12:王妃陛下とお茶会。
「確かに、私は犯罪者として国外追放されました」
「…………」
ヘンドリック殿下の婚約話を私が潰した、と謂れのないことで王妃陛下に責められてしまいましたが、私は何も知りません。そこだけは理解していただきたいです。
「未来の王太子妃のお部屋だということも、承知して使わせていただいております」
「……厚顔無恥もいいところね」
「殿下の婚約の件ですが、いま初めて知りました」
そうお伝えすると、切れ長の瞳でチラリと見られ、鼻で笑われました。
王妃陛下がティーカップを傾けられたので、合わせて少し口に含みました。
「後ほど殿下に事実確認いたします」
「あら、確認なんてまどろっこしいことしてないで、出てお行きなさいな」
「王妃陛下。お言葉ですが、現在ヘンドリック殿下とともに宝石研磨技術を革新させるために動いております」
王妃陛下はだからなんなのといった具合で、あまり興味がなさそうな反応をされました。
「たかだか一介の元伯爵令嬢に何ができるの」
「そうですね。ザンジルと同じもしくはそれに近い技術は得られると確信しております。その技術が職人たちに定着すれば、この国はザンジルに頼ることなく各国との宝石類の取引が可能になります。ご聡明であられる王妃陛下でしたら、どれだけの金額が動くか、分られますよね?」
流石にこのままでは煽りに煽っただけですので、王妃陛下に嫌われてしまうでしょう。それは得策ではありません。
なのでここはひとつ、偶然ではありますが、王妃陛下に有効なカードを出したいと思います。
「王妃陛下、たしかブリリアントカットのダイヤがとてもお気に入りでしたよね?」
自国はもちろん、他国の王族たちの好みの宝石や好みのカットなどを纏めたファイルが我が家にはありました。ファイリングはしているものの、全て覚えておくようにとお父様に言われていました。
覚えるのはとても大変でしたが、そのおかげでいま戦えています。このような使い方をするとは想定していませんでしたが。
「だから何よ」
「先日、百面を超えるカット技術を職人たちに伝えました。彼らはいまそれをモノにしようとしています。殿下が王妃陛下のためにと望まれ、彼らもそれに賛同しています」
王妃陛下の片眉がクイッと上がりました。これはちょっと心が動いていますね?
「私を排除するのは簡単です。捕まえてザンジルに渡せばいいだけです。真の売国奴だ、と。ですが、それで得られるものは何でしょうか? ザンジルからの感謝? 謝礼? そんなものがこの国の為になるでしょうか?」
「小指の爪程度の効果しかないわね」
フッと笑われた王妃陛下から漏れ出たのは、ザンジルに対する嫌悪感。あの国は宝石関係で各国にずいぶんとふっかけていましたから、当たり前の反応かと思います。
「ええ、ザンジルはその程度です。それよりも、この先の国力強化になるであろう技術、殿下の王妃陛下への心遣い、それらを享受しませんか? もし成果を見てからと仰られるのであれば、一カ月お待ち下さい。それまでに王妃陛下が満足する作品をお持ちします」
「いい度胸ね、気に入ったわ。ヘンドリック、来なさい」
――――え?





