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英雄たちの物語 -The Hero's Fantasy-  作者: おおはしだいお
第3章 帝国との戦い
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第97話 早すぎる襲撃

 作戦会議を行った次の日の早朝。

 星の英雄たち(スター・ヒーローズ)は早くも出発日を迎えた。

 僕たちは、本隊よりも一足早く帝国に向けて出発する。

 早朝にもかかわらず、アポロ氏を始めとするセラフィー公爵家の面々が僕たちをお見送りする。


「ではセラフィー公爵、僕たちは先に出発します」

「ああ。頼んだぞ、ファイン君」

「お父様、いってきます」

「ああ、気を付けて」


 僕たち4人は馬に乗り、旅路に就く準備をする。


「じゃあね、ルナ。気を付けて」

「気を付けて」

「またな、ルナ!」

「お姉様、またね!」

「みんな、ありがとう!」


 兄弟たちが手を振ると、ルナも手を振り返した。

 そんな彼らを背に、僕たちはいよいよ出発した。


 王都エストを出ると、針路を北西にとる。

 僕を先頭に、星の英雄たち(スター・ヒーローズ)は馬を走らせる。

 馬を使えば、大体10日くらいで国境の山の麓に着くはず。

 しばらくは弾丸列車(ブレットトレイン)の高架橋と並走する。

 時折、列車が高速で通過する音が聴こえる。

 それにしても、人々はよくこんな高度な物を造ったなと改めて感心する。


 そして、出発から30分程して森林地帯に入る。

 ここは、昨日オーク退治を行った場所だ。

 森林地帯には、モンスターが棲息している。

 安全に移動するなら迂回するべきだが、少しでも急ぎたいので森林地帯を突っ切って行く。

 途中、何度かモンスターと遭遇した。

 しかし、戦っている時間が惜しいので、歯牙にもかけずに進んでいく。

 そのため、順調に森の中を進んでいる。

 ところが、しばらく進んでいると、アクシデントに遭った。


「お前らが星の英雄たち(スター・ヒーローズ)だな?」


 運悪く、賊に遭遇してしまったのだ。


■■■■■


 僕たちは、賊に行く手を阻まれてしまった。

 数えただけでも10人以上はいる。

 剣や弓などで武装しており、中には魔法使い(メイジ)もいるようだ。

 そして、僕たちのことを知っているということは、何者かに雇われた【傭兵】のようだ。

 十中八九、帝国の差し金であろう。

 しかし、いくらなんでも動きが早すぎる。

 一体、どこで僕たちの情報を聞きつけたのか?

 考えてもしょうがないので、僕は賊のリーダーらしき人物に質問してみることにした。


「何者だ? 誰の差し金で動いている?」

「死んでいくてめぇらに、教える必要はねぇんだよッ!!」


 そう言って、賊どもはいきなり斬りかかってきた。

 質問に答えるとは思っていなかったが、攻撃して来るなら仕方がない。


「みんな、奴らを無力化するぞ」

「ええ」

「おうっ!」

「ただし、全員は殺すなよ。奴らに聞きたいことがある」

「了解!」


 僕が指示を出すと、仲間たちは武器を構えた。

 賊どもは、剣や斧を持った前衛が突撃してくる。

 そこで僕は、馬で接近しつつ風斬刃(ウィンドブレイド)で離れた位置から敵を攻撃する。近づいてきた3人を切り刻んだ。

 そして、後方にいる詠唱中の魔法使い(メイジ)に肉薄し、容赦なく首を斬った。


氷結剣(アイスブランド)!」


 ルナは得意の氷結剣(アイスブランド)を放ち、3人ほど倒した。

 そして、馬で敵陣に突っ込みつつ、敵を次々と斬り捨てて行く。


「おらおらおらおら! どけどけぇ!!」


 ヒューイは馬を降り、自らの足で走りつつ、斧で次々と敵を薙ぎ倒していく。

 すると、後方から矢が飛んで来た。

 弓使い(アーチャー)が後方にいたのである。

 しかし、矢はヒューイに着弾する前に、地面に墜落した。

 そう、セレーネが結界(バリアー)でヒューイを守っていたのである。

 一方、ヒューイもセレーネを信じて突撃していたようである。

 そして、ヒューイに肉薄されたアーチャーは成す術もなくやられていった。


「な、なんだこいつらは……化け物か!?」

「だ、だめだ……まったく歯が立たねえ……う、うわあああああ!!」


 敵わないと悟った賊が何人か逃げ出した。


「逃がすか!」


 しかし、帝国軍に僕たちのことを伝えられるわけにはいかない。

 僕は逃げ出す敵に対して、風斬刃(ウィンドブレイド)を放った。

 賊たちの首はそのまま飛んで行った。

 僕たちは、賊どもを何なく倒した。

 ただし、質問したいことがあるため、リーダー1人だけ生かしている。


「さて、お前に質問したいことがある。お前たちは帝国に雇われた【傭兵】だな?」

「へッ、死んでも言うかよ!」

「そうかい」

「グァッ!!」


 僕は稲妻矢(サンダーアロー)で、傭兵のリーダーを躊躇いなく殺した。


「えっ、殺しちゃうの?」

「ああ、生かしておいて僕たちのことを誰かに喋られたら面倒だ。それに、知りたいことはもうわかった。こいつらはやはり帝国に雇われた傭兵だ」

「どうしてそれがわかるの?」

「こいつは先程、『死んでも言うかよ』と言った。死んでも……即ち、僕たちにそれを喋ったら雇い主に殺されるのだろう」

「すごい、よくわかるわね」


 帝国は、僕たちを何としてでも倒しておきたいようだ。

 しかし、傭兵たちは殲滅したので、新手が来るにしても時間がかかるはずだ。

 まだ旅は始まったばかりだ。

 こんなところで足を止めるわけには行かない。

 僕たちは、旅を再開するのであった。


■■■■■


 帝国城の玉座の間にて。

 炎のヴォルトが、皇帝ゴスバールに謁見していた。


「陛下、私に出撃の許可を! 私が軍勢を率いて星の英雄たち(スター・ヒーローズ)を討ち取って御覧に入れましょう!」

「うむ。頼んだぞ、ヴォルトよ」

「ハッ! ありがたき幸せ!」


 炎のヴォルトは一礼すると、玉座の間を後にした。

 その横では、もう一人の男が立っていた。

 その名は、光のレオナルドである。

 レオナルドは、皇帝に向かって唐突にこんなことを言い出した。


「陛下、戦をやめていただけませんか?」

「なに?」

「この戦いに何の大義がありましょう。18年前の王帝戦争で、初めこそ帝国が有利でしたが、結局惨敗しました。このままでは、また18年前と同様の惨劇を繰り返すことになります」

「18年前の戦争で帝国が敗北したのは、先代皇帝……即ちワシの父上の力不足が原因だったのだ。しかし、ワシは違う。ワシは“力”を手に入れたのだ。誰だろうと、ワシに敵う者はおらん。今回の戦では、我らが必ず勝つ。この戦に勝ち、ゆくゆくは世界を支配する。それこそが、ワシの“大義”なのだよ」

「勝ち負けの問題ではございません! あなたは、また悲劇を繰り返させるおつもりか?」


 レオナルドは、皇帝ゴスバールを糾弾する。

 そして、右腕を前に出した。

 レオナルドの右腕は義手であった。


「王帝戦争の時、私はとある男と戦い、右腕を失いました。九死に一生を得ることができましたが、引換に当時の部下が私の代わりに犠牲になりました。今もそうです。前線では若き兵士たちが、志半ばで次々と命を落としてます。彼らは好き好んで戦争をしている訳ではありません。それは帝国だけではありません。敵対する他国の兵士たちも同様です。そして、彼らが命を落とす度に幾度となく思います。『なぜ彼らなのか? なぜ老いぼれであるワシではないのか?』と。戦争をしたところで、ただただ多くの人命が失われるだけで、何の意味もありません! 陛下、もう一度申させていただきます。今すぐ戦争をやめていただきたい! さもなくば、敵味方問わず多くの命が失われる」


 レオナルドは、皇帝ゴスバールに戦争をやめるよう懇願する。

 帝国人でありながら、レオナルドは人格者で戦争を嫌う性格である。

 しかし、皇帝ゴスバールが下した答えは冷酷なものであった。


「くどいぞ、レオナルド! 戦はやめん! ワシは世界を支配するその時まで止まらぬ。例え、戦う術を持たぬ民の命が何人失われようともな。貴公のことは今日まで頼りにしてきたが、これ以上の無礼は許せんぞ。兵士たちよ、レオナルドをつまみ出せ!」


 皇帝ゴスバールの命令で、数人の衛兵たちがレオナルドを捕らえた。


「見損なったぞ、レオナルド。貴公がそのような“弱音”を吐くような男だったとはな」

「私もです、陛下。陛下がこれ程残酷だったとは」


 レオナルドは、皇帝ゴスバールを非難する。

 衛兵たちに連れられて、レオナルドは玉座の間から出された。


「グフフフフ、この力、手放すには惜しい“力”だ。もはや、止まる事など出来ぬ。何を犠牲にしようとも、ワシが必ず世界を支配してやろう!」


 ゴスバールは一人、不敵な笑みを浮かべた。

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