表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
英雄たちの物語 -The Hero's Fantasy-  作者: おおはしだいお
第3章 帝国との戦い
94/159

第93話 小さな侵入者

 皇帝の命により、とある人物がローランド王国の王都エストに侵入しようとしていた。

 その名は、ノゾミ・ノワールである。

 ノゾミは、帝国軍の特務部隊コウガ所属の忍者である。

 ノゾミの容姿は、色白の肌に赤い瞳である。

 黒色の髪を、シュシュでポニーテールに結っており、任務の時に邪魔にならないようにしている。

 身長は150cmで、年齢は14歳である。

 小柄な体躯を活かした素早い行動が得意である。


 【コウガ】には、敵地への潜入偵察を行うチームと、要人暗殺などを行うチームに分かれている。

 ノゾミは前者に属しており、モンスターを除いて殺しの経験は皆無である。

 ちなみに、組織でのコードネームは【夜桜】である。


 ノゾミは、実の両親がわからない孤児であった。

 10年前に帝国軍特務部隊【コウガ】の団長であるエリックが引き取り、ノゾミと名付けた。

 それからエリックは、ノゾミに忍者としての英才教育を施した。

 そして現在、ノゾミは組織内でも1、2を争う程の実力者となった。

 エリックは現在32歳で、自身もかつて孤児であった。

 彼を引き取ったのは、亡き前団長であった。

 その後、エリックは前団長の意志を継ぎ、現在の団長となった。


 ノゾミは偵察のため、義父のエリックや組織の仲間たちと共にローランド王国に来ていた。

 ノゾミとエリックは、旅人に扮して王都エストに侵入していた。

 コウガの他のメンバーは、ローランド各地に散らばって偵察をし、地形を把握しようとしている。

 すべては、帝国軍本隊がローランド侵攻を有利に進めるために。

 ただ、今回の目的は戦闘ではなく、あくまでも偵察が任務だ。

 そのため、戦闘は避けて極力危険は冒さないように行動する。


 王都エストにある、とある宿屋でエリックとノゾミは話し合っていた。


「今回の任務は、ローランド王国王都エストの偵察、及び王城内部だ。難しい任務だが、お前にならできるだろう」

「うん、わかった」

「それから、もう一つお前にやってもらいたいことがある」

「なに?」

「それは【星の英雄たち(スター・ヒーローズ)】と接触を図ることだ」

星の英雄たち(スター・ヒーローズ)との接触……」

「お前も一度は聞いたことがあるだろう。地のディーン将軍が占領したジャズナ王国を、たった一夜にして奪還した強者たちの話を。特に、リーダーであるファイン・セヴェンスは相当な切れ者だ。彼の存在は、我が軍にとっても厄介な存在だ」


 エリックは、ファインの似顔絵をノゾミに見せた。

 すると、ノゾミは二つ返事で了解した。


「わかった、頑張る」

「もし成功した暁には、飴玉をやろう」

「えへへ、楽しみ!」


 エリックがノゾミの頭を撫でると、無邪気な笑顔を見せる。

 ちなみに、ノゾミの性格は人懐っこく甘えん坊である。

 そのため、休日は近所の友達と遊んで過ごすことが多い。

 彼女も特務部隊である以前に、まだ年頃の女の子なのだ。


 その日の夜。

 ノゾミは城の内部を偵察するため、泊まっている宿を出ようとしていた。

 偵察任務へ行くに当たって、事前に動きやすいミニ丈の忍者装束に着替えていた。

 任務の時はいつも着ている服だ。

 加えて、護身用に二本のクナイと手裏剣を携帯した。


「じゃあお義父さん、行ってくるね」

「ああ、気を付けてな」


 ノゾミは義父・エリックに一言挨拶すると、出発して行った。


 ノゾミは城壁の外へ着くと、辺りを見回した。

 周囲に人がいないことを確認すると、壁をよじ登って中に侵入した。

 夜だけあって人出は少なく、城の敷地内にはあっさり入れた。

 そしてノゾミは窓の近くに行くと、魔法を唱えた。


解錠(アンロック)


 すると、鍵が開いたので、ノゾミは窓を開けて城内に侵入した。

 夜だけあって、城内は暗くてよく見えない。

 しかし、ノゾミは暗闇でも見えるように訓練を受けている。

 ノゾミはとりあえず、廊下を進むことにした。

 王都エストの城だけのことはあり、城内はかなり大きい。

 ノゾミは身軽で素早いため、万が一見つかっても走って逃げるだけだ。


(あっ、人の気配)


 ノゾミは前方から人の気配を感じた。

 隠れる場所がないため、隠密(ステルス)を使った。

 ノゾミは密偵であるため、当然この魔法が使える。

 そして隠密(ステルス)を使うと、壁に寄って立ち止まった。

 やって来たのは、一人の兵士だった。

 どうやら、夜の巡回の兵士のようだ。

 内心ドキドキするノゾミ。

 しかし、兵士はノゾミの存在に気づくことなく、そのまま過ぎ去っていった。

 そのことに、ノゾミはホッと胸を撫で下ろした。


 その後も、無駄に広い城内を歩くノゾミ。

 そして、ノゾミは一際大きな扉の前に辿り着く。

 改めて周囲を見回すノゾミ。

 誰もいないことを確認すると、ノゾミは恐る恐るその扉に手をかけた。

 大きな扉は、華奢なノゾミにとっては重く感じた。

 その部屋は非常に広く、奥に玉座があった。

 そう、ノゾミが辿り着いたのは、玉座の間である。


「すごく大きい。帝国のお城の玉座の間にちょっとだけ行ったことがあるけど、それと比べるとなんだかおしゃれな感じ」


 今は玉座の間には誰もいない。

 ちなみに、国王ゼフィールは王室で寝ている。

 暗殺するなら今のうちと言いたいところだが、今回はあくまでも偵察に来ているに過ぎない。

 そのため、城内の構造を把握したノゾミは、見つかる前に速やかに撤退した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ