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英雄たちの物語 -The Hero's Fantasy-  作者: おおはしだいお
第3章 帝国との戦い
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第92話 休暇

 国王ゼフィールから休暇の許可が出た。

 城を出ると、空はすっかり夕暮れ時だった。


「改めてみんな、長旅お疲れ様。今夜はセラフィー公爵家に来るといい。大したもてなしはできないが、頑張ったみんなに夕食をご馳走しようと思う」

「ありがとうございます」

「ありがとう、お父様」

「中でもファイン君は特に頑張ったそうだな。自ら率先して仲間たちを引っ張り、幾多の戦いを勝利へと導いた。やはり君は凄いな」

「大したことではありませんよ。僕はそれほど凄い人間ではありません」

「そう謙遜するな。普通の人間はそれほどの戦い、そう簡単に勝利することはできないだろう。何よりファイン君、ルナを……娘を守り抜いてくれてありがとう」

「お父様……!?」


 セラフィー公爵の言葉に、なぜかルナは顔を赤くしていた。


「それは逆ですよ。ルナが僕の騎士として、いつも僕の傍にいてくれました。それに、勝てたのは仲間たちがいてくれたからこそです。決して、僕だけの力ではありません。みんな、改めてありがとう」

「う、うん!」

「おう!」

「どういたしまして」


 その後、セラフィー兄弟たちがルナに話しかけた。


「ルナ、何か顔赤くねぇか? 何照れてんだ?」

「可愛いね、ルナは」

「もう、やめてよ……!」

「あははははっ、ごめんごめん」


 その後、しばらくしてセラフィー公爵家に到着した。

 屋敷ではセラフィー夫人とヒナタ、それに数人の使用人が迎えてくれた。


「あら、あなた! おかえりなさい」

「おかえり、パパ!」

「ただいま。今日は久しぶりに娘たちが帰って来たぞ」

「あっ、お姉様だ! おかえり!!」

「ただいま、ヒナ」


 ヒナタはルナに思いっきり抱き着いた。


「久しぶり! 元気にしてた?」

「うん! ヒナは元気だったよ」

「ミシェル、今日の夕食はいつもより豪勢に頼む」

「かしこまりました」


 セラフィー公爵は、メイドのミシェルさんに指示を出した。

 ミシェルさんは返事をすると、厨房のほうへと向かった。


「みんな、こっちだ」


 セラフィー公爵の案内で、僕たちは食堂へと向かった。


「夕食まで時間はあるが、それまで好きな席でゆっくりしていてくれ」

「お父様は?」

「私はまだ軍務が残っているのでね」

「大変なのね」


 セラフィー公爵はそう言うと、食堂を後にした。

 すると、ヒナタはおもむろにルナの足元でしゃがんだ。


「どうしたの?」

「えへへ、お姉様、今日は“薄いピンク”なんだ!」

「「なっ!?」」


 ヒナタは、ルナの下着の色を突然暴露してきた。

 ルナは恥ずかしそうに顔を赤らめると、両手でスカートを押さえた。

 見てはいないが、なぜか僕まで恥ずかしくなってきた。


「もう! やめてよ、みんなの前で! 恥ずかしいわ!」

「まあ、ルナったら、可愛らしい下着を穿いているのね。さすがは愛娘だわ~」

「お母様まで何を言い出すのよ!?」


 ソレイユ氏はニコニコしながらそんなことを言う。

 傍で見ていた次兄・フレアも大声で笑っていた。


「ところでルナ、旅での出来事、聞かせてくれないか? 何か面白い事あったんだろ?」

「そうだね、僕もルナの話聞きたいな」

「いいわよ。まずはね……」


 ルナが兄たちに旅の出来事を話した。

 それから30分後、料理が運ばれてきた。


 食卓にはスープやサラダ、それにステーキなどが並べられていた。

 随分と豪勢な夕食である。

 貴族の食卓はいつもこうなのだろうか。

 そして、飲み物として瓶に入ったワインやジュースが並べられた。

 一度は出て行ったセラフィー公爵が食堂に入って来た。


「みんな、おまたせ。それじゃあ、食べようか」


 セラフィー公爵の合図と共に、料理をいただくことにした。

 ルナとセレーネは、女の子らしくお行儀良く食事をしている。

 特にルナの笑顔が可愛らしい。

 旅の時も食事中はよくあんな顔をしていたが、本当に食べることが大好きなんだな。

 一方、ヒューイは男らしく食事にがっついていた。


「おう、こいつはうめぇ!! 貴族のメシもなかなか行けるじゃねぇか!!」

「ヒューイ、マナー……!」

「そうかてぇこと言うなよ、ファイン!」


 僕が注意するも、ヒューイは構わず食事を続ける。


「お前、面白いヤツだな! 名前は何ってったっけ?」

「ヒューイ・サウスリーだぜ! アンタは?」

「俺はセラフィー公爵家の次男、フレア・セラフィーだ。よろしくな!」


 何か熱血漢同士が意気投合していた。

 その後、みんなで楽しく食事を続けた。


■■■■■


 夕食後、ヒューイやセラフィー兄弟と一緒に風呂に入った。

 公爵家のお風呂は広くて驚いた。

 セラフィー公爵家にお邪魔したことは何度かあったが、さすがにお風呂に入ったのは初めてだ。


 孤児院にも狭いながら、風呂があった。

 余談だが、入浴するときはみんな一緒だった。

 ジャンやネオなどは一緒に入浴していたのだが、フランだけは毎回一緒ではなかった。

 まあ、後で知ったことなのだが、フランは女の子だったからな。

 当然と言えば、当然か。


 入浴後は、与えられた部屋で寛ぐことにした。

 ちなみに、ヒューイとフレアはあの後意気投合し、お互い特訓をするようになった。

 頼むから、責めて夜は静かにしてくれ……。

 部屋で読書をしていると、誰かがノックしてきた。


「ファイン、今いい?」

「どうぞ」


 そう言うと、ルナが入室してきた。

 ちなみに、ルナはミニ丈のワンピースを着ていた。


「どうしたんだい?」

「その……これから帝国との戦いを迎えることになると思うけど、ファインは怖くはない?」

「怖くはない、と言ったら嘘になるかな」

「ファインでも怖い事はあるの!?」

「そりゃあ、人間だからね。ルナは怖いのか?」

「そりゃ怖いわ。できれば戦いたくはないのだけれど……」


 ルナは俯きながらそう言う。

 ルナは帝国との戦いを恐れているようだ。

 いくら強くても、ルナは人間で、しかも女の子だ。

 怖くないはずはないだろう。

 ジャズナでは、帝国と一戦を交えた。

 戦いの辛さをルナも感じたはずだ。

 しかし、僕はルナに少々厳しい事を言ってやることにした。


「怖いのなら、ローランドに残るといい。僕は例え一人でも戦う」

「そんな……そんなのダメよ。だったら、私もファインと一緒に戦うわ。だって私はあなたの騎士になることを誓った女よ。ファインにだけ辛い想いはさせないわ!」

「ありがとう。ならこれからも一緒に戦ってくれ」

「うん、わかったわ! 私、頑張るわ!」


 ルナはいつもの笑顔を取り戻した。


「じゃあね、ファイン。あんまり遅くまで夜更かししちゃダメよ?」


 ルナはウインクしながら、そんな事を言った。


「わかっているよ。おやすみ、ルナ」

「おやすみなさい、ファイン」


 ルナは笑顔で手を振ると、部屋を出て行った。

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