碧の神話
「なんと美しい惑星でしょう」
美の星金星の伝承者の感嘆めいた言葉に、その場にいた者たちは深く頷いた。
「母君様も穢れなき御方だった。その御方がお産みになられたのですから、その御子も斯くあるのでしょう」
「確かに。宇宙がお許しになられただけのことはある」
闘争の星火星の伝承者は厳しく言った。
「だが、そのために吾らの神は死に給うた。吾らの惑星は光を失った。吾らの民は宇宙の御心へ還った」
「仕方ありません」
調和の星海王星の伝承者は哀しげに首を振った。
「吾らの神は全てを承知で受け入れられた。死は新たな命の誕生です。やがて、この惑星に宇宙の御心となった吾らの民の魂が集うでしょう」
「そのとおりだ」
知恵の星木星の伝承者は重々しく呟いた。
「吾らの神の御魂もまた、この惑星で新たなる現身を得られることであろう。ゆえに、吾らは見守らねばならぬ」
「それこそが、吾らの使命」
正義の星水星の伝承者は高らかに言った。
「必ず、遂げなければならない」
繫栄の星天王星の伝承者は頷いた。
「吾らの心を、分け与えなければならない」
「彼の惑星へ。魂の還元を」
黄泉の星土星の伝承者は囁く。
「惑星を受け伝える者の心と魂を、碧なる惑星へ」
「見るがいい、皆よ。黄金の流れが、惑星に寄り添っている」
運命の星冥王星の伝承者は促す。
「あれこそが、新たなる伝承者。母君様と共に消失した、愛の伝承者の次なる姿。吾らも行かねばならない」
生命の星太陽の伝承者は皆を見渡した。
「あの輝ける光に導かれ、碧なる神のもとへ、吾らも集うのだ。愛の惑星を母に、破壊の彗星を父にして、この大いなる宇宙に誕生せし惑星へ」
――希望の守護神の星へ。
やがて、九つの星は翔けていき、魂となって地球に降り立った。