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英雄たちの物語 -The Hero's Fantasy-  作者: おおはしだいお
第3章 帝国との戦い
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第96話 反撃への第一歩

「みんな、城に来てくれ。国王陛下がお呼びだ」


 ノゾミと一緒に、オーク退治を行った日の翌朝。

 僕たちはセラフィー公爵に呼ばれた。

 今日は久々に国王ゼフィールから招集がかかったようだ。

 そのため、僕たちはセラフィー公爵と共に城へと向かった。

 向かったのは、会議室である。

 そこには、国王ゼフィールと大臣の他、軍の幹部らしき人たちが集っていた。


「失礼いたします。陛下、全員集まりました」

「うむ。ではこれより【帝国侵攻作戦】に関する会議を始める。各自空いている席に座るが良い」


 全員が着席すると、国王ゼフィール主導のもと作戦会議が始まった。


「それから、ファイン・セヴェンス以下【星の英雄たち(スター・ヒーローズ)】のこれまでの活躍を認め、今日から正式にローランド王国軍所属の特務部隊に任命する」


 僕たちは、国王ゼフィールの命令で正式に軍属として呼ばれた。

 もちろん、周囲からは戸惑いの声も上がった。

 しかし、軍の所属になろうが、そうでなかろうがやることは変わらない。

 王国の平和を取り戻すまでは、帝国と戦い続けるだけだ。

 僕はその場で起立し、国王に向かって一礼した。


「ありがたき幸せ。今後も陛下のご期待に添えるべく、努力する所存でございます」

「うむ、期待しているぞ」


 僕は再び着席すると、いよいよ作戦会議が始まった。


「さて、本題に入ろうか。知っての通り、3年前からグランヴァル帝国軍がローランド王国に侵略してきた。現在までの戦いでは、王国と帝国は一進一退である。このままでは埒が明かない。しかし、この状況を打開すべく、今度はこちらから帝国に攻めようと思う」

「同感です。これ以上、帝国の暴挙を許すわけにはいかない。今度はこちらから積極的に帝国に攻め込むべきでしょう」


 国王ゼフィールの意見に、セラフィー公爵が同意する。

 確かに、防衛しているだけでは今までと何も変わらないし、消耗戦になるだけである。


「ですが、国境の砦は未だ帝国軍の支配下です。ここを突破しない限り、帝国への侵攻は不可能でしょう」

「ではアポロよ。貴公が軍勢を率い、国境の砦を落としてくれるか?」

「お任せください」


 セラフィー公爵が率いる、王国軍本隊が国境の砦を攻略するという。

 つまり、正面突破を狙うという訳だ。

 ならば、僕たち星の英雄たち(スター・ヒーローズ)が出来ることは……。


「では、僕たちは“裏”から帝国を侵略することにします」

「なに? 裏から侵略するとは?」

「王国と帝国の国境は山脈地帯になっています。国境の砦よりも西側には、とある【山道】があります。しかし、この山道は非常に険しい上に、非常に強力な魔物が棲息しております。そのため、普段はこの山道を通って越境する者はいません。いわば“天然のバリアー”です」

「ふむ。確かに山道は存在するが……お主ら、まさか……」

「そうです。僕たちはこの山道を通り、帝国へと侵入します」

「なんと……!?」


 国王ゼフィールを含め、会議室にいる多くの人々が驚いている。

 ただ、僕の仲間たちを除いては。


「しかし、それでは……」


 セラフィー公爵が心配そうに口を開く。

 しかし、それを察したのかルナがセラフィー公爵の言葉を遮る。


「大丈夫よ、お父様! 私たち、こう見えても危険な場所へは何度も行っているわ! 何より、私たちはとても強いんだから!」

「しかし、ルナ……」

「大丈夫よ。私を……いいえ、私たちを信じて!」


 ルナの言葉を聞いたセラフィー公爵は、しばらくして決断を下した。


「わかったルナ、お前たちを信じよう。お前は誰よりも強い子だ」

「ありがとう、お父様!」

「では、決まりですね」

「うむ、では頼んだぞ」


 セラフィー公爵と国王ゼフィールの了承を得て、僕たちは侵攻作戦を実行することにした。


「しかし、帝国もおそらく同じ考えを持っていると思われます」

「なに? どういうことだ?」

「帝国軍の精鋭部隊なら、山道の強力なモンスターを容易く倒せる程の実力を持っているはずです。ならば山道を通り、こちらの意表を突いてローランドに奇襲を仕掛けてくるかと思います。それでは、防衛が間に合わないでしょう。そこで、僕たちがそいつらの迎撃も兼ねて山道を通るルートで行きたいと思います」

「なんと……」


 国王ゼフィールの顔が青ざめる。

 しかし、そんな国王とは対照的に、ヒューイは意気揚々としていた。


「つまり、帝国の強いヤツと戦えるってワケだな!? ようやくオレ様の本領発揮ができるぜ!」

「ですが、精鋭部隊と言うことは、今まで以上の強敵と戦うことになりそうですが……」

「ハッ、上等だぜ! どんなヤツでもかかって来やがれ! オレ様が全員ぶっ飛ばしてやらぁ!!」


 ヒューイは熱々しげに話すと、自分の胸をポンと叩いた。

 戦闘では、今まで以上に頼りになりそうだ。


「頼んだぞ、ヒューイ」

「おう、任せな!」


■■■■■


 僕たちは会議の後、セラフィー邸に戻り早速準備に取り掛かった。

 これから何日も……いや、下手したら何か月もの旅になるかもしれない。

 そのため、荷物はできる限り多く持って行かなくてはいけない。

 幸いにも、僕には魔法鞄(マジックバッグ)があるため、荷物をコンパクトかつ大量に持って行くことが出来る。

 着替えは普段よりも多く用意することにした。

 また、回復アイテム等の消耗品は、いつも通り多めに持って行くことにする。

 使うかどうかは分からないが、用心に越したことはない。


 王国軍本隊は軍を揃えるのに時間がかかるため、2日後の出発である。

 しかし、僕たちは少数精鋭のため、明日にでも出発するつもりだ。

 できるだけ早く出発したところだ。

 荷造りを行っていると、ルナが僕の横にやって来た。


「ねえ、ファイン。なぜ山道を歩くルートなの? ホウオウを使って空を飛べばいいじゃない」

「初めに言った通り、帝国軍迎撃のためと、王国騎士団本隊となるべく歩幅を合わせるために敢えて歩くことにしたんだ。それに、ホウオウで空から帝国に侵入したら、敵にバレる可能性が高いだろう?」

「そっかぁ。ファインは色々と考えているのね」

「まあね」


 僕は会話をしつつ、作業の手を止めない。

 すると、ルナが再び声をかけて来た。


「ファイン」

「ん?」

「頑張ろうね」

「ああ」


 ささやかながら、僕はルナからエールをもらった。

 これ以上、帝国の好きにはさせない。

 仲間や、世界の人々が平和に暮らせるように。

 どんな手を使ってでも、帝国の皇帝の野望を阻止してみせる。

 ここからが本番だ。

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