残酷な童話の群れ
寓話です。
みちがある。
まっすぐにのびていて、たいらできれいなみち。
あたしのみちだ。
すぐにわかった。
あたしがあるくためのみちなんだ。
さあいこう。
かったばかりのあかいくつで。
このみちならきっとよごれない.。
「かわいそうに、おじょうさん」
しばらくして、うしろでこえがした。
ふりかえってみると、はなれたところでみちをほっているおとこのこがいる。
「きみはそのみちしかすすめないんだ。すでにできあがっているみちをあるくだけなんだ。とてもかわいそう」
「どうして?あたしのためのみちなのよ」
「そうだよ。きみはあるくだけなんだ。ずっと、ずっと、みちがおわるまでずっと」
そういっておとこのこはみちをほる。
あたしのみちはとおくまでのびている。
おとこのこのように、すすむためにみちをほらなくてもいい。
そんなことをしたら、あかいくつがよごれてしまう。
あたしはあるいた。
のっぽのおにいさんや、かみのながいおねえさん、こしのまがったおじいさんたちともすれちがった。
みんなひっしになってみちをほっている。
そうしないと、まえへすすめないから。
あたしはあるいた。
どこまでもどこまでもみちはつづいている。
たいらできれいなみち。
あるいてもあるいても、なにもかわらなかった。
ずっとずっとおなじ、あたしのみち。
だんだんとあきてきた。
おなじおなじおなじ。
あたしのためのみち。
でもあたしがつくったわけじゃない。
とうとうすわりこんでしまった。
もうおとこのこのすがたはみえない。
あかいくつはきれい。
でもなにもかわらない。
あたしのみち。
あたしがあるくためのみち。
どこまでつづいているの?
おわりまであるかなきゃいけないの?
まわりをみわたした。
どうしてあたしひとりなの……