11:呼び出し。
どうにかこうにか、ヴァイラント両陛下とヘンドリック様との夕食を終えた翌朝でした。
いつものように殿下付きの侍女に身支度を手伝ってもらっている時に、王妃陛下からの手紙が届きました。
「お茶会…………奥の庭園?」
「お時間はいつでしょうか?」
「えっと、十四時と書いてあるわ」
侍女が少し考えたあとに、昼は軽めに取るよう言ってきました。
よくはわからないものの、この侍女は絶対に必要なことしか言わないので、本当にそうしたほうがいいのでしょう。
昼食を終えてすぐにお茶会の準備に取り掛かりました。
着ていくドレスを決め、髪を綺麗に結い直し、お化粧も。
何も持たない私に、ヘンドリック殿下が日々の着るものを用意してくださっていました。まさか、お茶会や夜会用のドレスまで用意してくださっているとは知らず、衣装ルームを見て驚きました。
「宝石も…………」
「黄色のドレスですので、ここらへんがよろしいかと」
そういう意味ではなかったのですが、王妃陛下とのお茶会ですから、着けなければならないのでしょう。
薄めのエメラルドグリーンのジュエリーセットがありましたので、それにしました。黄色との相性が良いですし。
「お招きいただき、ありがとう存じます」
「……………………お座りなさい」
燃えるような赤い髪をきっちりと纏め上げた王妃陛下が、私の頭の先から足先までなぞるように見たあと、低い声でそう仰いました。
勧められた席に座ると、侍女たちがお茶やお菓子の準備を始めました。それが終わり、王妃陛下がお茶に口をつけられたので、私もカップの取っ手に手を伸ばした時でした。
「貴女、何を考えていらっしゃるの?」
「え…………」
作法が違ったのかと焦りましたが、どうやら話はそこではなかったようで、王妃陛下が大きなため息を吐き、カップをソーサーに戻しました。
「あの部屋はね、王太子妃の部屋よ?」
「はい」
私が使わせていただいてる部屋のことですね。
「隣国の犯罪者を匿っているというだけで、こちらとしては損しかありませんのに。ソレが、堂々と王太子妃の座に収まろうとしているなんて。醜聞以外の何でもないわ。しかも進んでいた婚約の話も反故にさせるなど。悪役令嬢もいいところね」
「っ…………」
そうではないと言いたい。ですが、現状はどう見てもそうとしか見えません。
ただ、ひとつだけ知らないことがありました。
『婚約の話も反故にさせる』
これだけは知りません。
いつ、なぜ、誰と?
ヘンドリック殿下がそう王妃陛下にお伝えした? ですが、彼はそんなことをするような人には思えません。だとすると、別の人物からそう聞いた?
分からないことだらけですが、今はお茶会中。王妃陛下を不機嫌にせずに終わらせることだけに集中しようと思います。





