい出てくるよ☆
ぜひぜひ、お手元に迎えていただけると幸いです。

各種電子書籍サイトで販売されますが、一例としてリンクボタンも置いておきます。


▷▶▷ Amazon

▷▶▷ honto

▷▶▷ ピッコマ

― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ